作品解説

人気ゲームシリーズ「バイオハザード」を原作として製作された実写映画。過去にあった大ヒットシリーズやリブートとは異なり、単独で新たに描かれた、アンブレラ者による生物実験のウイルス拡散ホラー。
臓器などの重要な衣料品をデリバリーする普通の男が、ラクーンシティへの配達を引き受けたことで地獄に巻き込まれていく様を描きます。
監督は「バーバリアン」や「WEAPONS ウェポンズ」で注目を集めるザック・クレッガー。
主演は監督の前作「WEAPONS ウェポンズ」にも出演したオースティン・エイブラムス。
また、ドラマ「セヴェランス」のザック・チェリー、「リチャード・ジュエル」や「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」のポール・ウォルター・ハウザーも出演しています。
脚本を共同で担当するシェイ・ハッテンは、「ジョン・ウィック」シリーズなどを担当した方です。
キャスト
- オースティン・エイブラムス:ブライアン役
- ザック・チェリー
- カーリー・レイス
- ポール・ウォルター・ハウザー
スタッフ
- 監督:ザック・クレッガー
- 脚本:ザック・クレッガー、シェイ・ハッテン
- 撮影:ダリウス・ウォルスキー
- 製作:ロバート・クルツァー、ザック・クレッガー、ロイ・リー、ミリ・ユーン、ビクター・ハディダ、アサド・キジルバシュ、カーター・スワン
- 製作総指揮:オリバー・ベルベン、リチャード・ライト、ロバート・ベルナッキ
北米での高評価や比較的小さな予算ながらの大ヒットからかなり期待されていた本作。バイオハザード生まれの血である日本でも公開されました。
公開初週に観に行ったのですが、なかなか時間も会わない中なんとかチケットをとってみると、ほとんど満員の状態。
結構高校生とか若い層が多くて意外でしたが、バイオシリーズの人気を感じる鑑賞体験でもありました。
~あらすじ~

医療品の配達人として働くブライアンは、ある病院で「取扱注意」と記された医療バッグを預かり、ラクーンシティ総合病院へ届けることに。
いつも通り車を走らせていた彼だったが、突如、血まみれの女性が路上に飛び出してきたことで状況は一変する。
予想もしなかった異常事態に次々と巻き込まれたブライアンは、やがて生き残りを懸けた過酷なサバイバルに身を投じることになる。
感想レビュー/考察

ミラ・ジョヴォヴィッチ版からの再出発。新たな『バイオハザード』は成功したのか?
実写版の「バイオハザード」シリーズは、興行的には非常に成功した部類だと思っています。
少なくともミラ・ジョヴォヴィッチ主演のポール・W・S・アンダーソン監督によるシリーズは、バイオハザードを知らしめた要因でしょうし、1つのジャミングとして確立されていました。
ゲームには登場しないオリジナルキャラを主役にしつつも、スタイリッシュゾンビアクションという切り口が良かったのかなと。
アレがバイオハザードなのかと言うと、大本のゲーム的には分かりません。
ただ、その後微妙な続編を作って下火になったのと、心機一転作り直した「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」があまりに何にもならない駄作だったことから、しばしバイオハザードはスクリーンから離れていました。
そんな中で期待の監督ザック・クレッガーを抜擢して作られた今回のバイオハザード。
軸をどこに置くか次第ではあるものの、バイオハザードらしい映画ですし、ゲームの映画化としても成功した部類だと感じます。

主人公はレベル1のプレイヤー? カッコよさよりも共感できるヘタレ男
それはバイオハザードを、大ゾンビパニックと強力なクリーチャーに外連味たっぷりのスタイリッシュアクションととらえるとダメです。
じゃあどんな軸で行くのかというと、それはおそらく不器用ながらに恐る恐る障害を乗り越えて、ホラーゲームを攻略していくプレイヤーその者なんだと思います。
ハッキリ言って今作は、ミラが主演してたようなカッコいい感じはありません。
オースティン・エイブラムスが演じる主人公のブライアンは、完全にサバイバルスキルゼロのヘタレです。
OPで配送を任されるとき、報酬が倍だってだけで話に乗ってしまうくらい、あまりよく考えていません。
彼は考えることを放棄している。配達も報酬以外に、現実から離れるという意味での逃げでした。
ブライアンには妊娠している彼女がいるみたいです。
そのまま生むのかどうか迷っている彼女に、彼は精一杯の回答が、「君の身体だから、君が選べばいい。」なのですよね。
これはアメリカにおける女性の権利を叫ぶスローガン”My Body. My choice.”「私の身体。私の選択。」のコピーではあるのですが、逃げてる感も否めず。。。
そんな状態のブライアンが、まごうことなき地獄の現実に立ち向かうことになる。
なので主人公らしからぬ頼りなさですが、それはそのまま脅威にさらされて攻略法が分からない、レベル1のプレイヤーみたいでした。

南京錠ひとつでこんなに怖い! ゲーム的な構成が生むハラハラ感
そして今作が個人的に成功していると感じるのは、構成の明確さです。
常に目的とゴール、その障害と解決策が明確で、とにかく見やすいのです。
それはゾンビの群れがとか、超人的なボスがいるわけではなく。
通路の向こうに行かなければいけないけど、手前の小部屋で何か動いている。
次に進むために鍵のかかったドアを開けなければいけないけど、鍵を探すか銃で撃つか選ばなければいけない。
みたいな、本当にゲーム的な地味だけどハラハラする構成です。
南京錠がかつてこれほどまでに、映画の中で行く手を阻んだことはないでしょう。
単純な構成ではありますが交通整理が行き届いているので迷うことはなく、ライド感覚で楽しめます。
銃の残弾数、鍵、上り下りする道具。小さなアイテムからスリラーを引き出す。
この小さな積み重ねがゲームらしい。アイテムをゲットしないと先に進めない。敵の数と武器の数や残弾数を考えておかないと詰む。
ゲームを映画化するという観点で、すごく忠実で成功していると感じました。

ホラーコメディとしての魅力。カッコ悪い主人公だからこそ応援したくなる
そしてブライアンがくよくよはするけれども前日進んでいったり、終始飄々として軽めのトーンであるのも良いです。
重苦しくなりすぎないし、コメディトーンですらあるのです。
ポール・ウォルター・ハウザーが出てきた時に確信しましたが、ホラーコメディです。
この辺のテオストが合わない人もいるでしょう。かっこよさは無いので。ただ凡人が苦労し頑張っていく姿に共感が出て私個人としては良かったです。
妊娠と身体変容が重なる、ザック・クレッガーらしいボディホラー
共感できるダメ男ブライアンですが、彼なりのドラマとのシンクロは如何ほどか。
彼は先日の通り妊娠中の彼女がいます。ザック・クレッガー監督はかなり妊娠と今回のボディホラーを掛け合わせていると思います。
自分自身のなかで何かが育つ変化する。それが今回のバイオハザードの根幹にある。
ブライアンは序盤に腕を噛まれてしまうので、観客からすれば特効薬がなければ詰みだとわかっています。
彼自身も避けていた、身体の変容に文字通り巻き込まれていくことになるんですね。
終盤には産婦人科病棟の分娩室や乳幼児保育室が出てきて、変異体赤さんも現れたりと、かなり直接的に妊娠と変容を根底のテーマに入れている。
「バーバリアン」ではモンスターに虐げられた女性を重ねていたり、捉えようによっては今作最も、女性の妊娠から逃げた男が否応なく身体変化を強制され、不可逆的に変容してしまう話にも思えました。
この辺は深読みかなと思いますが、いずれにしてもゲームの映画への落とし込みという観点で完成度が高く、ライド感も楽しいホラー映画でした。
バイオハザードがまたやると聞いたときは、微塵も興味が湧きませんでしたが、監督がザック・クレッガーということでやはり話が違いました。
個人的にはかなり今年のなかでも良作のホラーだったと思います。
今回の感想はここまで。ではまた。


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