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「カリートの道」”Carlito’s Way”(1993)

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映画レビュー
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「カリートの道」(1993)

  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 脚本:デヴィッド・コープ
  • 原作:エドウィン・トレス 「それから」
  • 製作:マーティン・ブレグマン、マイケル・スコット・ブレグマン、ウィル・ベアー
  • 製作総指揮:オートウィン・フレイヤームス、ルイス・A・ストローラー
  • 音楽:パトリック・ドイル
  • 主題歌:ジョー・コッカー ”You Are So Beautiful”
  • 撮影:スティーヴン・H・ブラム
  • 編集:クリスティナ・ボーデン、ビル・パンコー
  • プロダクションデザイン:リチャード・シルバート
  • 美術:グレゴリー・ボルトン
  • 衣装:オード・ブロンソン・ハワード
  • 出演:アル・パチーノ、ショーン・ペン、ペネロープ・アン・ミラー、ジョン・レグイザモ、ルイス・ガスマン 他

「スカーフェイス」(1983)のブライアン・デ・パルマ監督とアル・パチーノが再び組んで送る、エドウィン・トレス原作小説の映画化。

原作では主人公カリートの生まれから麻薬王までの物語もあるようですが、今作は彼の後半の人生を描いた方を原作としています。

今作でペネローペ・アン・ミラー、ショーン・ペンがそれぞれゴールデングローブ助演女優と男優賞にノミネートしております。

アル・パチーノは、荒れ狂うギャングの役をやっていましたが、この90年代に入っては、実年齢に合わせたように、老いたギャングの役をやるようになっていますね。

後のマイク・ニューウェル監督の「フェイク」(1997)ではよりしょぼくれてしまっていて、哀愁含めこのころのアルも大好きです。

麻薬王カリート・ブリガンデは親友で弁護士であるデイヴの尽力もあり、わずか5年で刑務所から出所した。

再び伝説が戻ってきたことに、街のギャングやかつての仲間は喜ぶが、カリートはこの5年での街の変化に驚いていた。

かつての仁義や忠誠などは忘れられ、見境の無い殺しと裏切りに満ちたジャングル。完全に失望したカリートは、周囲からの期待とは裏腹に、堅気になり着実に資金を貯めて引退することを決める。

かつての恋人であるゲイルともよりを戻し、バハマでの楽園生活を夢見るカリート。しかしこの暗黒街はその儚い夢には厳しいものであった。

前回のタッグが「スカーフェイス」であり、デ・パルマ監督とアル・パチーノで作り上げた世界は、麻薬と裏切り、暴力とセックスに支配されたものであったこと。

そして主人公が過程はどうであれ破滅的な最期を迎えること。実は本作で描かれる世界も、それとなんら違いはないんですよね。

それでいて、デ・パルマ監督は全く違った印象を観客に残すことに成功しています。

主演のアル・パチーノはかつて狂犬であった人間として、今は堅気になろうともがく男。彼自身の評判のすごさがにじみ出るほど、画面内での彼の変貌ぶりをうかがうことができます。

フラッシュバックなどで過去の暴力性を見せずとも、いかに丸くなったのかしっかりと受け止め納得できますね。

物語は結末から始まり、彼のナレーションによってその変遷を見せていくもの。ですから観ている側としてはおそらくこの男の夢が儚く散っていくのかも?と、ある程度の覚悟はさせています。

ただし見れば見るほどに、カリートのある種真っ直ぐなヤクザスタイルを気に入ってしまい、周りの足手まといや邪魔者が憎くなってきます。

ショーン・ペン。彼のキャリアの中でも抜群にうざいくそ野郎を演じています。マジでうざいw

カリートの思っていたような世界は無くなり、幻滅しているところに希望のように現れるゲイル。

カリートの想い人であり、夢をかなえた人であり、そして何より純粋なものをいまだに持ってくれている人。

荒っぽいことは全然しなくなったカリートが、ドアを壊してまで愛を伝えた女性です。雨の中、ごみ箱の蓋を傘に光を見つめるカリート。印象的な場面、美しい場面の多くは、ゲイルとのシーンですね。

主題歌の”You are so beautiful”の美しさも本当に素晴らしいものです。しかもこの歌は”to me”と付いているのがまたカリートからゲイルへの個人的なものを強めています。

しかし、そのゲイルですら実は夢破れた存在であり、この腐った街に苦しみながら生きていると知るカリート。

ここでカリートに対し、決定的な脱出の理由が与えられています。自分のためであったバハマ行き、楽園への逃避が、愛するものを救うためという大きな目標へと変わりますね。

終盤に向けてのデ・パルマ節のキレも良く、何が何でも仁義を真っ直ぐ通そうとするカリートに対して、カメラがとにかく斜めに傾く。世界が歪んでいるんです。

そしてグランド・セントラル駅での追いかけっこ。

時間と目標を明確にしつつ、駆け引きや映像トリックも楽しめるスリルあるシーンです。デブの使い方がちょっとコミカルでおもしろいw

今作はオープニングに戻る形で終わり、同じくカリートの顔の接写とパラダイスへの看板で終わっていきます。

ただ始まりと違い満ち足りたような、切なさもありつつ喜ばしい感覚を持たせています。それはカリートの夢が潰えてしまう、覚悟はできていたがやはり悲しい気持ち。

そしてオープニングにはなかった別の気持ちも。ゲイルだけでも幸せに、この腐った街から出してあげるという願いをかなえているのです。

ギャング映画にして暴力やドラッグもたくさん、しかし今作がどんな物語かと言えば、愛の物語です。

真っ直ぐな男が、不器用にも大事な女性を想う。

自分はゴミでも、ずぶ濡れになっても、愛する女性だけは楽園に。彼女がキラキラした夕陽の中、自由に踊るその姿を見るカリートはやっと安息を得たように思えました。

エンディングの”You are so beautiful”がしみわたりますね。お勧めの映画です。デ・パルマ監督は見事に同じ世界から全く違う物語を見せています。

レビューはそんな感じで。それでは、また~

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