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「サバービコン 仮面を被った街」”Suburbicon”(2017)

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映画レビュー
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「サバービコン 仮面を被った街」(2017)

  • 監督:ジョージ・クルーニー
  • 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ
  • 製作:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ、テディ・シュワルツマン
  • 製作総指揮:ジョエル・シルバー、ハル・サドフ、イーサン・アーウィン、バーバラ・A・ホール、ダニエル・ステインマン
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • 撮影:ロバート・エルスウィット
  • 編集:スティーヴン・ミリオン
  • 出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、ノア・ジュープ、オスカー・アイザック、ゲイリー・バサラバ 他

ジョージ・クルーニーが監督としてカメラの後ろに回った本作。脚本は「ノーカントリー」(2007)などのコーエン兄弟のよるもの。

出演は「オデッセイ」(2015)や「ダウンサイズ」(2017)のマット・デイモン、「アリスのままで」(2014)のジュリアン・ムーア。

主人公のニッキーを演じるのは、今年アメリカで公開され話題となった”A Quiet Place”にも出演するノア・ジュープ。

また、「スターウォーズ:最後のジェダイ」(2017)などポー・ダメロンとして人気のオスカー・アイザックもでています。

GW公開作品として休みに行ったこともあり、日比谷はほぼ満員状態でしたね。感想が遅れてしまったのは、まあ同じ日に観た「アイ・トーニャ」が素晴らしすぎたからですw

アメリカの平和な街サバービコン。

一軒家に家族で住み、働き者の父とそれを支える良き母、そして元気に育つ子供のいる、絵に描いたような理想の街に、ある日アフリカ系アメリカ人一家が引っ越してくる。

するとたちまち人々は悪い噂をしはじめ、一家を監視するようになった。

時を同じくして、ニッキーの家でも大事件が起きる。

家に入った強盗により、母が殺害されてしまうのだ。後日容疑者が逮捕されたという事で、ニッキーは父と叔母に付き添って警察署へ行くのだが、面通しの場に犯人がいるにも関わらず、なぜか父も叔母も犯人はこの中にいないというのだった。

まとめていえば、非常に楽しめるであろう2つの映画を無理やりひとつに入れ込んだせいで、とんでもなく興味を削がれ続ける変な作品でした。

コーエン兄弟らしいブラックユーモアと暴力性、犯罪スリラーをひとつ主人公の軸とした本作。

50年代の幸せ黄金期のアメリカ社会を映し出しつつ、それがあくまで”白人にとって”の黄金期であると、映画が始まってすぐに黒人家族を登場させることで提示します。

平和で幸せな街に見えながら、じつはここから公民権運動の激動へと流れていく。つまり黒人にとっては黄金期どころか最悪の暗黒時代だったわけです。

事実、この作品でもすぐさま家の周りに塀を作られ、街の人々から監視の目を向けられてしまいます。

しかしそれに挫けずに、真っ直ぐと生きていく一家を通して・・・と思えば、先ほど言いましたように、主人公の少年が置かれた犯罪劇がメインとして映画は進んでいきます。

別にそれは良いのですが、このふたつの話が全然関係性を持たずに切り替わりながら進むのです。

最近中年凡人オッサンが良い感じに板についてきたマット・デイモンや、すばらしく胡散臭いオスカー・アイザックなど観ていて楽しいものの、気になるのは隣人の黒人一家。

どれだけ少年に危機が迫ろうと、犯罪計画がどんどんと破綻していこうと、正直どうでもよくなっていきます。

全く関係のないところで、しかし犯罪計画よりもずっと大きなスケールかつ興味深いストーリーが進んでいるからです。

少年同士の繋がりというものと、場所や塀の使い方に関しては巧くはあるのかもしれませんが、切り離されたプロットの登場人物たちが関わったところで、ドラマは生まれなかったように感じました。

表と裏とを使うことは理解できます。概念的な部分での共通項は揃っていて、観客はそれらを自分で結びつけることはできると思います。

街の表の顔に、差別と偏見に溢れた裏の顔。

悲劇の家族という表の顔に、私利私欲にまみれた醜い殺人計画。

ラストシーンでは、家の表で起きている凄惨な現場をよそに、裏で少年二人が塀を越えたキャッチボールをするので、構図も意味合いも素敵ではあります。

優しい日の光も暖かくて、未来を象徴する子供の姿はアメリカのこの先に希望を与えようとしています。

しかし、結局はこの少年たち二人の関係性も薄く、それぞれが乗り越えた物語も、全く響きあう部分がないままに、クライマックスを迎えてしまったので、収束も感じずに、散らかったままに終わった作品でした。

別々にしたら面白かったような二つのお話。

私としては、自分達こそを劣悪な野蛮人と避難する白人社会が、勝手に殺しあって自滅する様を見る黒人一家側のストーリーこそが気になりましたね。

実際、ジョージ・クルーニーがもともと取り組んでいた作品と、コーエン兄弟が企画してお蔵入りになりそうになった話をくっつけたということで、それをうまく統合できないままなのかなと思いました。

ジョージ・クルーニーが監督、コーエン兄弟が脚本、撮影はロバート・エルスウィットで音楽はアレクサンドル・デスプラ・・・なのにどうしてこうなったのか、ちょっとがっかりな作品でした。

感想としては以上。それでは、また。

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