スポンサーリンク

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ解説|家という“感情的価値”が紡ぐ親子の再生物語

スポンサーリンク
「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督 映画レビュー
スポンサーリンク
スポンサーリンク

作品解説

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

「わたしは最悪。で世界的評価を確立したヨアキム・トリアー監督が、“親子”という逃れがたい関係性をテーマに描いた家族ドラマ。

愛と憎しみが複雑に絡み合う父と娘の再会を軸に、記憶と感情、そして表現者としての葛藤を繊細に映し出します。

スタッフ

  • 監督:ヨアキム・トリアー
  • 脚本:ヨアキム・トリアー/エスキル・フォクト
  • 製作:マリア・エケルホフド/アンドレア・ベレントセン・オットマール
  • 製作総指揮:レナーテ・レインスベ/ステラン・スカルスガルド/エスキル・フォクト/ヨアキム・トリアー
  • 撮影:キャスパー・トゥクセン・アンドレセン
  • 美術:ヨルゲン・スタンゲビー・ラーセン
  • 衣装:エレン・ダーリ・イステヘーデ
  • 編集:オリビエ・ブッゲ・クエット
  • 音楽:ハニャ・ラニ

キャスト

  • ノーラ(姉):レナーテ・レインスヴェ
  • グスタヴ(父):ステラン・スカルスガルド
  • アグネス(妹):インガ・イブスドッテル・リッレオース
  • レイチェル:エル・ファニング

賞レースでの評価とステラン・スカルスガルドの快挙

2025年・第78回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。さらに第98回アカデミー賞では作品賞を含む8部門・計9ノミネートしました。

助演男優賞にノミネートされたステラン・スカルスガルドは、キャリア初のオスカーノミネートにして、アカデミー賞史上初となる外国語映画での助演男優賞ノミネートという快挙をなしとげています。

ヨアキム・トリアー監督は「テルマ」の時から好きだったのですが、オスロ3部作という形でノルウェーを舞台にした作品をここまで続けてきています。

今作は何にしても評判の高さとか各賞レースでの受賞歴を見ても、かなり楽しみにしていた作品です。

公開週末に早速観に行ってきましたが、もともと小さい映画館であったこともありますがものすごい混んでいました。

~あらすじ~

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

オスロで俳優として活躍するノーラと、家庭を選び、夫と息子とともに穏やかな日々を送る妹アグネス。

対照的な人生を歩む姉妹の前に、ある日突然、長年消息を絶っていた父グスタヴが現れる。かつて家族を捨てた彼は映画監督として復帰を目指し、15年ぶりとなる自伝的作品の主演にノーラを指名する。

しかし、父への怒りと失望を抱え続けてきたノーラは、その申し出をきっぱりと拒絶。代わって、アメリカの若手人気俳優レイチェルが主演に決まる。

やがて撮影場所が、幼い頃に家族で暮らしていた思い出の実家だと知ったとき、ノーラの胸に封じ込めていた感情が再び揺さぶられる。過去と向き合うことを避けてきた彼女は、父の映画とどう向き合うのか。

感想レビュー/考察

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

期待を超えた、静かな傑作

圧倒的に期待度が高く、不安さえ覚えてしまう作品でしたが、間違いなく傑作だと思います。

評判に違わぬ秀逸さ、非常にパーソナルであり、刺さる人には見てられないくらいに刺さってくるドラマ。しかしその描き方は変にドラマチックではなくて、静謐さを保ってもいる。

非常に難しくて、一見すれば別に大きな問題がないように見える家族間の確執。

だからこそ声を大にして”みなさん、私の家族はこんなにも壊れていて苦難に満ちています!”って映画ではないんですね。

実際にこういった微妙な関係性を持っていたり、感じたりしたことがない人には正直何も共感できないのかもしれないとすら思いました。

社会的成功と、消えないしこり

娘のうち姉の方は自立して、結構有名な女優として活躍している。そして妹は歴史家になり家庭を持っていて幸せそう。

それに疎遠だった父もキャリア的にはその理由も分かるほどに世界的に有名な映画監督である。

彼らの社会ステータスを見れば、大きな困難を持っているとも思えない。

それでも確実に、登場人物たちはそれぞれが人生に影響するしこりを抱え続けているのです。

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

ノーラという傷ついた娘

映画が始まって、ノーラが主演の舞台に立つところがあります。

プレッシャーに弱くて舞台を投げ出そうとしてしまいそうになり、舞台運営の既婚者と不倫している姉ノーラの姿には、少しの不安と彼女の脆さを見て取れる。

そんなOPの後に母が亡くなり、その葬儀で父と再会した際に、妹アグネスは社交的にその場を対応するものの、ノーラは完全にパニックというか処理しきれていない。

ノーラは甥っ子に秘密の盗み聞きの仕掛けを教える。そこから聞こえてきた父の声に驚き、甥っ子の相手ができないほどに困惑する。

非常に小さなことですが、その人にとってはとても重大なこと。ぎこちない空気と真っすぐ言えない気持ちやもどかしさに溢れるシーンが痛々しい。

ノーラは父グスタヴが自分たちを見捨てていったと思っていますし、愛を渇望していました。

その愛憎というのが、父と同じく芸能の道を選んでいるところに現れている気がします。

もっと父を感じないような関係のない仕事を選ぶこともできたと思いますが、それでも同じような業界にいることは、どこかで父と関わりたいという現れにも感じました。

そしてこの仕事を通して、少しでも過去の父の状況を理解しようとしているとも取れます。

不器用すぎる父グスタヴ

そんな娘に対して、不器用すぎてあきれるようなグスタヴ。

ステラン・スカルスガルドが見事で本当に脱帽ですが、仕事やざまざまな点ではカリスマを感じさせ、人を引き付けていく魅力がある。

しかし、いざ家族のことになると途端にコミュニケーション能力ゼロのダメダメ人間になります。

もっと言い方があるだろう、、、そこでそれをいうとノーラを責めていると聞こえちゃう。

シゴデキですが対人関係があまりに下手で、彼は自分の感情を芸術にすること、芸術に込めなければコミュニケーションできないということがわかります。

レナーテ・レインズヴェ、ステラン・スカルスガルド。両者とも卓越しています。

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

妹アグネスという第三の視点

両者に負けないのが妹アグネスを演じているインガ・イブスドッテル・リッレオース。

一見すれば軋轢のある姉と父に挟まれて貧乏くじな彼女ですが、一番問題を避けているとも思えました。

関係にない業界に仕事を持ち、自分自身の家族を作って。社交的に姉や父と関わるも本質の問題を自分から口にしない。

どこか諦めているし疲れているのかなとすら見えます。

孫を人質的に使われるのも嫌だけど、でも彼を切っ掛けに接点が増えているのも事実で。

アグネスは彼女なりの方法で父を理解しようとしていきます。父の過去、父の母に何があったのかを掘り下げていく。

アグネスの職業が、父やノーラのように芸能界ではないところであれば何でもいいのではなく、ちゃんとその職業だからこそ触れることができた父の痛みを描くのは良いですね。

芸術や作品に人生を込めたり、それらを通さないと感情表現ができない父。似たような姉。そして全く別の道から父を見つめる妹。

レイチェルという外部の存在

彼らの個人的なドラマの中に唯一投げ込まれるのが第三者のレイチェル。エル・ファニングがアメリカで人気の若手女優という、彼女自身そのままのような役を演じています。

このレイチェルの存在は3人の親子が改めて自分たちの過去を客観的に見つめていくプロセスのきっかけになっていると思います。

彼女は映画の準備のためにグスタヴを深く知り、彼の母を知ろうともしますが、同時に姉妹のことも知っていこうとする。

演技の中の演技を炸裂させてシーンをかっさらっていくエル・ファニング。今作での演技が各賞で非常に高く評価されているのも納得です。

役者とは何とかその人になり切って見せる仕事です。そして監督はグスタヴのように自分の人生や他人の物語を再現して落とし込む仕事なのかも。

ただ、レイチェルは親子のことを知れば知るほどに、自分自身が演じていいようなものではないと悟ってしまう。自分には無理だと。

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

家というもう一人の登場人物

レイチェルがグスタヴに、自分はもうこの役を続けられない。失望させたくないと言って別れる。それはグスタヴが育った、姉妹が育ったあの家です。

今作はこの家を使って人物が人生と向き合い、特に映画と現実を曖昧にして錯覚するような巧い演出があります。

レイチェルが別れを告げるのは、かつての母との対話と別れにも重なります。どうしてもグスタヴの望む母に離れず、旅立ってしまった母。

そのつらい過去に向き合おうとしているのが、グスタヴが作ろうとしている新作映画そのものです。そしてそのことはかつて反ファシストにどんな拷問がされたのか調べたアグネスが触れていく。

過去の回想で現れる家、今現在の家、そして撮影セットとして使われている家。

非常に静かでしっとりとした美しさと空気を持ちながら、また重要な登場人物とも言えますね。

寒色が多い時もあれば少し暖色が使われていることもありますが、全体にどこか淡くそして北欧っぽいというか、すこしひんやりした空気や風を感じます。

この家で繰り広げられてきたすべてのこと。

センチメンタル・バリュー(感情的な価値)とは

グスタヴにとって家を離れてしまいたかった、母との悲惨な別れ。

言い争う両親の声を聞き続けた姉妹。全部を記憶した家こそがタイトルの”センチメンタル・バリュー”の差すところ。

”センチメンタル・バリュー”は”感情的価値”といったふうに訳せるものです。愛着や思い出があるものということ。

この家のことを指していると思いますが、あえてここを舞台として家族の歴史を振り返る映画を作り、そこに家族が出演協力する。

「センチメンタル・バリュー」ネタバレ映画レビュー-ヨアキムトリアー監督

映画と現実が重なる瞬間

最終的にはセットとなり、グスタヴは自分のトラウマを自分で再現する。再現できるということは以前よりその事実には向き合えるようになっている。もう逃げ出さない。

そしてノーラもそんな父のことを知り、彼女にとってもトラウマ(父の不在)のある家のセットの中で演じていくことで現実に向き合う。

大きく大団円ではなくて、でも確実に歩み寄って前に進めた家族の姿は、その繊細さが光る美しいラストを持っていました。

この先もヨアキム・トリアー監督はかなり注目の人ですね。ここでハリウッド俳優他広がりを経て、アメリカ映画のオファーもあるのでしょうか。うまく良さを持ったままでいてほしいです。

今回はだらだらと長くなりましたが以上。ではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました