「スノーデン」(2016)
- 監督:オリバー・ストーン
- 脚本:キーラン・フィッツジェラルド、オリバー・ストーン
- 原作:ルーク・ハーディング 「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」、アナトリー・クチェレナ ”Time of the Octopus”
- 製作:モリッツ・ボーマン、エリック・コペロフ、フィリップ・シュルツ=ダイル、フェルナンド・サリシン
- 製作総指揮:マックス・アルヴェレズ、マイケル・バシック、ダグラス・ハンセン、ジョゼ・イバネス、ピーター・ローソン、セルジュ・ロボ、バーマン・ナラギ、トム・オーテンバーグ、ジェームズ・D・スターン、クリストファー・ウッドロウ
- 音楽:クレイグ・アームストロング、アダム・ピーターズ
- 撮影:アンソニー・ドッド・マントル
- 編集:アレックス・マルケス、リー・パーシ―
- 出演:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、シェイリーン・ウッドリー、ザッカリー・クイント、トム・ウィルキンソン、スコット・イーストウッド 他
「7月4日に生まれて」(1989)や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(1994)のオリバー・ストーン監督が、2013年にアメリカ国家安全保障局の機密情報を暴露した、エドワード・スノーデンを追った伝記映画。
主演には「ダークナイト ライジング」(2012)や「ザ・ウォーク」(2015)のジョセフ・ゴードン・レヴィット。周りにはシェイリーン・ウッドリーやザッカリー・クイント、カイル・イーストウッドにちょっとだけニコラス・ケイジも出演しています。
公開初日に観たので人は多かったのですが、あまり若い人がいませんでしたね。題材的には政治社会ものですが、事件自体は若い人ほど注目したほうがいいものです。
アメリカ国家に陸軍特殊部隊として貢献したかったエドワード・スノーデンだが、怪我によりその道を絶たれ、代わりに情報部門でのキャリアを選ぶ。
彼自身の卓越した情報処理能力、革新性は高く評価され、プログラムの開発を任されるほどになった。
そして彼は、膨大な情報をタンクと入して保存し、自在に選り分け参照できるプログラムを作り上げる。しかし、プログラムの計画は急遽終了されてしまう。
そして数年後、異動先の情報部で、スノーデンは自分が開発したプログラムにそっくりなものが稼働しているのを目にするのだった。
さて、オリバー・ストーン監督が今作で目指したところ、それはなんなのかという事で、私個人としては非常に困惑した印象です。
主題にあるとおりに、今作はこのエドワード・スノーデン彼本人を描き出す作品なのは間違いないのです。
レヴィットもウッドリーも良い演技で、この倫理的な良心と愛国心の間で葛藤する男を描き出すことは、できていると思いました。
ハッキリと愛国者であり、少しリベラルを軟弱に考え、国を守る上で必要な行動を知るスノーデンが、仕事をするほどに愛する人を裏切っていると感じていくのはつらい部分ではあります。
ただ、私はそういった要素がたくさん入っていても、どこかドラマチックさに欠けていたと感じました。それは構成上にノイズがあるのかと思います。
本作はスノーデンが告発する決心をしており、ガーディアン紙の取材陣に会う場面から始まりますね。そしてスノーデン本人の歴史を振り返る。ある程度関係はありつつも、そのほとんどは告発そのものではなくやはりスノーデンという人の物語なのです。
そんな個人的な話の合間に、ちょこちょこと告発のために準備をする時間軸が挟まれます。そこでのスノーデンは単に貴重な情報提供者でしかなく、彼自身の内面に関してやドラマ性は見えません。
もはや陰謀論的なスリラーとなっているその告発準備の時間軸、そして一人の男の苦悩と愛を描く過去の時間軸。
互いの関連性、連動性があまりに薄く感じ、正直言って切り替わるたびに、告発側の事を忘れていて、ああそういえばそうだったね。と言った退屈さが出てしまいました。
その先に、スノーデンが告発してから逃走の流れもあり、そして最終的に彼が英雄なのか国家の裏切者なのかの是非に突入していきます。
そこではストーン監督は明らかにスノーデンを英雄、正義の人とするスタンスがはっきりとして見て取れますね。
ですが、これは題材に関しての見方と考え方なのですが、個人的には今作はあまりにエドワード・スノーデン本人を最後まで追い過ぎなのではないかと感じるのです。
「僕自身ではなく、この公開された事実に対しての是非を考えてほしい。」それがエドワード・スノーデンの考えです。つまり彼がどうこうではなく、事実としてあるアメリカ国家による大規模な監視情報収集について考えろと言うのです。
そのメッセージに対して、今作はスノーデンという人物を押し出し過ぎに思え、さらにその割には割って入るジャンルの違うシーンによって伝記としてのドラマ性も削がれてしまっている印象でした。
てんかんとかさ、大筋としてなんも関係ないしね。
各プロットの語りが良い分、相互につぶし合うような構成と、実在の人物が提示するものを薄くして、その人物ばかり見せようとする作りには残念に思った作品でした。
そんなところで感想は終わります。「シチズンフォー」を見ましょうね。では。
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