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「まったく同じ3人の他人」”Three Identical Strangers”(2018)

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three identical strangers-2018-documentary 映画レビュー
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「まったく同じ3人の他人」(2018)

  • 監督:ティム・ウォードル
  • 製作:タラ・エルウッド、グレイス・ヒューズ=ハレット、ベッキー・リード
  • 製作総指揮:トム・バリー、デミトリ・ドガニス、アダム・ホーキンズ、エイミー・エントリス、サラ・ラムズデン、コートニー・セクストン
  • 音楽:ポール・ソーンダーソン
  • 撮影:ティム・クラッグ
  • 編集:マイケル・ハート
  • 出演:ボビー・シャフラン、デヴィッド・ケルマン 他

three identical strangers-2018-documentary

長編やショート、テレビシリーズでもドキュメンタリーを数多く手掛けるティム・ウォードル監督が、アメリカで奇跡的に再開した3つ子の数奇な運命と、その裏にあるおぞましい事実を追うドキュメンタリー。

作品はサンダンスでのプレミアから始まり話題を呼び、31回の東京国際映画祭でもワールド・フォーカス部門で上映されています。

TIFFの際には時間が合わずに鑑賞できなかったのですが、現在(2020/5/30)Amazonプライムビデオにて配信されていたので初鑑賞に至りました。

題材になっている三つ子のお話ですが、私は全く知らない状態で観ました。

three identical strangers-2018-documentary

ボビー・シャフランは19歳で初めて大学へ投稿した日、運命が変わった。

やけに親しく接してくる初めて会う大学の人々に混乱していた彼は、自分とそっくりの声、容姿そして誕生日まで一緒のエディという青年に出会うのだ。

彼らは実は双子で、どちらも幼い時に養子縁組に出されていたのだ。この双子の奇跡の再会はちょっとしたニュースになるのだが、今度はデヴィッドという青年が現れる。

彼もまた、ボビーとエディにそっくりで、なんと3人は三つ子ということが発覚するのだ。

今作はこの三つ子の奇跡のような再会と、彼らの人生を追いながら、見えてくるおぞましい真実に迫っていく。

three identical strangers-2018-documentary

ドキュメンタリーとして、構成がすごく良かったです。

クロノジカルに三つ子を追っていくのですが、作品はジャンルを切り替えるかのようにギアを変えて走っていきます。

始まりから中盤くらいまでは、まさに奇跡の再会物語。

エネルギッシュで楽しさや青春の輝きに溢れたトーンで、過去の映像や再現映像、また当人たちのインタビューが繰り広げられていき、楽しいんです。

兄弟それぞれの生い立ちから、奥さんたちや両親などが語るエピソードなど、コミカルで活気があります。

しかし今作はその中に着実に、非常に重要なキーとなる話や言葉を紛れ込ませ、まるでミステリースリラーのようなトーンへと急転換します。

三つ子を知っていく上で聞こえてくる話、言葉一つ一つが伏線のように配置され、時間がコンパクトな作品だからこそ多くのキーを拾い上げ、感情の揺れ動きを共有できるのです。

three identical strangers-2018-documentary

信じられない物語は、信じたくない真実へと変貌します。

正直口では酷いことと言いつつも、今現在も倫理観がぶっ飛んだままに感じる養子縁組組合の職員や研究者のインタビューはゾッとしました。

時代性などという言葉に関係なく、人の生というものをここまで操作していいということは全くないと思いますね。

もはやポリティカルスリラーのように闇が広がり、おぞましい何かを感じざるを得ないのですが、この作品は真実への解明ではなくて、真実が分からないという最低の呪いによって壊れてしまったものを描きました。

序盤は陽気で、想い出を楽しそうに話していたボビーやデヴィッドが、死んだような眼をしながら語るシーンは観てて辛かったです。

どうにも答えられない質問のあとに、黙りこくり、スタッフが終わりにしようといってからも数秒間カメラが回っていますが、あのなんとも居心地の悪い空気。

あれをずっと抱えて生きているというのは、なんとも残酷です。

three identical strangers-2018-documentary

しかし今作は光も与えています。

私はそれぞれの奥さんたちのインタビューが最高に好きです。

彼女たちは夫のことを個人としてしっかり観ていて、序盤はそれこそ惚気に聞こえる「夫が一番ハンサム」「無口だけど思いやりがある」などが、後半には個性、すなわちサンプルではなく一人の人間である証明となって聞こえてきます。

遺伝と環境、精神疾患。

考えるに人生の意味は曖昧になり、自分の生が自分の手から抜け落ちていく無力さや恐怖ははあり知れないでしょう。

しかし、それでも人は、生きることでその個人を生の中で定義していける。両親や奥さんの話は、そう感じさせてくれます。

兄弟の感動の再会話は、商品です。実際に彼らもその境遇を使いスターになりましたが、しかし人生とはやはり全て消費物になってはいけない。

私にはある人間の人生を、自分の消費対象としてどうしてもいいというような現代の人とのかかわり方にも、ある意味警鐘を鳴らす作品にも思えました。

なんて怖い話があるもんだ・・・と、外から見ている自分の生に関しても揺さぶられる怖さもありますね。

ジャンル転換、インタビューという完全同形式での大きな変化など構成が見事なドキュメンタリーだと思います。

興味があれば配信で観れますので是非。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた。

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