「社会から虐げられた女たち」”Le Bal des Folles” aka “The Mad Women’s Ball”(2021)

「社会から虐げられた女たち」(2021)

The Mad Women's Ball (Le Bal des folles)-movie-2021

作品概要

  • 監督:メラニー・ロラン
  • 脚本:メラニー・ロラン、ジュリアン・ドゥコワン、クリストフ・デズランズ
  • 原作:ヴィクトリア・マス
  • 製作:アクセル・ボウカイ、アライン・ゴールドマン
  • 撮影:ニコラス・カラカトサニス
  • 編集:アンニ・ダンシェ
  • 出演:ルー・ドゥ・ラージュ、メラニー・ロラン、エマニュエル・ベルコ、ロマーネ・ドゥ・デートリヒ 他

「ガルヴェストン」にて女性の力をベースに往年の殺し屋映画を描いて見せたフランスの俳優・監督であるメラニー・ロランが、1885年のフランス、サルペトリオール病院を舞台に霊能力を持つ女性と病院長の友情を描くドラマ。

主演はロラン監督とは「呼吸 友情と破壊」でも組んでいた「夜明けの祈り」などのルー・ドゥ・ラージュ。

またメラニー・ロラン自身が病院の看護師長を演じ、主人公と友情で結ばれていきます。

その他に「バハールの涙」や「スクールズ・アウト」などに出演のエマニュエル・ベルコが強烈に加虐的な看護師として、そしてロマーネ・ドゥ・デートリヒが残酷な運命をたどっていく一人の患者を熱演。

この作品はヴィクトリア・マスによる歴史フィクション小説「狂女たちの舞踏会」(2019)を原作としており、出版からすぐに映画化されたことになります。

今作を見ていく上で、このフランスに実在の病院のことや催眠療法、現代精神医学の背景が少しあると面白味も増すのかと思いますが、私のようにサルペトール病院を聴いたこともない人間でも別に問題はなかったり。

逆にそうした背景をしっていくこともまた楽しめるかと。

こちら劇場公開ではなくアマゾンプライムでの配信になっており、わたしもそちらで鑑賞しました。

メラニー・ロランもルー・ドゥ・ラージュも著名な映画人ですが、題材的に配給が厳しいのでしょうかね。それでもソフトスルーとか未公開にならず、こうしてアクセスが増えているのはやはり良いところです。

「社会から虐げられた女たち」アマゾンプライム配信ページはこちら

~あらすじ~

The Mad Women's Ball (Le Bal des folles)-movie-2021

1885年のフランス、パリ。

裕福な家庭に育ったウジェニーは、聡明で知識欲が強くいろいろなことに興味を持っているが、社会そして厳格な父から求められているのは、つつましい良妻賢母になるということ。

そんなウジェニーには秘密があり、彼女には霊能力があった。時折霊をみて彼らと会話するウジェニーを、ゲイであった弟は互いの秘密を守りあうように寄り添ている。

しかしある晩に祖母のために例と会話したことから能力が明るみになり、父は精神異常疾患であるとしてウジェニーを催眠療法なども行う高名な医師ジャン=マルタン・シャルコーが管理するサルペトリオール病院に入れてしまう。

そこでは劣悪な環境の中、女性患者たちが虐待的な治療を受けさせられ、催眠療法の公開講義として見世物にされているような地獄が待っていた。

ウジェニーははじめこそ孤独であったが、次第に他の患者と交友を深め、そしてその霊能力から看護師長ジュヌヴィエーヴと親しくなっていく。

感想/レビュー

The Mad Women's Ball (Le Bal des folles)-movie-2021

歴史に描かれない側の視点をもたらす

メラニー・ロラン監督は歴史における重要な点にフォーカスしながら、そこを外ではなく内側、女性の視点で再度捉えなおすことにより歪みや残酷さをあぶりだすとともに、肉体と魂の関係と突き抜けた自由を描き出しました。

正直R指定も入っているのが納得の残酷な映画です。

ホラーではないし幽霊の部分は見えもしないためそういう怖さも全くありません。

ただ精神がすり減っていきます。

それは人間が平然と作り出している地獄であることに起因します。

超絶な悪人とかは出てこないんですが(男は性犯罪者ですが)、歴史の中でそれが正当であり評価される行為として繰り出されている治療法などが、被験者、患者からみてただの拷問なんですよ。

執拗に思うほどの肉体的描写において、そのとらえ方含めて強烈な体験になります。

さて、今作の肝になっているのは舞台となるサルペトリオール病院。

ここは15世紀においては貧民や売春婦の収容施設、そして16世紀には暴動も経験しており、映画の舞台となる18世紀には改革が進められて精神医学の中心になった病院です。

劇中にも登場しますが、ジャン=マルタン・シャルコー医師による講義も開かれていたのは事実で、その様子を見ていた医学生たちの中にはフロイトもいたそうです。

精神医学の歴史では確かにこの病院の機能は評価されていますが、そこにフィクションとはいえ歴史に描かれない側の視点をもたらすことは、素晴らしい試みであったと思います。

The Mad Women's Ball (Le Bal des folles)-movie-2021

肉体的な苦痛

ウジェニーは非常に聡明であり力強い。

しかし同時に父からの抑圧に苦しんでおり、また序盤はその描写から霊能力にも呪いのような感覚を覚えます。

ルー・ドゥ・ラージュの力強さと賢さって彼女の佇まいや所作、なによりも顔から感じられるもので、ウジェニーと一緒に家を抜け出し本屋へ行くなどは楽しいシーンでした。

だからこそ、ウジェニーがサルペトリオール病院での治療という名前の拷問を経て、疲弊し弱っていく様が余計につらいものになっています。

ここで描かれている患者への治療シークエンスですが、非常に肉体的な苦痛をはらんでいます。

病院に入れられてすぐに、ウジェニーの健康状態の確認がありますが、顔のアップからカメラがふと引いたときに彼女が全裸にされているのが分かります。

至極当たり前に行われていく所業にはとても心が痛みます。

医師たちによる診断においては、コルポスコピーのシーンとか肉体的にもつらくまた恥辱的でもありますし、催眠療法の講演ではあからさまに性的なもてあそびにも思えるいやらしさがあります。

「学会では写真があると注目される」という理由で、患者の身体の硬直を撮影していく様含めて非科学的な処置を繰り返される日常に苦しくなります。

女性たちと連帯を強めていく

ただ、そこではじめこそは「ここにいたくない」と言っていたウジェニーが、過酷な環境下で他の女性たちと連帯を強めていくところに、今作のドラマがありました。

今作でとくに際立って素晴らしいのがウジェニーと隣のベッドにいる女性ルイーズ。ロマーネ・ドゥ・デートリヒの身体と精神の演技も素敵ですし、まさにウジェニーとは姉妹のような絆で結ばれていく。

そんな彼女がたどっていく運命には目をそむけたくなるものがありますが、身体的な加虐に対して持っていく精神の自由というのが、この作品における光ですね。

The Mad Women's Ball (Le Bal des folles)-movie-2021

ウジェニーの能力というのは不透明に描かれます。

ホラー要素がない点に繋がりますが、彼女の見る光景は観客には見えません。死者は見えず声も聞こえない。ただ、その対話をするウジェニーしか見えない。

その能力を前に狂女とするのか才能のある人間ととらえるのか。彼女への信頼も試される。

ウジェニーの見ている世界を推し量ることはそのまま、当時のサルペトリオール病院に収監されていた女性たちの側から世界を見ていくことにリンクされているのです。

そのウジェニーの霊能力を前に、ジュヌヴィエーヴは心を開き病院からの解放を目指し、ジャンヌは余計に敵意を強くする。

ジャンヌもまたあまりに悲惨な過去を抱えていると察せると、この二人の敵対についてもとても物悲しいものがあります。

醜悪な舞踏会において、もてあそばれ食い物にされていく女性たち。

そんな中で最後に繰り広げられていく逃走。いや解放。

ウジェニーの能力により、秘密の手紙から悲しみを解放し癒しを得ていたジュヌヴィエーヴ。二人はカットバックでシンクロしていく。

同じように抑圧の象徴であるコルセットを脱いでいく二人。ジュヌヴィエーヴはウジェニーを逃がすことで魂の自由を得ます。

廊下を歩いていても男が通るときは立ち止まり礼をする、意見を言うことは勇気がいる。

そんな中で生きてきたジュヌヴィエーヴもまた病院に囚われている。

肉体的な拘束が突き詰めて描かれてきたからこそ、最後に訪れる精神と魂の自由が炸裂します。

公にはならない想いを伝える手段として手紙をここでも使う美しい演出とともに、素晴らしいシスターフッド映画が誕生しました。

メラニー・ロラン監督も舞台に映画に監督として手腕を伸ばしていて今後も期待できますね。

アマゾン独占の作品だと思いますが、アマプラに加入されている方はこちらぜひご鑑賞ください。

というところで感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

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