「6888郵便大隊」(2024)
作品解説
- 監督:タイラー・ペリー
- 製作:ケリー・セリグ、カルロタ・エスピノーサ、アンジ・ボーンズ、トニー・L・ストリックランド、ニコール・アバント、タイラー・ペリー
- 製作総指揮:ピーター・グーバー、ケリー・ワシントン
- 原作:ケビン・M・ハイメル
- 脚本:タイラー・ペリー
- 撮影:マイケル・ワトソン
- 美術:シャロン・ブッセ
- 編集:メイジー・ホイ
- 音楽:アーロン・ジグマン
- 出演:ケリー・ワシントン、エボニー・オブシディアン、サラ・ジェフェリー、スーザン・サランドン、オプラ・ウィンフリー 他
第二次世界大戦中、黒人女性のみで構成された郵便大隊に着目し、彼女たちが任務に就くまでカラ実際に欧州で任務にあたる様を描き出す歴史ドラマ。
今作はケビン・M・ハイメルによる記事「Fighting a Two-Front War」に基づいています。
監督は「モンタナの目撃者」など俳優としても活躍しているタイラー・ペリー。出演は「ジャンゴ 繋がれざる者」などのケリー・ワシントン。その他、エボニー・オブシディアン、サラ・ジェフェリーらが出演。
ゲスト的ですが、スーザン・サランドンとオプラ・ウィンフリーも出演しています。
作品はNETFLIXでの配信公開となり、劇場では観ることはできません。ネトフリの新着にあったので早速鑑賞。そして、先日のアカデミー賞ノミネートではダイアン・ウォーレンが主題歌賞にノミネートしています。
~あらすじ~
第二次世界大戦の最中。アメリカから欧州へ送られた多くの兵士たちは、故郷との手紙のやり取りができず、不安を募らせていた。アメリカでも戦地にいつ息子たちからの連絡がなく、身の安全を知ることができずに苦しむ家族が大勢いた。
恋人が戦場へ行ってしまい、連絡もないままやっと来た手紙で戦死を知ったリナ。彼女は恋人が自分に宛てた手紙を探しつつ、自分も彼の思いに触れようと戦場への出動を志願。黒人女性たちのみで構成された6888大隊に所属し訓練を受けることになる。
そこには聡明で勇気あるアダムス大尉がおり、厳しくもリナたちを見守ってくれていた。
しかし、有色人種の部隊には任せられる仕事はないという差別意識から、まともな任務をもらえなかった彼女たち。
アダムス大尉の抗議によりようやく任務が与えられたと思うと、それは戦場で郵送不能になって放置され続けた1700万通の郵便の処理だった。
感想レビュー/考察
語られるべき物語
歴史上の偉大な功績は語るべき物語である。隠れ続けていた事実を明らかにして多くの人に伝える上で、芸術が役に立つことも多いですが、今作もその一つです。
第二次世界大戦下、戦場に赴いて活躍するのは、敵兵を倒す戦士たちや人びとを避難させる者たちだけではない。
今作はスポットライトが当たらなかった郵便部隊に焦点を当てていて、ほとんどの人が知らなかった貢献を知らしめている。ほとんどそれだけでも、役割のある作品としては十分かと思います。
その部分が丁寧に語られているだけで。
戦争は人と人が戦う。人は心の拠り所があるから強く戦える。郵便物が家族や大切な人々への連絡であり、そして家族や愛しい人からの言葉が兵士を勇気づける。
素晴らしい役者陣の演技
その間を取り持った黒人女性隊員の話は、見ごたえがありますし役者の力強い演技もある。そのうえであえて言いますが、個人的にはやや焦点がぶれてしまっている印象もありました。
主軸になっていく女性たちのそれぞれのキャラクターの立ち具合も良いですし、役者の好演もある。ケリー・ワシントンはもっとも気高くしかし責任も重いアダムス少佐を演じていて圧巻。
査察にやってきた上官に対して、毅然と立ち向かう姿がカッコいい。
「死んでも嫌です」”Over my dead body”は実際にアダムスが口にした言葉ということですが、様々な苦難と陰湿な嫌がらせ、妨害行為を受けながらも、部下を律し守りそして黒人女性の地位を代表する覚悟を持つ素晴らしいシーンです。
功績ではなく耐え抜いた苦難にフォーカスが当たっている
アダムス他、主人公の一人であるレナ・デリコット・ベル・キングはじめWAC(Women’s Army Corps)は2022年にジョー・バイデン大統領が敬意を表し、米国議会黄金勲章を授与されています。
彼女たちを描き出すこと、それによって称えることは素晴らしい。
でも焦点が少しブレていると言っているのは、今作が彼女たちの功績にフォーカスしておらず、経験した苦難の方に目を向けているからです。
彼女たちが成し遂げたのは、兵士たちの戦意高揚、そして祖国で彼らの帰りを待つ人々の安心。それにもしかすると、行軍を考慮して配送するということは特定の部隊に対して的確に物資を届けることにもつながりそうです。
ただ、これが実現するのはほとんどラストシーン。故郷からの手紙に喜ぶ兵士たちは描かれているんですが、功績として挙げられるところが本当に最終場面だけなんです。
ほとんどの映画の道のりは、女性であること、黒人であることを理由に不平等で非人道的な扱いを受けること。それに耐えて前に進んでいく姿が描かれています。
当時の人種差別の根強さとか、男女の不平等さは過酷に描かれていますし、そこで折れずに立ち向かい任務を全うする彼女たちはカッコいいですが、それでは耐える美徳になってしまう気がします。
なので、どこかメロドラマ的に映ってしまう面もありました。総評としては、もっと功績の部分に目を向けて、彼女たちのおかげでどんなことが起き、達成され、今に影響しているのか。そちらのフォーカスをしてほしかったなと思う作品でした。
王道な構成にはなっていますので、シンプルストレートに楽しむことはできます。ネトフリ加入の方は一度鑑賞して観ると良いでしょう。
今回は短めの感想ですが、ここまで。ではまた。
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