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「アシュラ」”아수라” aka “Asura : The City Of Madness”(2016)

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Film-Asura-The-City-of-Madness-2016 映画レビュー
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「アシュラ」”아수라”(2016)

Film-Asura-The-City-of-Madness-2016

作品概要

  • 監督:キム・ソンス
  • 脚本:キム・ソンス
  • 製作:ハン・ジェドク、カン・ヒョン、キム・ジョンミン
  • 音楽:イ・ジェジン
  • 撮影:イ・モゲ
  • 編集 キム・サンボム、キム・ジェボム
  • 出演:チョン・ウソン、ファン・ジョンミン、クァク・ドウォン、チュ・ジフン 他

「FLU 運命の36時間」などのキム・ソンス監督が贈るクライムスリラー。

汚職に手を染めた悪の市長と彼の汚れ仕事を請け負う悪徳刑事、そして彼らを追う検事、それぞれの生き残りをかけた戦いを描きます。

主人公である刑事を「私の頭の中の消しゴム」などのチョン・ウソン、そして悪徳市長は「ベテラン」などのファン・ジョンミン、検事役には「コクソン」のクァク・ドウォンが演じています。

韓国ノワールの濃縮のような、タイトル通り修羅の世界を描いた今作はその強烈さから話題を呼び、興行的にも成功。

さらに青龍映画賞でも多くの受賞を果たしました。

日本でも17年に公開されていましたが、当時は映画館へ行くほどに韓国映画を見ていなくてスルー。

配信で鑑賞という結果になりました。といっても見たのは結構前なのですが、なんとなく見直したのもあって今回感想を残します。

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~あらすじ~

Film-Asura-The-City-of-Madness-2016

韓国のアンナム市では市民に絶大な人気を博すパク・ソンベ市長がいた。

不正を許さず市民のために尽くすのはあくまで表の顔、裏では殺人までもいとわず汚職に手を染め切っている大悪党である。

末期がんの妻の入院治療費を出してもらう代わり、市長の汚れ仕事を引き受けていた刑事ドギョン。

彼はある依頼の最中にミスを犯し、人を死なせてしまう。

その現場の証拠をつかんだ検察局はドギョンを脅迫、真の狙いはパク・ソンベ市長の犯罪、その指示の証拠をつかむことだったのだ。

検察にスパイの仕事をするように頼まれたドギョン。市長側の疑いの目をかいくぐりながら、検察をも出し抜いて生き残ろうと必死にもがく。

感想/レビュー

Film-Asura-The-City-of-Madness-2016

悪人ごった返し

ロクでもない人間、クズ、悪人、醜悪さ。

どれもが突き詰められていく韓国のこのノワールのテイストには世界の様々な国の同ジャンルも及ばない気迫があります。

凄惨でありつつも決して冷酷ではなく、むしろ惨たらしいのに熱気にあふれている。

胸糞悪い連中がただごった返している地獄鍋を求めるなら、おなか一杯に楽しめるのがこのキム・ソンス監督のアシュラでしょう。

飽和してしまうくらいの量があるので、人によっては小食気味になることも間違いなくあると思います。

そのうえで私はかなり楽しんで観ていた映画になりました。

強烈な人物造形

何よりもこうした韓国映画を支えているのは、優秀すぎる俳優陣でしょう。

顔が良いのに世渡り的な意味で頭の悪すぎるドギョンを演じたチョン・ウソンさん。カッコいいのに悪の世界を生き抜くにはバカなところがまたいいですね。

だからこそ突っ走っていく。彼自身に策略がないくせに、命の綱を手繰り寄せてその先に獅子の口を見つけてしまう。

この役にはやや同情すべき(妻のこと)もあり彼だけは家族という人間臭い部分も用意されているので、そのしんみりした部分も出来なくては。

そして同時にまさに人間を捨てて修羅になっていく狂気も。

両面を演じ私たち観客に少し繋がりながらの案内人として素晴らしかったですね。

Film-Asura-The-City-of-Madness-2016

そしてやはりわれらがファン・ジョンミン。

「ベテラン」やら「生き残るための3つの取引」、「哭声/コクソン」など幅広い役の中で時にヒーロー、怪しい祈祷師など演じてきた彼が、作品世界でも大きな存在である市長を、これまた大迫力で演じます。

今作を見てパク・ソンベ市長を忘れる人はいないでしょう。

ドギョンの個人的なレベルまでも踏み込んでくる部分、表裏の使い分け。

ノーパンワイシャツネクタイとかいう強烈なビジュアル。会見席で上だけ見れば立派、でもその実醜悪な恥さらしということですね。

かなりのシーンスティーラーですが、彼が全部持って行かない覇気がみんなにあるので素晴らしい。

検事役のクァク・ドウォンさんもいい味です。丁寧口調で暴れ散らすとんでもないパワハラ野郎ですね。

脇役すら「棒切れ」とかいうよくそんな名前思いつくと思うユニークキャラがいますね。

エンタメとしての安定

中盤にはカーチェイスがあったりと盛り上がりどころも抑えていますが、疑似的でしょうけど長回し風で車外と車中をスムーズに行き来するカメラなど見どころがありました。

突っ走っていいってぜんぜん戦略がない部分も、ドギョンのただ前へ進むしかない状況とシンクロしているのでしょう。

Film-Asura-The-City-of-Madness-2016

上層への絶望と再生

奈落の底へ進んでいくクソどもですが、そもそもなぜここまで救いのない話を?と思います。

韓国の映画では良く感じることですが、やはり根底には権力や上層への圧倒的な不信感があるのでしょう。

そこでこれまでであれば、例えば富裕層の力と不正に対し正義の心を持つ刑事をぶつけた「ベテラン」のように、ヒーローがいても良いでしょう。

しかしドギョンは善良な刑事ではない。

棒切れに班長殺害の罪を着せた、映画の最初から腐ってる男です。

だから彼も死ななければならない。

検察も結局は市長に丸め込まれるクズ。彼らも死ななければならない。

みんな死ななければならないのです。

自身で敵を作ってはそれを倒し英雄像を磨き上げるパク・ソンベ。それを助長し甘い汁を吸う輩たち。

腐りきった世界は殺し合いをさせて一度浄化しなければいけない。だからこその地獄の葬式会場。

ヒーローを失った世界を描き、みんな消し去った今こそ希望があるのかもしれませんね。

韓国ノワールの濃縮みたいな映画です。楽しめました。

そんなところで感想は以上。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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