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「希望のかなた」”The Other Side of Hope”(2017)

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the-other-side-of-hope-2017 映画レビュー
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「希望のかなた」(2017)

  • 監督:アキ・カウリスマキ
  • 脚本:アキ・カウリスマキ
  • 製作:アキ・カウリスマキ
  • 撮影:ティモ・サルミネン
  • 編集:サム・ヘイッキラ
  • 出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイヴラ、ヤンネ・ヒューティアイネン、ヌップ・コイブ、ニロズ・ハジ 他

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「ル・アーブルの靴磨き」などのアキ・カウリスマキ監督が送り出すコメディ風味あるドラマ。

フィンランドを舞台にシリアからの難民の若者と、家出して人生をやり直すとあるレストランオーナーの交流を描きます。

67回のベルリン国際映画祭でコンペティションに出品された作品です。そこでは監督が銀熊賞を受賞しています。

批評家からの評価もかなり高いものになっている作品で、日本でも2017年内に公開していたのは覚えています。

当時なぜ観に行っていないのかは自分でも忘れましたが、今回はアマゾンプライムビデオでの見放題配信を機にはじめて見てみることにしました。

アリ・カウリスマキ監督は前作の「ル・アーブルの靴磨き」から実に6年ぶりの新作だったようですね。

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シリアのアレッポから避難し、トルコを経由してフィンランドへやって来たカーリド。

彼は警察署へ行くと難民申請をし、審査期間中は収容施設へと送られた。

カーリドはアレッポで家族を皆失い、唯一生き延びた妹の行方が分からず、彼女を探している。

一方にフィンランドでセールスマンをしているヴィクストロムは仕事にも、そして酒浸りな妻にも嫌気がさしていた。

彼は家を飛び出すと有り金をギャンブルにつぎ込み、運良く大金を手にする。

その金でヴィクストロムは経営不振だったレストランを買うことにした。

二人は全くの無関係だが、難民申請を却下されたカーリドが施設を逃げ出したことで、不思議な出会いが始まる。

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アリ・カウリスマキ監督の作品は実は「ル・アーブルの靴磨き」しか見たことがないのですが、監督の悲劇は喜劇であるというスタイルは共通して見てとれました。

前作も移民の子をかくまってあげる話でしたが、今作も大枠としては同じプロットになっています。

ただ比較すると、今作は国際色というか、国際というところに起こる悲しさやおかしさが色々とつまっていて、そしてそうやって異なる背景を持つ人たちが交流を持つことで生まれてくる美しさも感じる作品でした。

映画の中で起こっていることはいずれも厳しい現実です。

カーリドの故郷での紛争は、小児科病棟の爆撃映像から見える通りの惨劇です。

そして彼を取り巻く環境はまた好ましくない。

移民に対する視線は厳しく、ネオナチの集団も現れます。

ただそれらを重苦しく描かず、理不尽さが滑稽さに繋がるような感覚を監督は与えています。

フィンランド解放戦線というジャケットの集団も、恐ろしいというよりはバカバカしい。

そして難民申請を却下する際の答弁も滑稽さの極みです。

多くの人名が失われている、非常に切迫した状況だが、命の多大な危険はないので難民とは認めない・・・ってもう何言ってるのか分からないですからね。

しかし悲しいのは、このジョークのようなことが実際に起きているということですね。

だから出てくる笑いは、憂いを帯びています。

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一方監督はヴィクストロムの話を用いて、その滑稽な悲しさは難民特有のものではないと描きます。

言ってしまえば彼もまたカーリドと同じく家を失った人間です。

別の場所で人生をやり直そうとするわけです。

それがまあまた個性ある従業員がそろうへんてこな感じのレストランですが、ここで飲食経営行の苦難が描かれます。

かわいそうな日本人客の被害者を出してしまうトンチキな寿司シーンのシュールさはとにかく面白いですが、ああしてコンセプト変えのテコ入れに失敗することって結構見かけます。

和風でいきながらも、なぜか唐突な銅鑼が出てくるところ、非常に西欧におけるアジアの勘違いっぽくて笑えました。

語らないということも実は強い力を持つ作品だと思います。

ヴィクストロムが家を出る際に、キーと指輪を置き、妻はタバコをふかす。台詞もないですが語りは滑らかです。

もちろんレストランシーンはカットが変わるとめっちゃうつ向いてる従業員と、無言でゾロゾロ出ていく客とか、その静かさをまたコメディにも昇華しています。

撮影はティモ・サルミネン。少し引いたショットで長く、動かない。

非常にフラットかつ、全体にはすこし前の時代とも思えるような空気を作っています。

撮り方が淡白なこともまたおかしさに繋がります。

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カーリドとヴィクストロムが交差するとき、というか背景の異なる人間が出会うとき。

今作はフィンランド、いやどの国でも同じと思いますが、移民という異物に対する目と扱いをそのままむき出しにしています。

滑稽で冗談めいていても事実として残酷。

淡々と描き出していくトーンの中にはしかし、優しさがあります。ここでは難民カーリドに対して同じくある意味で難民になったヴィクストロムが(拳を交えつつ)手を差し伸べます。

全く異なる背景を持つ人と人が関わり合う、交流を持つ。これこそが国際という言葉です。

その国債という概念は時に軋轢や抗争をうんでしまったり、おかしな解釈を持って特盛ワサビ寿司を生み出してしまうものですが、希望を与えてもくれるのです。

自分一人だけで希望を見出すことはとても難しい。もしかするとその場所には希望はないのかもしれません。

希望とはまさに、他者と関わることで与え合って得るものなのです。だからこそ、傷ついた人も新しい人生を歩む人も、関わり合うことを拒まない姿勢がここにあります。

それが根底にひそみ、シュールな画面から絶えず伝わってくるやわらかな優しさなのかと思います。

一部ロイ・アンダーソンの「ホモ・サピエンスの涙」的だったり、最近だと「天国に違いない」を思い起こすような作品で個人的に好きです。

プライムで見放題配信されている今(2021.3.12)、お勧めの作品です。

今回の感想はこのくらいになります。最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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