作品解説

ブレンダン・フレイザーが主演を務め、全編日本で撮影されたヒューマンドラマ。
画ザ・ホエールで第95回アカデミー賞主演男優賞を受賞したフレイザーが、東京で暮らす落ちぶれた俳優を演じます。
監督は、長編デビュー作「37セカンズ」やドラマ「BEEF ビーフ」で注目された日本人監督HIKARI。
東京を舞台に、レンタル・ファミリーというユニークな仕事を通して主人公が自分自身と向き合い、再生していく姿を描いていく作品です。
共演には、レンタル・ファミリー会社を営む多田役に平岳大、同社の俳優として働く愛子役に山本真理、老優・喜久雄役に柄本明。
監督/スタッフ他
- 監督:HIKARI
- 脚本:HIKARI、スティーブン・ブレイハット
- 製作:エディ・ベイスマン、ジュリア・レベデフ、HIKARI、山口晋
- 製作総指揮:ジェニファー・セムラー、小泉朋、スティーブン・ブレイハット、レオニード・レベデフ、ブレンダン・フレイザー、オーレン・ムーバーマン
- 撮影:石坂拓郎
- 美術:磯田典宏、高山雅子
- 衣装:望月恵
- ヘアメイク:百瀬広美
- 編集:アラン・ボームガーテン、トーマス・A・クルーガー
- 音楽:ヨンシー、アレックス・ソマーズ
もともと東京国際映画祭での上映があって知ってはいた作品。ブレンダン・フレイザーも最近はハムナプトラ新作の話なんかもありますが、「ザ・ホエール」でのカムバック以降次はどんな作品かと注目されていました。
それが日本を舞台にした作品で、けっこう小さな映画ということで意外。映画祭の際には日本公開の話もあってスルーしていましたが、無事一般公開となったので早速観に行きました。
ファーストデーということもあって、また地元の小さめの映画館ということもあり満員に違い状態でした。
~あらすじ~

かつて歯磨き粉のCMで一躍人気を集めたものの、いまでは世間から忘れられかけているアメリカ人俳優フィリップ。俳優として細々と活動を続けながら東京で暮らし、いつしかこの街にもすっかりなじんでいた。
そんなある日、レンタル・ファミリー会社を営む多田から仕事の依頼を受ける。レンタル・ファミリーとは、依頼人の要望に応じて「家族」の役割を演じ、その対価として報酬を得るという風変わりな仕事だった。
はじめは他人の人生に踏み込むことに戸惑いを覚えるフィリップ。しかし、仕事を通してさまざまな人々と関わっていくうちに、彼の心にも少しずつ変化が芽生えていく。
感想レビュー/考察

傷ついた俳優ブレンダン・フレイザーという存在
皆さん、性格俳優って聞いたことあるでしょうか。よく助演の立場で、いつもこういう感じの個性的な役演じてる俳優とか、癖のある悪役がいつも巧い人とか。
それと似た感じで、基本的には多くの俳優にイメージがあると思います。
そこで、ブレンダン・フレイザーという俳優がどんな印象なのか改めて考えてみました。もともと私としては「ハムナプトラ」シリーズの主役、そして「センター・オブ・ジ・アース」などの印象。
シリアスではない活劇の中で、少し野性味もあるような肉体美とその長身、ハンサムな顔でヒーローをやっているイメージです。
しかし、ブレンダンはその裏で激しいアクションに取り組んでいたことから何度も怪我に見舞われ、しかも、ハリウッド外国人映画記者協会の会長からはセクハラ被害を受けているなど、とても傷ついた人だったのです。
そのボロボロの状況から、表舞台から遠のいていた彼を、ダーレン・アロノフスキー監督が救い出す。それが、ブレンダンが超増量して挑んだ「ザ・ホエール」です。
私生活のすさんでしまったミッキー・ロークを「レスラー」で復活させたように、アロノフスキー監督はブレンダンを表舞台で再び輝かせました。
ヒーローではなく、優しさの塊の男
そんな彼が次にどこへ行くのかと思えば、なんとも小さな、日本を舞台にしたドラマ映画での主演。
そしてここではっきりと見えたのは、ゴールデンボーイのようなヒーローとしてのブレンダン・フレイザーではなく、傷ついたからこそ人に寄り添える繊細さを持った、優しさの塊という男の姿でした。
今作を観ていて、主人公フィリップはブレンダン・フレイザー意外に演じられないと思いました。彼こそがハマっているのです。

大きな体の“くまさん”のような愛らしさ
ブレンダンは身長190cmを超える大柄な俳優です。
しかし、そこには威圧感はなく、むしろ大きなくまさんがモタモタしながら、日本の町で四苦八苦するかわいらしさ、どことない不憫さに溢れていたのです。
これもまた偏見ではあると思いますが、”アメリカの白人”というと陽気で活動的なイメージが出てきます。
もちろん、その点をフィリップは仕事上期待されることもありますが、彼自身はなんというか”日本人らしい”控えめさとか恥じらい、奥ゆかしさを持っているのです。
その意味で、ブレンダンは結構日本語を勉強し、そして同時に撮影時に共演者たちが日本語のトーンや言い方のアドバイスもしたようです。
だからこそ、日本に7年間住んで、ここを故郷だと考えている一人の男としての完成度があるのかな。日本ロケということも相まって、いわゆるなんちゃって日本感というのはあまりないです。
もちろん、それはちょっと?とおもうような描写はありますけど、あくまで映画というフィクショナルな世界で、そして物語推進のための機能としては問題ないかなと思いました。
嘘の仕事が生む、本当の人間関係
フィリップははじめ、感情を売り物にして、誰かにとっての誰かになっていくことに抵抗します。それは嘘をつくことだし、人の人生を傷つけてしまうことなんだと。
確かにその危機を迎えることもあります。この作品は、いつかフィリップの正体がバレてしまうのかもしれない。そんなサスペンス要素を持ちます。
親しくなればなるほどに、嘘をついた人間関係に心を痛めていくというジレンマもドラマを生みます。

人と触れ合うことが癒しとなる
しかし、人が安らぎや安心を得ていくには、癒されていくには、やはり人と触れ合うということが必要なのでしょう。
触れ合うことで前に進める。ミアは自身がなかったところで進学へ。母以外にも話を聞いてくれる存在を得て、彼女は前を向いて行けた。
キクオさんもそうですね。やりのこしたこと、時間がないこと。その中でフィリップの助けを得て過去をもう一度最後に抱きしめる。
大事なのは噓の関係にホントの心で向き合うことなんでしょう。
フィリップはミアの父ではないけれど、ただの父親役でもなかった。ミアの良いところをちゃんと見ていて、彼女を実の娘のように大事にした。仕事の範囲を超えて真摯に向き合う優しさが、面接に出ています。
本当に自慢の娘を紹介したくて仕方ない父親のように、ミアの絵の写真を見せて回って。そしてキクオさんに言われたアドバイスのように、できるだけ小さな子のそばにいてほしいと学校側にお願いする。
フィリップの心は本物です。
本当の友として葬儀に参列する
そしてキクオさん。自分自身の親との関係も重ねたフィリップは、彼を助けることで自分も救われている。
キクオさんの死をもって、フィリップは葬儀に参列します。葬儀といえば、OPではじめてフィリップがレンタル・ファミリーの仕事をしたのも葬儀への参列でした。
その時は完全に嘘で、何が何だか分からないフィリップでしたが、今度は違う。役ではなくて、本当に友として、キクオさんを送り出すために葬儀に参加したのです。

優しさに包まれる、静かな良作
アイコさんの仕事、それは嘘だけど、叩かれた痛みは本物。フィリップはその悪い本物は見過ごせなかった。彼らしい優しさと、引っ込み思案な態度ではあるけど、アイコさんに自分を大事にしてほしいと伝える。
嘘の仕事の中でまた本当の心で会話しているのが本当に素敵です。
ミアにも嘘はバレてしまうけど、二人の間の絆は本物でしたね。ここでもまた本当の友達として歩き出す。
主演ブレンダン・フレイザーのハマりっぷりがとにかく良くて、ほっこりと笑えて暖かな作品。これは良いものを見たなと思います。
こちらおススメの作品なので、ぜひ劇場へ。
今回の感想はここまで。ではまた。


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