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「モンタナの目撃者」”Those Who Wish Me Dead”(2021)

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「モンタナの目撃者」(2021)

  • 監督:テイラー・シェリダン
  • 脚本:マイケル・コリータ、チャールズ・リーヴィット、テイラー・シェリダン
  • 原作:マイケル・コリータ『Those Who Wish Me Dead』
  • 製作:アーロン・L・ギルバート、スティーヴン・ザイリアン、ギャレッド・バッシュ、テイラー・シェリダン、ケヴィン・チューレン
  • 音楽:ブライアン・タイラー
  • 撮影:ベン・リチャードソン
  • 編集:チャド・ガルスター
  • 出演:アンジェリーナ・ジョリー、フィン・リトル、ニコラス・ホルト、エイダン・ギレン、ジョン・バーンサル、メディナ・センゴア 他

作品概要

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「ボーダーライン」などの脚本を手掛け、「ウインド・リバー」で監督も務めたテイラー・シェリダンが仕掛けるクライムドラマ。

かつて子どもたちを救えなかったことがトラウマになった山火事の消防隊員が、殺し屋に命を狙われ逃げている少年を匿い、決死のサバイバルに挑みます。

主演は監督としても活躍するアンジェリーナ・ジョリー。ちょうどMCUにて「エターナルズ」で参加を果たす予定でもありますね。

アンジーが匿うことになる少年役には”Storm Boy”などで活躍のフィン・リトル。まだ14歳の彼ですが、ここにきて大きくキャリアアップしたことになります。

少年を追う殺し屋の二人組に、「ボヘミアン・ラプソディ」などのエイダン・グレン、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などのニコラス・ホルト。

さらにタイラー・シェリダン監督作品には「ボーダーライン」、「ウインド・リバー」と出演しているジョン・バーンサルが、主人公の元恋人役にて出演しています。

海外でタイトルを聞き、またテイラー・シェリダンというホットな人物の監督作ということで楽しみにはしていた作品。

やはり彼の描く西部劇的な容赦のない弱肉強食世界というのは、それ自体がスタイルとして確立されてきていますね。

観に行くのが少し遅くなってしまいましたが、無事に見てくることができました。

公開から2週ほどたっていたためか、そこまで混んでなかったですね。

~あらすじ~

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山林火災にて書道としてパラシュート降下するスモークジャンパーであるハンナ。

彼女は風を読み誤ったことで仲間の隊員を死なせてしまい、また炎の中取り残された助けを求めていた少年たちを見殺しにしてしまった。その罪悪感がハンナを苛み、彼女は自傷行為や危険行為を繰り返していた。

その状況をみた元恋人のイーサンは、彼女を現場ではなく山林観測塔の監視員として任命し、しばし休ませようとする。

一方、とある企業の不正事実をリークした男オーウェン・キャサリーは、同僚の死から自分も命を狙われていると察し、息子のコナーを連れて義理の兄弟であったイーサンのもとへと急いでいた。

しかし、二人組の殺し屋に待ち伏せされ、オーウェンは証拠を息子に託して死んでしまう。

コナーは必死に山の中を逃げ、散策中のハンナと遭遇した。

事情を知ったハンナは、コナーを無事に町まで送り届けようとするが、そこには殺し屋の追手と、彼らが陽動のために放った火から生じた山火事が迫っているのだった。

感想/レビュー

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テイラー・シェリダンが描く残酷で厳しい世界

相変わらずのテイラー・シェリダンの世界。そこでは言葉も理性も特に意味をなさず、ただ生存本能がこの容赦なき世界を制するか決めていく。

現代でありながら西部劇。これは殺し屋から子どもを守ろうとする正義の人の物語。

往年の西部劇のように、サバイバル術を知る主人公や彼女の仲間(これまたなんともセクシーでいい味のあるジョン・バーンサル)が登場し、悪にただ屈することなく機転を利かせて反撃する。

やたらと状況を説明するような形でもなく、言ってしまうとあっさりと味気ないテイストで序盤の展開を見せます。

あまり陰謀の背景とか真の黒幕とかは主軸にせず、ただこの殺されるか殺すかの生存をかけた一夜に対して非常にフォーカスを絞っています。

各人物には背景がありますが、しかし贅肉になりそうなものはそぎ落としてシンプルにシチュエーションをスリリングに展開していく脚本。

マッチョでありパキッと割り切った乾いた世界において、やはり目立つのは悪役側でした。今作の二人組の殺し屋の描写は素晴らしかったと思います。

エイダン・ギレンとニコラス・ホルト。そこまで悪役面ではないこの二人。

しかし仕事をしてきたのであろうというのは、彼らの演出に感じ取れます。

無駄に話さないこと、一方を一方が必ず補うこと。動きには無駄がなく、そして殺しにまったく躊躇がない。

プロフェッショナルとしての描かれ方がなんかリルなんですよね。映画的にかっこつけたプロってことじゃなくて、普通の人間として社会に溶け込めそうな部分を持ちつつも、やはり良心を感じさせない。

この点は本当に良かったところでした。

ただし、殺し屋の冷徹な描き方とか、必死のサバイバルという点で、コーエン兄弟の「ノーカントリー」のような要素は見えてもそこにまでは至っていないというのが正直なところでしょうか。

その点について、つまりドラマ性に関して薄かったのは否めません。

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「ボーダーライン」におけるアレハンドロの抱える闇やメキシコ麻薬カルテルと戦争ほどのどす黒さはなく、また「ウインド・リバー」のミステリー要素とその裏のインディアンに対する残酷すぎる現代アメリカの仕打ちに打ちひしがれることもない。

社会性を巧く西部劇的なサバイバルに融合させてきた過去作に比べると、むしろエンタメとしてのスリラー要素に純化した気がします。

初期設定以外の繋がりとドラマが薄い逃走側

必要だったのは殺し屋の素晴らしい描写以上に、逃げる側、サバイバルしていく側のつながりとドラマではなかったでしょうか。

反撃する保安官や妻は確かに戦うすべを心得ていてカッコいいのですが、肝心の部分であるハンナとコナーのドラマは薄く感じます。

もちろんハンナにとってはコナーを救うことは、過去に救えなかった少年たちを想う罪滅ぼしであり、そして自分にとっての救いであると思います。

ただし、救われるコナーのほうは、フィン・リトルはすごくいい演技をしていますが、信じて従う相手がハンナである必要性はなかったかと思います。

コナーは正しいことを命がけでした父の死を見ています。であるならば、正しいことを選択する英知を見るということが必要だったでしょう。

またハンナが再度立ち上がるのもわかりますが、では過去と今回における違いも示すべきだったと思います。ロジックがないわけです。

過去に逃げていたとも思えないので、今回は逃げずに立ち向かったとかではないでしょうし。

山火事の扱いは妙技

山火事についても陽動のためといって実際に捜索隊がつられているのは会話でしか出ません。

一応、やたらと広範囲になってスケールばかりが大きくなりがちな山火事という要素に対して、逃走劇を主軸にしたからこそフォーカスがぶれていない点はうまいブレンドではありますね。

地獄の業火と地獄からの使いのような殺し屋。

このどちらの要素もあるクライマックスは、死がそこら中にありスクリーンを埋め尽くす極限世界があり楽しめました。

総合するとマッチョなサバイバルエンタメに落ち着いた印象です。

社会性や心の奥底に残るような重厚さはなかったかな。テイラー・シェリダンの過去の脚本や監督作と比べれば軽めに思える方ですが、しかしやはり彼が確立しているこの過酷な世界というのはやはり目が離せないものですね。

今後も作品自体には期待していきたいと思います。

というわけで今回は短いのですがこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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