「ジョン・ウィック チャプター2」(2017)
- 監督:チャド・スタエルスキ
- 脚本:デレク・コルスタッド
- 製作:ベイジル・イヴァニク、エリカ・リー
- 製作総指揮:ジェフ・ワックスマン、ロバート・ベルナッキ、デヴィッド・リーチ、ケヴィン・フレイクス、ヴィシャル・ルングタ
- 音楽:タイラー・ベイツ、ジョエル・J・リチャード
- 撮影:ダン・ローストセン
- 編集:エヴァン・シフ
- 出演:キアヌ・リーブス、リッカルド・スカマルチョ、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、ルビー・ローズ、イアン・マクシェーン、ランス・レディック、フランコ・ネロ 他
チャド・スタエルスキ監督の「ジョン・ウィック」(2014)続編。
前作がそのアクションと見せ方で世界を驚かせてから、待望の続編が登場というわけです。主演はもちろんキアヌ・リーブス。
また今回は悪役としてイタリアの色男リッカルド・スカマルチョも出演。彼のボディガードにはルビー・ローズ、また「マトリックス」のモーフィアスとしてキアヌと共演したローレンス・フィッシュバーンも登場します。
公開は少し遅れたものの、日本での人気も良い感じのようです。
2度観ましたけども、公開日の遅い回でも多めで、休日では満員状態でした。
今作は批評家の評価も高めで、海外紙では上半期のベストに入れているところもありましたね。
大切な車を奪い、犬を殺したロシアンマフィアをたったひとりで壊滅させたジョン・ウィック。
彼は車を所有するマフィアの車庫へ乗り込み、大勢を叩きのめし車を持ち帰る。
今度こそ平穏が戻ったと思ったのもつかの間、血の誓印を果たさせようと、イタリア犯罪組織カモッラのサンティーノ・ダントニオがやってくる。
もはや昔のジョン・ウィックには戻りたくないと、申し出を断ると、サンティーノはジョンの家を爆破し焼き払った。
大切な妻との思い出、美しい記憶まで炎に包まれたジョンは、サンティーノの望む通りの”闇の男”に戻るのだった。
続編といえば、その期待は不安と共にあるものです。ジョン・ウィックの見せてくれた世界というのは、静かなノワールながらも斬新なアクションであり、殺しのエレガンスでありました。
しかし続編というのは大概大きくなったり数が増えたりするものです。
で、今回のジョン・ウィック チャプター2、大きくなって数が増えてます。ただし、それが巧い具合に美しさを保っていました。
キレのいいアクションは相変わらずで、一連の動きを長いカットでしっかり、引いた撮影で魅せるのも変わらず、今回もライブ会場に地下道に美術館に魂の反映に、銃撃戦の舞台も美しいところやライティングが楽しめますね。
OP直後のカーアクションから、艶っぽく重みのあるもので、そして今回も前作同様に、ジョンが全くしゃべらないまま、動きのみで語っていきます。
ここであのロシアンマフィアのボスが、ジョンのマスタングが唸る音、銃声と手下の叫び声で状況を掴んでいき、聞こえてくる足音に恐怖するという演出が好きでした。
アクションに関しては間違いないでしょう。これを観に行って損しないと思います。
アクションが純粋にダンス性を増して、キルカウントが上がりつつもしっかりエレガンスは失わない。それは世界拡張にも言えました。
欧州世界や裏社会の主席なども出てきて、確実に前作のNYC以上に広がりを見せましたが、私はそうして大きく風呂敷を広げて奥深い世界をみせつつも、基本ルールをしっかり見せているのが親切に思えました。
そして何より、そうして大きくなったスケールにジョン・ウィックを飲み込ませることなく、逆に各人物がジョンをしっかり認識することで、裏社会での彼の存在感を逆に強めた点が素晴らしいと感じました。
出てくる人物も相変わらずクセが強くまたカッコいいです。コモンが演じるカシアン、ルビー・ローズやリッカルド・スカマルチョ。
今回ゲスト的に出ている人物もすごくいいです。
モーフィアスであるローレンス・フィッシュバーンと”選択”について語るなどの目配せもあり、またOPのロシアンマフィアのボスを演じたピーター・ストーメアは、「コンスタンティン」(2005)でサタンを演じた人というのも、何か同窓会っぽくて嬉しかったです。
また、ローマのコンチネンタルの支配人があのフランコ・ネロというのも良いですね。
思えば、カシアンとの最初の出会いで早撃ちしたり、電車内でにらみあったり、今作にはマカロニウエスタンの匂いがあります。
音楽も効果音のように使われていますし。
アクションと人物、世界の広がりもありますが、やはりスタエルスキ監督の手腕は流れる映像の語りにあるのかなと。
OPで完全に親指立てましたけど、あの車工場の描写からして本当に巧かったと思います。
一瞬ですが映る、パッケージにプリントされたサソリのマークは、それだけでシンボルを持つほどの強大な組織であると分かります。
そしてNYCといったらイエローキャブ。ありふれたものが実は壮大な裏社会に繋がっているのは、後のホームレス集団にも通じる、深みにワクワクするポイントです。
台詞で語らせずに、観客の想像を刺激する。情報の与え方、制御の仕方が巧みだなぁと感心です。
続編として広くなり、(死体の)数も増し増しの本作ですが、ハートは変わっていないかと。
車を取り戻して帰宅したところ。あそこにジョン・ウィックのハートが詰まっていました。
本当に取り戻したかったもの。あそこまでするほどに大切なもの。最初にここが提示されたおかげで、狂人だったり、プロットのために動いている感覚が付かずに最後まで観れました。
大きくなった分、確かに一作目のような静かなノワール感は薄れています。それが気になる方もいるかもしれないですが、私としてはイタリアンの風が入り、マカロニウエスタンテイストの今作もすごく好きです。
カシアンとの階段落ちに駅内での静かな撃ち合いなど、いきすぎて笑えるところもありますw
そして、続編として好きなのは、随所に前作のネタをクールに入れたところ。
中でも、サンティーノの電話に”沈黙”を決め込むところや、ルビー・ローズとの最後のやり取り”Be seeing you again” “Yeah.”は良いですね。後者の持つ複数の意味合いは、楽しいものです。
ジョンはやはり逃れられない。復讐の虜なのか、血に染まった手は清らかになることはないのか。
自分自身が無数にいるような鏡の地獄を通り、殺し屋世界ではないはずのニューヨークの街に出ても、もはや彼にとって世界が変わって見える。
裏の世界に戻るどころか、表も裏も無くなり、ジョンにはすべてが自分の影、殺し屋に見えるのですね。
完成度の高かった前作にたいして、パワーアップはしつつもまた別のアングルをみせる本作、オススメの1本です。
ということで感想は終わりです。最近新作見ても感想かけてないので、そっちもしっかりしていきたいなあ。
ジョン・ウィックは既に3作目の製作も始まっていて、この調子で見事なトリロジーになってほしいですね。次回作にも期待。
それでは、また~
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