「ハント・フォー・ザ・ウィルダーピープル」(2016)

  • 監督:タイカ・ワイティティ
  • 脚本:タイカ・ワイティティ
  • 原作:バリー・クランプ 「Wild Pork and Watercress」
  • 制作:カーシュー・ニール、マット・ヌーナン、レアン・サウンダース
  • 制作総指揮:シャーリー・マクレラン、ジェームス・ウォレス
  • 音楽:ルーカス・パウエル・ブダ、サミュエル・スコット、コンラッド・ウェッデ
  • 撮影:ラクラン・ミルン
  • 編集:トム・イーグルス、ヤナ・ゴルスカナ、ルーク・ハイ
  • プロダクションデザイン:ネヴィル・スティーブンソン
  • 美術:ジョン・リスゴー
  • 衣装:クリステン・セス
  • 出演:ジュリアン・デニソン、サム・ニール 他

こちらは「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」(2014)の監督、タイカ・ワイティティ最新作。ニュージーランドを舞台に繰り広げるヒューマンドラマとなっています。

彼の作品は実は初めてw 私もまだまだ勉強不足なものです。批評筋の高評価はちらちら見ていたので、チャンスがあれば観たいと思っていたものです。

出演しているサム・ニールもニュージーランド出身で すしね~かなりNZローカルなほのぼの映画ですよ。

ちなみにタイカ・ワイティティはMCUフェイズ3、「ソー:ラグナロク」の監督ですね。

ニュージーランドのド田舎。そこに児童保護局から一人の男の子が連れてこられた。職員によると、リッキーは母に捨てられた子で、なにかと問題を起こしているという。そんな彼はこの森に囲まれた田舎に里子としてやってきたのだ。

おばさんは陽気で、リッキーは少しづつなついていくが、おじさんは頑固者。

しかしせっかく慣れてきたそんな時、おばさんが他界してしまうのだった・・・

作品全体に広がるのは、なんだかかわいらしい田舎感。ニュージーランドの森、山々、川。自然が過酷にではなく、温かみをもって描かれています。なんだかほんとにのんびり。

この全体にわたる柔らかな空気が、内容的にはけっこう大変な本作を一定の安心感で包んでいると感じました。この自然が背景にあってくれるのが、私にとってはなんだか安全保障のようなもので、どんなに事態が緊迫しても尚暖かく見れる要因でした。

で、こののんびりした空気が人物やドラマにもしっかり浸透しております。とにかく事実に対してかなり笑えて楽しめる。

そう、コメディなんですよ。リッキーとおじさんはじめ出てくる人物の掛け合いの面白さが光りますね。エクストリームではなく、小さなことを大げさにすることで生まれる笑いが多いです。それがこの広大なのにのんびりとしたNZの舞台とマッチしていると思いました。

リッキーの子供じみた、なりきりのギャグもすごく楽しめましたね。すべてがごっこ遊びに見えるところも可愛らしくほのぼのしてます。

森の中でのリッキーの迷子とか、あれはデジタル処理なんでしょうかね。結構好きな場面。彼の空腹による幻覚とか、おばさんの血まみれにっこりとか、視覚的に笑っちゃう部分も多々ありです。

ただ描かれていることはなかなかに社会的だったり。

リッキーのお母さん、未成年にして母親になったということですが、これは結構問題になっていることらしいです。またおじさんの識字問題も、いまだに残る社会的な障害ですね。

そういったものを感じされつつも、表に出すのはやはりユーモアです。その中にほっこりと暖かいものが確かにある。

リッキーとおばさんの関係はホントに序盤のみですが、そこで何をリッキーは必要としているかがしっかり示されます。頼れる存在と友達。

ゆたんぽを巡っての繰り返すカットで、それが消えてしまうところの切なさは印象的です。単に体だけでなく、心を温めてくれたもの。おばさんというぬくもりを失ってしまう悲しさを、リッキーに何も喋らせずに伝えてきますね。

で、リッキーが再び家を失ってしまう訳なんですが、ここで感じたのはおじさんの喪失。「ジュラシック・パーク」(1993)よろしく子供嫌いで頑固なおじさんですが、彼こそ家族がいないとダメだと思ったんです。

今作はよりどころのない子供が新しい居場所を見つけるだけではなく、同時に居場所を失った老人が他人との交流を経て再生する話だと思います。

生きる術を教わり、少しづつ一人前になっていくリッキー。そしておじさんもリッキーによって刺激を受けていきます。互いにからかい悪口を言いつつも、この不足する者同士としての共同体を作り、森の中で生きていきます。

リッキーは再び里子に出されてたらいまわしにされるのを恐れ、おじさんは刑務所に送られることが心配なんですが、ここでの決着もおもしろく。

最後にはおじさんが文字を読み、俳句を作る。それに対し、”Majesticle”と返す心温まるシーンで締めくくっていきます。

リッキーもおじさんも、お互いの領域に組み込まれるのではなく、この二人だけの居場所を新たにつくり共有していく。

人が人と家族になっていく、親子になっていくという過程を真っ直ぐに描いていると感じました。

ニュージーランドからの心温まり、そして絶えず笑わせてくれる、二人の冒険物語。持たざる者の反抗であり、傷付いたものの再生であり。

それでものんびりと楽しんでみていける不思議な魅力と空気に満ちている傑作でした。日本公開頼みますよ~

ということで、未公開から感想を書きました。それでは、また。

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