作品解説

2006年に世界的ヒットを記録した「プラダを着た悪魔」の続編。アメリカの作家 ローレン・ワイズバーガー による同名ベストセラー小説を原作に、20年ぶりの新作として制作されました。
前作で“鬼編集長”ミランダ・プリーストリーを演じた メリル・ストリープをはじめ、アンディ役のアン・ハサウェイ、エミリー役のエミリー・ブラント、ナイジェル役のスタンリー・トゥッチ ら主要キャストが再集結しています。
さらにケネス・ブラナー、シモーヌ・アシュリー、ジャスティン・セロー、ルーシー・リュー ら豪華キャストが新たに参加し、豪華な同窓会にさらに華を持たせています。
監督は前作に続きデビッド・フランケル、脚本はアライン・ブロッシュ・マッケンナが担当。
スタッフ
- 監督:デビッド・フランケル
- 製作:ウェンディ・フィネルマン
- 製作総指揮:カレン・ローゼンフェルト/マイケル・ベダーマン/アライン・ブロッシュ・マッケンナ
- 原作:ローレン・ワイズバーガー
- 脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
- 撮影:フロリアン・バルハウス
- 美術:ジェス・ゴンコール
- 衣装:モリー・ロジャース
- 編集:アンドリュー・マーカス
- 音楽:セオドア・シャピロ
キャスト
- ミランダ・プリーストリー:メリル・ストリープ
- アンドレア(アンディ)・サックス:アン・ハサウェイ
- エミリー・チャールストン:エミリー・ブラント
- ナイジェル・キプリング:スタンリー・トゥッチ
私自身は前作に思い入れが少ないですが、珍しくTVでも前作の放映があったり、主エンジンが日本に来てくれてイベントをしたりと、「プラダを着た悪魔」は一部根強いファンを獲得していますね。
GW公開もあったのですが、やはり人気作。朝早い回で鑑賞してきたのですがかなり混雑していました。女性客が8割という感じで、年齢層は幅広い感じでした。
~あらすじ~

ニューヨークの一流ファッション誌「ランウェイ」で、絶対的な存在として業界に君臨する編集長ミランダ。かつて彼女のアシスタントとして働き、過酷な日々を乗り越えたアンドレアは、現在は報道記者として新たなキャリアを築いていた。
しかしある日、「ランウェイ」と右腕ナイジェルが大きな危機に直面していることを知ったアンドレアは、特集エディターとして再び編集部へ戻ることを決意する。
さらに、アシスタント時代の同僚エミリーとも再会。いまやラグジュアリーブランドの幹部となった彼女は、「ランウェイ」の未来を左右する重要人物となっていた。
華やかなファッション業界を舞台に、それぞれの夢や野心、過去の因縁が交錯していくなか、彼女たちの関係は思いもよらぬ方向へと動き出していく。
感想レビュー/考察

前作が描いていた“成長”と女性の連帯
もともとの原作は未読、そして前作にあたる「プラダを着た悪魔」はテレビ干渉経験がある程度の自分としては、続編にそこまでの熱はないという。
その前提で観に行ってきての感想としては、必要であったのかが微妙に分かりずらいというものになりました。
まず前作を何となく振り返ってみます。いわゆる仕事映画に分類される前作ですが、特別だったのはそのメッセージ性の新しさではなかった中と思います。
意地悪上司と若い新人。それは成長が根底に置かれていくのは当然。でも「プラダを着た悪魔」は、敵としての上司を倒すこととか、都合よく恋人が救いになるとか、そういった展開ではありませんでした。
むしろプロとしての根性を叩きなおされつつも、成長しながら、同時に自分自身がどうあるべきかを取り戻す過程。
アンディは一度はまさに”プラダを着た悪魔”になりそうになる。でも自分にとって何が大事なのか、そしてミランダの覚悟や責任も理解して自分なりの道を進めるようになる。
ミランダとアンディが交わす笑みには互いへの経緯があり、勝ち負けではなく女性の連帯が描かれていたと思います。
そのうえで今回の続編を見ていて、時代の変化やさらなる試練こそ描かれているのですが、前作のような落としどころが見えなかった気がします。

デジタル時代と“表面的”に並ぶ現代的テーマ
今作では20年の時を経て、環境変化も明確に描かれます。
ハラスメントに関しての監視の厳しさから、ミランダは以前よりも牙を抜かれてしまう。それがコメディ調になっていたりで面白いのではあるのですが。
そしてファッション雑誌業界、嫌全ての媒体に関してですが、完全にデジタル化して行っているということ。出版物をフィジカルに読んでいる層がいないことは確かに現実です。
そこから、ネットに行くほどにいかにバズを起こせるかが主題になる危険性もありました。そもそもアンディがランウェイに戻るのは、炎上中の雑誌社のレピュテーション回復、広報的な役割です。
実際には何も悪いことはしていないながらも、下請けや関連会社での不正があればネットで袋叩きにされる。その火消しというのもなかなか生々しいですね。
さらに、アンディはその後に社会的には価値があり表彰されるような記事を書き上げていきますが、やはりネットで話題にならない。
炎上すれすれでも、楽しくて話題になる記事が必要で、それこそに価値があるというのはジャーナリズムの現実として非常に苦いです。
他にもボディ・ポジティブが出てきたりと、昨今の流れをいろいろと組み込んではいます。
しかし、組み込んだだけです。それは非常に表層的でしかなく、”メンション”するにとどまっているのは非常に問題な気がします。

「文化を守る」物語なのに、解決方法が弱い
物語の中での課題は”文化芸術に関心もない金持ちが、利益のために骨を抜き崩壊させていく”ことだと思います。
それが根幹にはあるので観ていけますが、だとしても業界課題の扱いはもっと深く組み合わせてほしかった。そんな風に感じてしまうのは、結局は課題解決の仕方にあるのかな。
例えば、ファッションという人の生活にも精神にも、あらゆるものにかかわる文化の変化。
自分が自分らしくあることはボディ・ポジティブの話に繋がりますし、そういった意味での正しさで対抗して、資本主義を討ち果たしてランウェイを守るならいいでしょう。
しかし、今作での解決が徹頭徹尾”電話すること”なのってどうなんでしょうかね。。。
最初のアンディの謝辞の記事も何がどう優秀だったのか分からず、各登場人物に関して仕事での優秀さがあまり見えてこない。
結局有力者やコネに電話して、その人がもっとお金を使って解決するという帰結にもあまり気持ちいいものは感じませんでした。

それでも光るミランダの“プロフェッショナル”
優秀な点ではミランダは健在だった気がします。
ミランダの責任や覚悟を持つ点は変わらず良いです。加えて、ルーシー・リュウが演じていたサシャのインタビューの場でこう言います。
「結婚があなたを定義しない。あなたを知りたい。」
鋭く本質的で、そして人間的な言葉。前作であった”アンディが着ている服がどのようにここにたどり着き、今アンディが身にまとっているか。”のスピーチを思い起こすシーンです。
今回こういったビジネスプロとしての力が見えるシーンがとにかく少なかったのが残念です。最終幕にピンチも、また電話して解決なのも。。。
豪華な“同窓会映画”としての魅力
本質的には仕事映画であったり女性のキャリア他人生の全肯定の要素があると思います。
ただそういった面の素材を入れ込んだに過ぎなくて、ファッションがただの装いだと思われてしまうように、表面のレイヤーだけが美しい作品になってしまったと感じます。
メリル・ストリープのカリスマ性も、スタンリー・トゥッチの信頼性やチャームも。
変わらないアン・ハサウェイにエミリー・ブラント、新キャストもみんなオシャレで輝いていますが、いろいろなところに気を遣い綺麗にまとめたせいで、芯を食わない印象です。
今回はあまりハマらなかったのですが、ルックの良さは間違いないですし豪華な同窓会としてのきらびやかさもあるので興味ある方は劇場へどうぞ。
感想はここまで。ではまた。


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