「キャッシュトラック」”Wrath of Man”(2021)

「キャッシュトラック」(2021)

  • 監督:ガイ・リッチー
  • 脚本:ガイ・リッチー、イヴァン・アトキンソン、マーン・デイヴィス
  • 原作:ニコラス・ブークリーフ『ブルー・レクイエム』
  • 製作:アイヴァン・アトキンソン、ビル・ブロック、アンドリュー・ゴロフ
  • 音楽:クリストファー・ベンステッド
  • 撮影:アラン・スチュワート
  • 編集:ジェームズ・ハーバート
  • 出演:ジェイソン・ステイサム、ホルト・マッキャラニー、エディ・マーサン、ジョシュ・ハートネット、スコット・イーストウッド、ジェフリー・ドノヴァン、アンディ・ガルシア、ニアム・アルガー 他

作品概要

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「ジェントルメン」などのガイ・リッチー監督が、「スナッチ」などから何度か組んでいる「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」などのジェイソン・ステイサムを主演に迎えて送るクライムスリラー。

現金輸送車への襲撃が相次ぐロサンゼルスを舞台に、ある新人警備員と彼の裏の顔、真の目的を描き出していくクライムスリラー。

主人公通称”H”の上司役には「ハドソン川の奇跡」などのホルト・マッキャラニー。その他同僚役としてジョシュ・ハートネット。

その他「アウトポスト」など活躍中のスコット・イーストウッドや、エディ・マーサン、ジェフリー・ドノヴァンなどが出演しています。

またFBIのボス役でアンディ・ガルシアなんて渋いところも。

ちなみに本作はエンドロール後に記載されています通り、2004年のフランス映画「ブルー・レクイエム」を原作としています。ガイ・リッチー監督自らが脚色して今作の脚本を手掛けていますね。

ガイ・リッチー監督作品は今年日本で「ジェントルメン」も公開されているので2本目になります。

予告公開時からステイサムの渋カッコよさに注目が集まっていた作品ですが、日本公開時にはちょうど緊急事態宣言が解除されたこともあってか、初週末の劇場は結構混雑していました。

ただ若い層というよりは、ステイサムのフェロモンをかぎつけたおじ様たちが主でしたね。

「キャッシュトラック」公式サイトはこちら

 

~あらすじ~

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犯罪多発都市のロサンゼルス。ここでは現金輸送車の襲撃が相次ぎ、ある襲撃では警備員2人と現場に居合わせた一般人までもが犠牲となってしまった。

その被害にあったフォーティコ警備会社に、一人の新人が入ってくる。”H”の愛称で呼ばれる彼は、運転も射撃もそこそこ合格点の地味な男だった。

初めのうちは目立たない男であったHなのだが、ある輸送の仕事にて強盗団の襲撃にあった際に、信じられないスキルを発揮する。なんと6人以上相手にたった一人で銃撃戦を展開し全員を射殺してしまうのだった。

特徴のない経歴のわりに圧倒的な強さを見せ、そんな事件を経ても冷静沈着なHを上司や同僚は怪しみ始めるが、会社としては良い宣伝だと彼を現場に戻した。

その後、襲撃者がHの顔を見ただけで逃げ出すということもあり、ますますこの謎の男Hに関心が集まる。

一方でHはフォーティコ警備社員全員の素性や行動について調べ始めており、さらに警備員と一般人が犠牲になった事件についても洗い出していた。

一体、Hは何者なのか・・・?

感想/レビュー

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重厚かつハードなクライムスリラー

ガイ・リッチー監督が描くのって、「俺が考えた最高にかっこいいギャング」みたいなものだと思っていますが、それがすさまじくハマれなかったのが今年公開された「ジェントルメン」でした。

もちろんあれは、それ以外にも興味の喪失を誘発するしつこいどんでん返しという脚本上の不具合もありましたが、今作は一転して好きな部類になりました。

監督の作風としてある、バイオレンスでありながらもどこかコミカルというか軽快なノリがあると思います。

今作に関してはそれが完全に封印され、非常に重苦しくのしかかる重圧を持ったテイストになっています。OPではワンカット風に今作のすべての始まりにもなる現金輸送車襲撃事件が描かれますが、そこでの固定視点長間回しの臨場感が宣言ですね。

動かない=軽快でなく重い。実録映像風のタッチ。

その後は何者でもない(ノーバディ)が何者か(サムバディ)になっていくカタルシスにあふれています。

それはまあ主人公がジェイソン・ステイサムなので当たり前ですが、やはりかっこいいわけです。

彼は顔立ちとか立ち振る舞いだけで、暴力感をだせる(誉め言葉)俳優なので、行動=アクションだけで引っ張るタイプとしてナイスキャスティングです。

そんなステイサム兄貴のアクションとしてですが、やたらと戦闘シーンがないという点も、盛り上げ方がうまいものだと思います。そうじて、今作の演出や脚本構成はかなり気に入っています。

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周囲のリアクションを使い説明し、アクションをとっておく

演出としては最近の実は恐ろしいやつでした映画の系譜を汲んでいると思います。「ジョン・ウィック」「Mr. ノーバディ」

主人公が何かをするようなクライマックス的なシーンではなくて、何もしていないのに対して、周りのリアクションでその存在の意味を伝えていくものです。

今回は特にアジトでのシーン。部下の方を見てもいないステイサムの背中に対して、部下がみんなビビり散らしています。

「事故だ。相手が悪い。ボスにそう伝えてくれ。」などのセリフ含めても、怒らせてはいけない相手である怖さが周囲を囲むキャラクターから描かれていきます。

これは、怖いやつだという演出と同時に、実際のアクションの爆発までの溜め込み効果も同時に発揮できるのですごくいいですね。

また時系列を入れ替える手法をとる今作ですが、そこを多用し過ぎなかった点も効果的と思います。

今作は主題として、Hとは何者なのかと彼の真の目的の展開をする必要があり、そこはミステリー的に引っ張っていく必要があります。しかし同時に、ストレートに復讐劇となればそこは強盗計画が絡みます。

中盤のHの正体や目的が分かるまでには、時系列を前後させることで解き明かす構造をとりますが、その後については因果を入れ替えたりしないため非常に見やすくなっています。

ジャンルに合わせて編集構造をスイッチしているのは巧いと思います。

実際、強盗団の金庫襲撃に関しては、事前の計画と実際という確かに2軸の時間を持ちながら、オーバーラップするために進行に支障が出ることはありません。

むしろ、リーダー格のジェフリー・ドノヴァンと、クソ野郎役のスコット・イーストウッドのあたりとか、カルマがらみな嫌な感じまで出せていますしね。

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全体にはカルマ。あとOPで示されるような悪魔の物語に集約したと思います。

Hはヒーローだとか悪役だとかの分類もなく、ただの悪魔でしょう。それは悪意を持っているという意味でもなくて、ただそういう生き物なのです。

そしてガイ・リッチー監督は悪魔の生き方と人間とのかかわり方を描きました。

闇の中で生き、己のやり方でしか生きることもけじめをつけることもできない存在。

奪われたものを回収する。目には目をのように、何かを奪った人間の前に現れて同じものをとっていくのですね。

結局その点ではあの元軍人たちも同じなのです。

彼らは彼らで家庭を持っている。自分の誕生日を祝ってくれる家族も子どもたちもいながら、しかしやはり人を殺す仕事に飢え、その殺しの世界でしか生きることができない。

クリストファー・ベンステッドのスコアが地の底から鳴り響くかのようにかかっていますが、随所に最後のシーンのスコア”Liver, Lung, Spleen, Heart”がベースに流れています。

ギャングとその世界、そこに生きる者たちの物語をいろろと描いてきたガイ・リッチー監督作品の中では、かなりテイストもハードなトーンも気に入った作品でした。

というところで感想は以上になります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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