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「ビール・ストリートの恋人たち」”If Beale Street Could Talk” (2018)

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映画レビュー
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「ビール・ストリートの恋人たち」(2018)

  • 監督:バリー・ジェンキンス
  • 脚本:バリー・ジェンキンス
  • 原作:ジェームズ・ボールドウィン 『ビール・ストリートに口あらば』
  • 製作:バリー・ジェンキンス、ミーガン・エリソン、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、アデル・ロマンスキー、サラ・マーフィ
  • 製作総指揮:ブラッド・ピット
  • 音楽:ニコラス・ブリテル
  • 撮影:ジェームズ・ラクストン
  • 編集:ナット・サンダース、ジョイ・マクミロン
  • 出演:キキ・レイン・ステファン・ジェームズ、マイケル・ビーチ、レジーナ・キング、ディエゴ・ルナ、デイヴ・フランコ、ペドロ・パスカル、エド・スクレイン 他

ジェームズ・ボールドウィンによる小説を「ムーンライト」(2016)のバリー・ジェンキンス監督が映画化。

主演を務めるのはキキ・レインとステファン・ジェームズ。また主人公の母を演じるのはレジーナ・キング。彼女は今作でアカデミー賞助演女優賞を受賞しています。

あのバリー・ジェンキンス監督の新作ということで期待値も高く、昨年のNYFFあたりでもかなり高い評価を得ていた今作。私も楽しみにしていました。

原作は読んだこともなく、けっこうまっさらな状態で鑑賞。アートハウスタイプの映画ではありますが、公開初週ということもあってか結構人が入っていました。

ティッシュは幼馴染のファニーと恋に落ち、二人は深く愛し合っていた。しかし、ある日ファニーは無実の罪で投獄されてしまう。

ファニーを何とか助け出したいティッシュや彼女の家族は、必死に弁護士に頼み込み、証言の正確性や警官の横暴な論理を覆そうとしていた。

なかなか解決の糸口をつかめない中、ティッシュはファニーの子を妊娠していると分かる。

舞台となる1970年代前半の、黒人に対する差別、警官の暴力的な態度などの時代性のある作品ではありますけれど、私には決して距離のある物語には思えませんでした。

その社会的な問題が今尚残っているという部分もありますが、何よりこの作品で描かれる風景や人々、彼らの心、行為がなぜか自分の人生にも流れているように感じるからです。

全然違う時代と場所なんですが、バリー・ジェンキンス監督はどうしてか、観ている自分の体験なんだと感じさせてしまう空気が作れるようです。

「ムーンライト」の時もシャロン/ブラックにとても感情移入してしまったのですが、今作も一つ一つが自分の思い出のように感じました。

暖かな光に包まれたオープニングの俯瞰からの二人を切り取る撮影に、雨の降る夜の街、マジックアワーの空にともり始めたライトが入り込むカラフルで幻想的な夕暮れ。

実際にあの中を歩いているように感じますし、暖かな日差しのにおいや湿った通りの空気を感じる、または思い出すのです。

出てくる人物みんなの存在やかれらの感情など、笑うときも泣くときも確かな手触りを持っていると思います。

使われるスローやカメラを真っ直ぐ見つめるショットなど、この映画の中の人物たちが本当にそこにいて、この理不尽な世界と戦っているんだと思えました。

幻想的な美しさを持ちながらも、作品内の世界はとても残酷です。

ある意味救いがないですね。でも、差別や偏見との闘い、社会的なものとして観ればそうでしょうけれど、今作は貫き通してラブストーリーでした。

そうして純愛の物語として観れば、救いのお話なのかもしれません。

ガラス越しに手を重ね、愛し合う二人の若者。ティッシュの言う通り、こんな風にガラス越しで会う恋人はおかしいです。こんなに辛いことはありません。

ただティッシュもファニーも、両親家族もみな、理不尽な世界に屈しないんですよね。

どこまでもお互いを愛し合って、信じて生きていく。困難でとても苦しい人生にはなったかもしれませんけれど、彼らを囲んでいる世界によって、大切なものを壊させはしませんでした。

かなり静かな映画で、所謂盛り上がりとかクライマックスとか、その他別段スピーチシーンもありません。

ですが染み入ってくる空気や感情、どこを観ていても自分の話だと思わせてしまう不思議な感覚と力のある作品だなと思いました。

ボールドウィン氏の言葉で始まる今作は、「ビール・ストリートは全ての黒人の故郷である」のかもしれませんが、全然違う時代に日本で生まれ育った私にもなぜか懐かしさを感じさせてしまう。美しい作品でした。おススメです。

今回は短めの感想となりました。また次の記事で。では。

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