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「ロブスター」”The Lobster”(2015)

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映画レビュー
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「ロブスター」(2015)

  • 監督:ヨルゴス・ランティモス
  • 脚本:ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ
  • 製作:ヨルゴス・ランティモス、セシー・デンプシー、エド・ギニー、リー・マギデイ
  • 製作総指揮:サム・ラヴェンダー、アンドリュー・ロウ
  • 撮影:ティミオス・バカタミス
  • 編集:ヨルゴス・マヴロプサリディス
  • プロダクションデザイン:ジャクリーン・エイブラハムス
  • 衣装:サラ・ブレンキンソプ
  • 出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジョン・C・ライリー、アリアーヌ・ラベド 他

ギリシャ人監督のヨルゴス・ランティモス監督の初めての英語作品。「籠の中の乙女」(2009)は名前こそ聞いたことがありましたが、今作が私は彼の作品の初鑑賞です。

今回は有名な俳優たちを集結していまして、作品は小さくとも世界的な作品になっているようです。本作は68回のカンヌで審査員賞を受賞しています。

小さな映画館で観ましたけど、色々な層がいましたね。笑いと驚きと、いろいろな感情が聞こえ、とにかく来ていた人はこの奇妙な世界を楽しんでました。

本作は日本でも3月ころにやってましたが、その時は見逃してました。

近未来の世界では、独り身の人間はあるホテルへと連れていかれ、そこで45日以内にパートナーを見つけられなければ、自身の選んだ動物に姿を変えられて森に放たれる。

そんな時に独り身になったデビッドもまた、このホテルへと送られることになる。

そこでは必死にパートナーを見つけようとする者たち、そして厳正かつ狂気的にそのシステムを監視するホテル側の人間など、彼にとって異常なものばかりが待っていた。

なんとかパートナーを作るものの、デビッドは独り者たちが隠れ住む森の中へと逃げ出すのだった。

この映画、おかしい(いい意味で)。

このおかしさがイラつかせるのであれば全く楽しめません。

かなりシニカルでブラック、残酷なユーモアに包まれている歪なものですので、不快に感じる人もいると思いますね。私はおもしろくて笑えた方なのですが。

このシュールなユーモアに笑えないのであれば、単にイライラして残酷な無意図なものに見えてしまうかもしれません。

さて、恋愛というものをこれでもかとシステマティックに落とし込んだ今作品は、ランティモス監督の見る現代社会における人の愛というものを皮肉をもって描かれていると感じます。

かなりディストピアに見えるようで、実は現実の延長と誇張に抑えていて、ロジックはしっかりと作用し観客も飲み込める作り。

好きな相手に合わせて無理をする。シングルであることが社会的にマイナスのステータスとなる。別におかしな設定ではないですよね。むしろ私たちの現代そのまんま。

ランティモス監督のエクストリームな言葉選び。

人物たちには行間や空気を読むというものがないのでしょうか、とにかく台詞が直接的かつはっきりとした偏りがあります。

設定も、「独身は罪なのでパートナー見つけてね。」っていう中で、人物たちも情け容赦なく話します。

ホテルのシステムでは靴にハーフサイズがなく、ホモセクシャルのオプションもない。セミナーは究極に偏った内容でカップル至上主義。そして独身者たちの中では血の接吻なるものがあるほどに独身至上主義。

どちらかに振り切った生き方しかできなくなっていますね。

この窮屈さは現代社会のカッチリと割られた社会ステータス、ひいてはSNSやらでの登録による割り切りに近いかと。

どちらの陣営も、相手方の淘汰と崩壊を目指して奮闘するという、かなり残酷ながら、それでいてすごく滑稽で間抜けです。全体に引きの画が多く、人が自然に比べてちっぽけなのもそれゆえでしょうか?

一人の空間を持ち、自分を捨てたり曲げたりせず、それでいて大切な相手との共有空間も作りたい。デヴィッドの態度はそこを目指しているように思えましたね。

セックスだけでなく、一人Hの空間も欲しい。

性的な活動も統制されたホテルからの脱出。音楽は1人で聞きたい時もあれば、二人で聞きたい時もある。あの笑わずにはいられない森での集団(個人)ディスコ。

あの独身者の中で、デヴィッドと目の悪い女はイヤホンこそ一人づつしているものの、同時に再生することで個人と共有の両立を成し遂げているように思えました。

愛のためにすべてを捧げられないのであれば愛する資格はない。

横暴な極論から逃げ惑うデヴィッドは、背中に薬を塗る行為によって、他者の必要性を示されていますが、これもパートナーである必要はないことです。

人間関係にはさまざまな距離があります。

友人、恋人、知り合い・・・ランティモス監督は現代社会における区画的な対人関係とその中で必死になる人間をシニカルなユーモアで描いて見せています。

その歪な滑稽さ、残酷さが退屈で不快なものなのか、それとも痛快で興味深い物か。そこに分かれ目はあると思うので、是非鑑賞してみてください。私はとても楽しめました。

ランティモス監督もこれからハリウッドの方で少し大きめの映画を撮り始めるのでしょうか?今後の監督の行方にも注目ですね。それでは~

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