「ゴンドラ」(2023)
作品概要
- 監督:ファイト・ヘルマー
- 出演:マチルデ・イルマン、ニニ・ソセリア
感想/レビュー
ジョージアの美しい山を背景に、行き来するゴンドラを主な舞台としたすごくこじんまりとした作品。
そのスケールこそは確かに山とゴンドラが2つなのですが、しかし込められていた豊かさが本当に素晴らしい奥行きをもった見事な作品でした。
シンプルにそぎ落としていく先にこそ、こうした人間の営みの美しさが見えてくるものなのかもしれません。
素朴な舞台設定に主だった人物は2名の女性。そしてサイレント映画のようにセリフというモノがなく進行していく。
でも眺めているだけでもすごく楽しかった。
ロケーションは最高です。
優しい緑をたたえる山、透き通り澄んだ青が塗り広げられた空。
ゴンドラの朱色には落ち着きと暖かさがあり、そして乗り場やロッカールームなどのパステル調のカラーも可愛らしさがあります。
映画はどこかミニチュアの世界のような質感を持ち、軽やかです。
人物のドラマもしっかりと感じられつつも、あまり生々しさはなくてほのぼのとしていました。
セリフがないってことに途中まで正直意識も行かないくらいにドラマがあって、そして目で見ているだけで幸せな、二人の交流。
すれ違う一瞬だけを共有する。その煌めくようなひと時のために、二人はあらゆる創意工夫をしていく。
ここに遊びというモノが込められていました。人間が作り出す遊びとその美しさ。
想像を膨らませあれこれと作りこめば、シンプルな舞台にも冒険や闘い、音楽とセクシーな魅惑の瞬間までも生み出されていく。
互いのために準備する姿が可愛らしかったり、デートシーンなどの夜闇に光をともす綺麗な空間も素敵です。
どんな環境であっても、こうして創り出すことで世界は豊かにしていけるもの。
ジョージアからとても可愛らしくて美しい、キラッと光る宝物のような映画でした。
感想は以上。
ではまた。
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