「アウトフィット」(2022)
作品解説
- 監督:グレアム・ムーア
- 製作:スクープ・ワッサースタイン、エイミー・ジャクソン、ベン・ブラウニング
- 製作総指揮:ブラッド・ジマーマン、アシュリー・フォックス、ミラン・ポペルカ、ジョナサン・マクレイン
- 脚本:グレアム・ムーア、ジョナサン・マクレイン
- 撮影:ディック・ポープ
- 美術:ジェマ・ジャクソン
- 衣装:ソフィー・オニール、ザック・ポーゼン
- 編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ
- 音楽:アレクサンドル・デスプラ
- 出演:マーク・ライランス、ゾーイ・ドゥイッチ、ジョニー・フリン、ディラン・オブライエン 他
「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」でアカデミー脚色賞を受賞したグレアム・ムーアがの初監督作品。
ギャングの町シカゴで仕立て屋を行っている男が事件に巻き込まれていく一夜を描きます。
「シカゴ7裁判」や「ボーンズアンドオール」のマーク・ライランスが主人公を演じ、「ノット・オーケー!」でも共演しているディラン・オブライエンとゾーイ・ドゥイッチが参加。
脚本は監督とジョナサン・マクレーンが共同執筆しました。
公開情報などは特に追いかけていませんでしたが、年末年始明けにNETFLIXでの配信が始まっていて新着で見つけたのでさくっと鑑賞して観ました。
個人的にシカゴとギャング周りの時代設定とか好きで、あとスーツも好きなんで舞台がすごく気に入りました。
~あらすじ~
1956年、シカゴ。
レオナルド・バーリングは英国出身の裁断師で、アイルランド系マフィアのボス、ロイ・ボイルが牛耳る地域で仕立て屋を経営している。
ロイの息子であるリッチーとフランシスは、レオナルドの店を資金洗浄に利用しておりよく出入りがあった。
レオナルドは、ボイル・ファミリーのメンバーが重要な顧客であるため、見逃していたものの、店の受付係であるマーブルがとリッチーとの関係を心配している。
ある夜、リッチーとフランシスが銃をもって店に駆け込んできた。他のギャングへの襲撃で待ち伏せに会い、リッチーが撃たれたのだ。
ケガのこともあるが何より二人が気にするのは、襲撃のことを漏らした内通者の存在。
疑心暗鬼になった二人は互いに銃を向け、フランシスが隙をついてリッチーを撃ち殺してしまうのだった。
感想レビュー/考察
舞台的な設定だけど見事に映画
一つのお店を舞台に、基本的には一晩の出来事を追っていくという、演劇舞台にすごく効果的な脚本。
舞台的に感じられるようなこともあるのですが、撮影面での画面構成やアイテムのフォーカスなどと、映画らしいヒントもくまれた伏線のおかげ気にはなりませんでした。
なんといっても脚本が見事だったと思います。
今作のネタバレにもなっちゃうかもしれませんが、紳士的で温厚ながらも、どこか曲者を感じさせている主人公レオナルド。
彼のような造形を演じるに最適解と言っていいマーク・ライランス。
常に観ていながらレオナルドにも疑念を持たせ続けられている。巻き込まれてしまった悲しい男なのか、はたまた何かを企んでいるものか。
もちろんファミリーにおけるボスと、裏切り成り上がろうというフランシス。そして見習いとして来ているマーブルもやはり怪しい。
4つの勢力に対して終盤までずっと、誰が善で誰が悪なのかを決めつけさせない引っ張り方が秀逸。
だから興味が持続していて楽しい。
各人物と俳優が見事な配分で最後まで興味が続く
で、それももちろん配役と俳優陣のおかげだと思います。
ゾーイ・ドゥイッチもジョニー・フリンも、善良な面でも行けるし何か画策しているような二面性を出せる俳優だと思います。
対してディラン・オブライエンが演じてるリッチーは甘やかされてきたお坊ちゃん感がはまっていて、安心して心配しなくていいのもおもしろい。
そして何よりもマーク・ライランス。
「ブリッジ・オブ・スパイ」でももぐりこんだスパイを演じて素晴らしかった彼は、優しい紳士的な、気弱な老人としても観れながら、「ボーンズ・アンド・オール」のようなどこかに闇を抱えた恐ろしさも醸し出せる。
巻き込まれたおじいさんとして気にかけ、レオナルドが無事でいることを案じながらも、どこかでこの人を全部信用しきれない感じ。
様々なリアクションにどことない嘘っぽさがあったり、銃に対しての反応だったりと不安にさせてくれる良い演技でした。
彼自身「キングスマン」などで有名なHUNTSMANで裁断などのトレーニングを受けたらしく、そういった役作りも貢献しています。
最後の部分、結局主人公のレオナルドはかなりの大物であり、かつては裏社会でおそれられた男だったということ。ギャングの構想を感じ取り、この夜の全てを画策し再び闇に消えていった。
ストーリー自体には破綻もないし、無理な人物もいないしでシンプルストレートにミステリーとスリラーを合わせて楽しむことができます。
エンタメとしてのこうした完成度って、実は難しいと思うのですが、人を選ばずに楽しめて渋いテイストが良い作品でした。
今回の感想はここまで。
ではまた。
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