作品解説

2026年に小説「Angel Down」でピュリッツァー賞を受賞した作家ダニエル・クラウスの同名ベストセラー小説を実写映画化したサバイバルスリラー。
巨大なマッコウクジラにのみ込まれてしまった17歳の青年が、絶体絶命の状況から脱出を試みる姿を描きます。
主演は、テレビドラマ「ウォーキング・デッド」シリーズや映画「WEAPONS/ウェポンズ」、「バイオハザード」などのオースティン・エイブラムス。亡き父ミットをジョシュ・ブローリン、母ザラをエリザベス・シューが演じる。
監督・脚本は、「プレデター:バッドランド」や「ザ・ベビーシッター」などの脚本を手がけたブライアン・ダッフィールド。原作者のダニエル・クラウスも脚本に参加しています。
スタッフ
- 監督・脚本: ブライアン・ダッフィールド
- 脚本: ダニエル・クラウス
- 原作: ダニエル・クラウス
- 製作: ブライアン・グレイザー、ブライアン・ダッフィールド、ジェブ・ブロディ、アラン・マンデルバウム
- 製作総指揮: ダグ・メリフィールド
- 撮影: アーロン・モートン
- 美術: ラムジー・エイブリー
- 衣装: ナタリー・オブライエン
- 編集: ピエトロ・スカリア
- 音楽: ジョセフ・トラパニーズ
主なキャスト
- オースティン・エイブラムス: ジェイ
- ジョシュ・ブローリン: ミット(亡き父)
- エリザベス・シュー: ザラ(母)
マッコウクジラに飲み込まれたというピノキオみたいなことになっている今作ですが、もちろん実話ではなく小説原作です。
実話にはジェームズ・パートリーという船乗りが1891年にマッコウクジラに飲み込まれ生還したなんて話もありますが、それも都市伝説や作り話っぽいですね。
そもそも構造的にマッコウクジラが人間を飲み込むことは難しいらしいです。
今作も公開週末に早速観に行ってきましたが、人の入りはそこそこって感じでした。年齢層高めで、やはり題材や演者的にもそんなに訴求はないって感じでしょうかね。
~あらすじ~

17歳の青年ジェイは、ひとりでダイビングをしている最中、巨大なマッコウクジラに遭遇する。
ダイオウイカを捕食しようとするクジラから逃れようとするジェイだったが、イカの足に絡め取られ、あろうことかクジラに丸呑みされてしまう。
絶体絶命の状況に追い込まれたジェイは、ダイビングの師でもあった亡き父ミットから教わった知識と経験を頼りに、クジラの体内からの脱出を試みる。
次々と襲いかかる危機に立ち向かうなか、ジェイは父との思い出を振り返り、自分自身と向き合っていく。
感想レビュー/考察

クジラからの脱出劇だけではない、父と息子の物語
「バイオハザード」に続いて、絶体絶命の状況に追い込まれてしまう、2026年最も不運な男オースティン・エイブラムス。
昨年の「WEAPONS/ウェポンズ」でも真実に近づいたゆえに殺されてしまった可哀そうな彼でしたが、今回もクジラに飲み込まれて散々な目にあいます。
ただ今作はその絶望的な状況からいかに抜け出していくかそのものにフォーカスしているのかといえば、そうではないのだろうと思います。
この作品をクジラと男の話ととらえるか、男とその父の話ととらえるかでだいぶ評価は分かれてくるのではないかと考えています。
主人公は毒親といっても良い脅迫的な父親を持つ青年。彼は大学に進学し父から離れて自分自身の道を歩もうとした。その一方で父は海に見せられ、ひたすらに海を愛し続けた。
病気になっても彼は心を離さず、最後は海に消えて行ったのです。
父の教えが導く、クジラの腹の中でのサバイバル
父が亡くなっている状態で始まるこの作品は、クジラに飲み込まれてからその腹の中で、主人公ジェイと父ミットの回想シーンを挟みながらサバイバルしていきます。
クジラの中での試行錯誤には、父との会話や思い出が重なり、父の教えがジェイを導く形で進行します。なので、今は亡き、厳しかった父が疑似的にジェイを導いて助けてくれるっていいう構図になるのです。

リアルな脱出劇ではなく、父親の影から逃れる精神の旅
サバイバルではあるけれど、そこにリアリティを求めすぎてはいけない。むしろメタファー的にとらえて、父親の影洗逃れたり、受容したりする精神の旅であると捉えるのがよさそうです。
クジラの体内で、プランクトンの影響から常に明りが指しているようで、周囲が良く見えるとか、巨大イカのくちばしに、光るクラゲなどの便利なアイテムがあるとか、都合がいいのは当然。
そんなところに気を付けて、リアルな脱出ものとして見てしまうとなんだかなというところが目立つと思います。
ただ、父との関係性で言えばそこそこワークする。
巨大クジラは父ミットそのものだった
このクジラ自体が、ジェイにとっては父ミットそのものなのです。
大きく、息子を飲み込み抑えつけ、行きもできないほどに抑圧する。ジェイはとにかくもがくのだけれど、その存在に苦しんでいく。地上で生きていた時のジェイとミットの関係そのものです。
その父に連れられて酷い旅をするのですが、クジラの腹でも地上でも、現実の問題から逃げていたジェイは生き残れない。だからこそ覚悟を決める必要があった。

同時にこのジェイを飲み込んだマッコウクジラは、孤独でもありました。
終盤ではシャチの群れに襲われ、それはまるで病気によって体を蝕まれたミットと同じように、身体を食いちぎられ血を流し弱っていく。
そこでクジラに対してジェイは仲間を呼ぶように願います。助けを求めるように。
ミットは孤独を選び、頑なだった。その頑固さをジェイは心底嫌っていましたが、同時にタフガイを止めて助けを求めることも願っていたのでしょう。
父の幻影から抜け出し、自分の人生を歩み始める
父の幻影たるクジラの中から抜け出して、真に解放された青年が、自力で生きていく。そういったドラマとしては楽しめました。
狭い空間でのアクションで撮影としても大変だろうというところもあり、主演のオースティン・エイブラムスも顔が良く見えなかったりする中で好演。
またクジラの中での構造整理が割とシンプルで観やすいのも良かったです。今回の感想はここまで。ではまた。



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