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「そんなの気にしない」”Zero Fucks Given” aka “Rien a foutre”(2021)

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「そんなの気にしない」(2021)

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作品解説

  • 監督:エマニュエル・マール、ジュリー・ルクスト
  • 脚本:エマニュエル・マール、ジュリー・ルクスト
  • 出演:アデル・エグザルホプロス 他

世界中を飛び回る格安航空会社の客室乗務員として活躍する女性。彼女の内面を淡々とした手法で描くのは、エマニュエル・マールとジュリー・ルクストルの監督コンビ。

今作は長編映画監督デビュー作。

主演には「アデル、ブルーは熱い色」や「パッセージ」で知られるアデル・エグザルホプロスが抜擢され、彼女はその演技でセザール賞主演女優賞にノミネートされました。

また第13回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルにてグランプリを受賞しています。

存在も知らなかった作品でしたが、アマプラのおすすめの中でもうすぐ配信終了となっていたのでちょっとあらすじを読んでみて、CAを描き出しつつもなんだかスタイルはドキュメンタリー風でおもしろそうに映り鑑賞して観ました。

~あらすじ~

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26歳のカサンドラは、格安航空会社の客室乗務員として働いている。

彼女はマッチングアプリ「Tinder」を使いながら相手を探し、各地を飛び回りながらパーティーに満ちた生活を送っている。

クリスマス前後のシフトについて会社から連絡があり、カサンドラは仕事を入れてその年も実家には帰らなかった。

契約の満期が近づき、会社からはチーフパーサーのポジションを目指すのであれば契約を続けるが、現状のままでは契約が難しいと告げられる。彼女は研修を経てチーフパーサーとしての仕事を始めるが、新たな責任とともに会社からの厳しい指導も増える。

その中で、カサンドラがフライト中に行った判断が問題視され、一時的な休養を命じられることになる。

彼女は久しぶりにブリュッセルの実家に戻ることになった。

感想レビュー/考察

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全然華やかじゃない仕事の世界

CAさんの仕事。あちこちの国へ飛び回り、その土地の観光をしたり夜の町を楽しんだり。ナイトライフでは現地のいい男と恋愛やワンナイト・・・なんてものを想像していましたが、今作はもっともっと、「CAだって仕事。そう、みんなが嫌いな仕事なの。」と言わんばかりのうだつの上がらない息苦しい世界でした。

監督たちはこの主人公カサンドラの仕事をドキュメンタリーの密着取材かのようなテイストで映し出していて、決してこれを華やかな世界だとか花形仕事なんて呼べない空気です。

職場ではお馴染みの、誰の負担が大きくて誰が軽くて不公平だと言ったり、チーム内でのあれこれやら売り上げ目標に対しての圧力とか。観てて普通にしんどい笑

規定やルールというモノがある意味でかなり厳しい世界であるからこそ、この航空会社での仕事って大変なんですね。空の上に言ってしまえば、CAにとっても逃げ場もないし助けも呼べない。

だから現場で処理しきれる力をちゃんとつけるために社内研修だって行われます。ちょっとCAさんから見ての客の分類だとか対処法なんかが見れるのはおもしろいところでした。

もう若さに言い訳できないけど、まだまだ安定してない

カメラの位置は結構近めで、息苦しいときはパーソナルスペースもかなり少ない。何でもないような日常会話や雑談も切り取って、仕事映画としての興味深さもある作品。

ただここではまさに現代、この数年の20歳代の後半を過ごしている若者の感覚がヒリヒリとするほどに切り取られていると感じます。

私自身まさにカサンドラと同じくらいでコロナがありそこから数年すごしました。

いろいろなことがあったし昇進とか昇格、転職もしました。だからカサンドラの焦りみたいなものとか不安とか結構わかった気がします。

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いい歳かもしれないしまだまだこれからかもしれない

カサンドラは現代の若者。だからルールや規定に縛られたくないし、そういうものに巻かれてしまうのがかっこ悪い気もする。

でも一方内心では年齢的にもすこし安心や安定を求め始めてしまう。アンビバレントであり身勝手にも思えてしまうような年頃だと思います。

彼女は契約の更新においてチーフパーサーへの昇格を条件に出されます。それはよりこの会社、システムにどっぷりとつかっていくことでもあり、責任が生まれていくこと。でも同時に安定を手に入れキャリアとしては上に登れるのです。

航空会社の規則で・・・人事評価のルールで・・・売上促進のための施策で評価が・・・

そんあものに嫌気がありつつも、そろそろキャリアアップとかも考えなくてはいけない。ある意味でクライシス状態だと思うんですよね。しかもコロナという社会的な混乱があると、挑戦することが余計に怖くもなりますし。

若いから後戻りできるって感覚がどんどんと失われていき、だとしたらはやくキャリアを積んでおかないと歳ばっかり喰ってしまう。

この絶妙に子どもっぽくも大人っぽくもある感じを、さすがの存在感で演じるアデル・エグザルホプロス。ちょっとむすっとした態度とか、内側に怒りを持ちながらも仕事なんでちゃんとやるところ。

地上に生きることはできるのか

そして後半に連れてわかるカサンドラのさらなる不安に向き合う姿を演じています。

彼女は母の喪失に苛まれている。逃げるように空を飛び回っていたのです。父はどう見ても彼女の仕事もキャリアも認めていない感じがしますし、居心地が悪いのは理解できます。

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地元の友達と遊べば、なんだかんだみんな安定した生活を送り地盤を固めつつある。

本当はカサンドラもそれを望んでいるのかもしれませんが、口からは特定の誰かと安定するなんて無理。という言葉が出てきます。

これまで空を飛んできた、つまり地上に足をつけることから逃げてきた彼女にとって、今更そんな生き方ができるのか。

でも今のままは嫌だからと転職を決意する。そこで結局はプライベートジェットにおける客室乗務員の面接を受けているのがちょっと滑稽にも見える。

あの面接で体型とかルックスをチェックされるところとか、当たり前だよねって感じに私生活よりも仕事優先って言われるところ。ちょっと彼女のような若い女性に対しての息苦しさも透けています。

混乱した世界で境目を迎えた皆の物語

エマニュエルとジュリー監督の二人は、若い女性の若さからの脱却と安定のキャリアの境目の葛藤を、現代の混乱した情勢を交えて個人のドラマとも今を生きる皆の物語とも取れるバランスで描き出しました。

いい意味で映画的な派手さとか華やかさを排除し、仕事を仕事として切り取るスタイルの良さ。わがままと保守。違う世界に飛び出す勇気のなさ。不安。

これは結構刺さる人には刺さる映画だと思います。

まさに今20代後半や30代前半の方に、この数年間の自分の仕事やキャリアや恋愛、私生活と重ねてみてみてほしい作品でした。

フランス映画祭の作品なんかも、今は配信で触れられるのはありがたいことです。拾い物でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

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