「87分の1の人生」(2023)
作品解説
- 監督:ザック・ブラフ
- 製作:ザック・ブラフ、パメラ・コフラー、フローレンス・ピュー、クリスティーン・ヴェイコン、クリスティーナ・ピオヴェサン、ノア・シーガル
- 製作総指揮:ベヴァリー・ロジャーズ
- 脚本:ザック・ブラフ
- 撮影:マウロ・フィオーレ
- 編集:ダン・シャルク
- 音楽:ブライス・デスナー
- 出演:フローレンス・ピュー、モリー・シャノン、チナザ・ウチェ、セレスト・オコナー、モーガン・フリーマン 他
ザック・ブラフが脚本、監督、製作を務めたドラマ映画。
「ブラック・ウィドウ」などのフローレンス・ピュー、「プロミシング・ヤング・ウーマン」などのモリー・シャノン、チナザ・ウチェ、セレスト・オコナー、そしてモーガン・フリーマンが出演しています。
作品自体は小粒ですが、話題のフローレンス・ピューも出てるし、名優モーガン・フリーマンも出演しているなど注目度は高そうなんです。しかし一般公開にはならずにこちら配信公開になっていますね。
アマプラ漁ってたらお勧めに出てきたので鑑賞してみました。
~あらすじ~
アリソン・ジョンソンは、音楽家を夢見る若者で、高校時代からの恋人であるネイサン・アダムズと婚約していた。
家族で集まってのパーティーの翌日、アリソンは運転中に事故を起こし、将来の義理の兄弟姉妹であるジェシーとモリーを亡くし、自身もひどい怪我を負ってしまう。
1年後、アリソンは深刻なうつ病に苦しみ、自分の罪悪感に打ちのめされていた。
アリソンは今母のダイアンと一緒に住んでおり、痛み止めの薬に依存している。彼女の鎮痛剤への依存は深刻で、母は厳しくもセラピーを勧めたが、アリソンは頑なに反発する。
一方、ネイサンとモリーの父親であるダニエルは、まだ母親を失ったことを受け入れられない孫娘のライアンの世話を一人でしている。
ある日ダニエルは、禁酒のためのセラピー会でアリソンと出会い、二人は気まずいながらも交流を始めた。
感想/考察
フローレンス・ピューの映画
今作はフローレンス・ピューを見る映画だと思います。
もう説明不用の才能である彼女ですが、今作ではハッピーな若き才能というところから絶望の淵に沈んだ女性、そしてそこからの再生にいたるまで、非常に変化ある人物を演じています。
彼女は陽気さも持ち合わせ、そして精神的に不安定であったり、素直になれない部分など、これまでのキャリアでも見せてきた役の幅をここで集約しているようでした。
さらに今回は歌まで披露しています。
歌ってるところまで見れたのは良かったと思います。
そんなわけでフローレンス・ピューを観るという面では楽しい作品です。
重ための再生への道
さて、ストーリーは結構重くなっています。
癒して再生していくような話ではあるのですが、喪失と過去の傷跡などをじっくり見ていく作品であり、しかもそれはアリソン、そしてダニエル、さらにライアンと3つあるのです。
なので重い。といっても最終的にはメンディング。
癒していく作品としては後味は良いものかと思います。
依存症との戦い。その依存になる理由である根源的な精神的ショック、トラウマへの向き合い。
アリソンとダニエルの交流というモノが主軸にあり、気遣いと一定の距離感を持っていた彼らが本音でぶつかり合う場面が印象的。
アリソンの言動には一部引っかかりを残して進む。序盤に明確に”It was not my fault”(私に責任はない)とはっきり言っているんですよね。
その後に旧友にあったり、かつて高校の頃に同じ学校だった人とあたりする場面で見えるのは、どこかにプライドと傲慢さをもったアリソン。
少し嫌な人にすら思えます。
罰のない罪こそ最もつらい
逃げ続けるアリソンが感じているのは、やりきれない罪悪感なのでしょう。
彼女は確かに彼女の言うように、司法的な面では完全に無罪になっているようです。
しかし、そこに自分の責任が介在しているということ自体は、彼女も重々認識している。
そこに最もつらいものがあります。つまり裁かれないということです。
絶対的に自分を罰してくれるものがないという状態。
罰をこなすことも何か期限付きの不自由もない。それゆえに彼女自身が自分を許せないという状態は永遠に続くのです。
しっかりと断罪されない状態のアリソンにとって、ダニエルの感情の吐露は実は救いであったのかもしれません。
今作はそうした重くのしかかり響いてくるシーンがいくつかあります。
しかし総括すると私はうまく行っている作品とは思いませんでした。
それはそういった感情揺さぶられるシーンの演出に関して、そしてその後の展開について、正直余計だと思うことが多いからです。
正直言ってアリソンだけに絞ってもいいくらいなプロットでダニエルも絡む、そのうえでネイサンもライアンもいる。
静かに始まるドラマは、例えばダニエルがライアンを救おうとするシーンなどで過剰になりすぎる気がしました。
そしてそうなると途端に、よくある”心に傷を抱えた人たちの癒しのドラマ”的なクリシェに陥ってしまう。
フローレンス・ピューの演技を楽しめることは間違いなく、また例えばアリソンとネイサンの復縁などの安直な愛による救済なんてことにしなかった点は良いです。
惜しかった作品であるのが正直な感想です。
今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。ではまた。
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