「THE GUILTY/ギルティ」(2021)
- 監督:アントン・フークア
- 脚本:ニック・ピゾラット
- 原作:グスタフ・モーラー、エミール・ニゴー・アルバートセン
- 製作総指揮:アニー・マータ、クリスチャン・マーキュリー、ジョナサン・オーク、ジャスティン・バーシュ、グスタフ・モーラー、リナ・フリント、ニック・ピゾラット、エリック・グリーンフェルド
- 音楽:マーセロ・ザーヴォス
- 撮影:マズ・マカーニ
- 編集:ジェイソン・バランタイン
- 出演:ジェイク・ギレンホール、ライリー・キーオ、イーサン・ホーク、ポール・ダノ、イーライ・ゴリー、ピーター・サースガード 他
作品概要
デンマークのグスタフ・モーラー監督により生み出されたワンシチュエーションスリラーの傑作「THE GUILTY/ギルティ」。
それを、「イコライザー」などのアントン・フークア監督が「ナイトクローラー」などのジェイク・ギレンホールを主演に迎え、NETFLIX製作でハリウッドリメイクしたのが今作。
主人公として画面に映るのはジェイク・ギレンホールほぼ一人でありますが、通話相手役には「マッドマックス怒りのデス・ロード」などのライリー・キーオ、「魂のゆくえ」のイーサン・ホーク、またジェイクとは「プリズナーズ」で共演のポール・ダノらが出演しています。
もともと原作になるオリジナル版が公開してすぐの段階で、さっさとハリウッドでのリメイクが決まっていたのは記憶に残っていますが、製作はNETFLIXになりました。
一応は配信作品ではあるのですが、日本では10月の配信と同じ時期に一部の劇場での限定公開もありました。
昨年はこうしたNETFLIX映画は限定公開にも行ったのですが、こうして会員になったのでストリーミングでの鑑賞になります。
「THE GUILTY/ギルティ」NETFLIX公式サイトはこちら
~あらすじ~
犯罪多発都市のロサンゼルス。
ロス市警の警官であるジョー・ベイラーはある事件の審問の間現場を離れ、緊急通報のオペレーターをしている。
山火事が発生し各所で警官や消防隊の動員が行われる中で、ジョーのもとには様々な通報がかかってくる。
ただの酔っ払いや娼婦に引っかかった証券マンなど、ジョーにとってはただのクソ野郎どもだ。
今日のシフトも終わるという頃、一本の通報がすべてを変えた。
それは女性からの通報なのだが、どうやら彼女は誘拐され車で移動しているようだった。自分の子供と話しているふりをさせ、ジョーはなんとか女性の状況を掴もうとする。
犯罪歴のある夫、残された女の子と赤ちゃん。
どこかへ向かっている女性を乗せた車。位置情報や環境音、女性からの情報を頼りに、ジョーは決死の救助を試みる。
感想/レビュー
丁寧になぞったリメイク
そもそもデンマーク版というかオリジナル版になるモーラー監督の作品を観ているとするならば、もはやその衝撃も脚本におけるツイストもないでしょう。
特段このリメイクにおいてここが違うよ!といった点はありませんでした。
かなり脚本的にもきれいになぞって展開されるスリラーになっております。
ただ異なる点で一つの要素としては、ロサンゼルスという大規模な街において「いくら深夜だといっても人手不足はないだろう」という突込みに対し、山火事という災害があるからと理由をつけたところでしょうか。
ジェイク・ギレンホールと山火事というと、それこそポール・ダノの監督した「ワイルドライフ」を思い起こしますが、この山火事が迫ることでの何かとかはなかった。ほぼ本筋には影響しません。
ここで何か迫りくる絶対に覆せないものとしてのメタファーがあったりすればもう少し今作のジョーならではの話になったかも。
ただ、もともとの脚本がそれは良いわけですから、あんまり余計なことをしなかったというのは賢明な判断だとは思います。
展開をなぞるだけでも映画としてはそれなりにおもしろくスリリングなわけです。
うっすらと感じるBLM
山火事要素以外で言えば、今作におけるタイトルの意味合いがより広範囲に向けられていると感じる部分でしょうか。
“Guilty”は有罪、罪のあるという意味ですが、今作は白人警官ジョーの起こした事件とその罪を認めていくプロセスが込められます。
それだけならまあモーラー監督のオリジナルとあまり変わりませんが、おそらくBLMがほんのりと裏に置かれていると感じました。
途中で幼い娘との通話シーンがありますが、警官に関してのやり取りがやたらと強調されています。
警官は悪い人じゃない。警官はみんなを守るんだ。みんなを守る。
あまりにしつこくジョーが繰り返すのは、もちろん現実社会にて警官が人々を守っているとは思えない点へのしがみつきのようなものでしょうし、また彼自身が引き起こしたことへの言い訳です。
とまあそんな感じでアメリカナイズドされてより治安が悪くなったのですが、別に今作は視覚情報に頼る作品ではないので、その点でのビジュアルの強烈さはありません。
この限定的な演出の繰り出される作品を支えているのは、着実にオリジナルに基づくさ脚本。そしてセンターでがんばるジェイク・ギレンホールなんですよね。
信頼ある仕事っぷりで、キレまくり態度の悪い感じがなんともはまっているジェイク。
ややハリウッド的な過剰さがみえる
ただしかし、私個人的な意見としては実はジェイク・ギレンホールという要素にやや過剰さを感じてしまったと思うのです。
なんかよくわかんないけどマッチョな感じで映るのはまあじゃこういうタフガイじゃないとダメだからなのでしょうけれど、しかし問題は演技の面でした。
ちょっと強烈すぎる。ちょっと過度なリアクション、アクションが多すぎる。
たいてい欧州の映画がアメリカに行ったりすると、ハリウッドという薄利多売のような、とにかくドカ盛り大型ファーストフードのようになるもんですから、その例に漏れなかったのかもしれません。
もう少し静かな感じでもいいかな。
演技だったら、声だけの出演ながらもちょっとイカレてるのが疲れちゃうくらいに思えたライリー・キーオはすごくよかったと思います。
他人が引くほど追い詰められて泣いてると、怖いんですよ。それがちゃんと感じられました。
限定的な要素を使うしかない作品として、オリジナルへの忠実さを守り、堅実な役者をそろえて手堅い出来になっている映画です。ネトフリ会員なら見ておいて損はないでしょう。
オリジナル観てね
しかし、こうしたワンシチュエーション的な、シンプルな設定で複雑な展開を見せて逝ったり、ギミックが重要な作品は知らないほどおもしろく、知っているほどに薄くなる。
その点ではっきりと言いたいのは、まずオリジナルを見てほしいこと。そしてそれだけで良いかなと正直思うことです。
筋書きが同じなので、こちらを観てからオリジナルではなくて、やはりオリジナルこそ見てほしいなと。そうなるとこの作品の立ち位置がまた怪しくなってしまいますが、しかししょうがない。
オリジナル押しばかりの感想になりましたが、今回はこのくらいで。
最後に言いますが、やはりモーラー監督のオリジナルを・・・
ではまた。
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