「JOY/ジョイ」(2015)
- 監督:デヴィッド・O・ラッセル
- 脚本:デヴィッド・O・ラッセル
- 原案:デヴィッド・O・ラッセル、アニー・マモロー
- 製作:ジョン・デイビス、ミーガン・エリソン、ジョナサン・ゴードン、ケン・モク、デヴィッド・O・ラッセル
- 製作総指揮:マシュー・バドマン、ジョン・フォックス、ジョイ・マンガーノ、イーサン・スミス、メアリー・マクラグレン、アニー・マモロー、ジョージ・パーラ
- 音楽:デヴィッド・キャンベル、ウェスト・ディラン・ソードソン
- 撮影:リヌス・サンドグレン
- 編集:アラン・ボームガーテン、ジェイ・キャシディ、トム・クロス、クリストファー・テレフセン
- プロダクションデザイン:ジュディー・ベッカー
- 美術:ピーター・ログネス
- 衣装:マイケル・ウィルキンソン
- 出演:ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパ 他
「アメリカン・ハッスル」(2013)の監督デヴィッド・O・ラッセル最新作。良く組む俳優陣というのがいますが、今回は「世界にひとつのプレイブック」(2012)の面々を集結。おなじみジェニファー・ローレンスに、ブラッドリー・クーパーとロバート・デ・ニーロが出演しています。
やはりジェニファー・ローレンスの演技はもはや鉄板というもので、今作でゴールデングローブのコメディ部門主演女優賞を獲得、アカデミー賞でも同枠にノミネートしていました。
映画は実在の女性実業家の話でして、主婦であったジョイ・マンガーノのミラクル・モップの開発と成功を描いているものです。
私が見たのは結構前になってしまいますが、日本での公開は今のところまだですね。まあ有名製作人ですしすぐやるでしょう。
ジョイ・マンガーノは子供のころからものを作ることに夢中だった。いつも優しくそばにいてくれた祖母もそれを応援してくれていた。
しかし、自己実現とは難しいもの。クリエイティブな現場とは遠く、ジョイは航空会社で航空券販売の仕事をしていた。
結婚もしたが長くは続かず、子供の世話に忙しい。しかも元夫は自宅の地下に暮らしている。さらに面倒が畳み掛けるように、母と離婚していた父が戻ってきて自宅で暮らし始めるのだ。
さらに喧騒を深めた環境で、ジョイは子供の頃の夢が遠のいていくのを感じる。
だが家事に追われるある日、彼女にひらめきが生まれる。
元になった実業家のジョイ・マンガーノさんに関しては何にも知らなかったのですが、本作はだいたいは彼女を追いかけていきます。
話というよりはむしろ、演じるジェニファー・ローレンスのリードによってこのジョイにすごく寄り添っていけると思います。
気丈なところも脆いところも、そして半ば絶望しているところも。全感情セクションにおいて素晴らしい演技で引きつけてくれますね。ここができていればもう個人的には本作はOKと言いたいところですね。
ガラスで手を切ってしまう。痛みは外傷以上に心にあるようでした。このまま何も自分らしさを得ることのないまま人生が過ぎ去ってしまう。
この感覚は誰でも共感できるものなんじゃないでしょうかね。
ジェニファー・ローレンスの力は大きく、自己実現を欲しつつもいつもそれを抑えている。自分を出すというよりも、自分らしさを確立して私有することを目指している姿勢がこの上なく自然に真摯に伝わってきます。
「みんな私をわかって!」というよりは、「みんな私を放っておいて!」という感じでしょうか。
さてそんなジョイを囲うのはこれまたデヴィッド・O・ラッセル監督作ではおなじみと言っていい、一癖も二癖もある周囲の人物、特に主人公にとっては障壁にしか思えない家族です。
で、今作において実は私があまりぱっとしないのがこの家族などの他の登場人物と彼らのパートでして。言ってしまえばジョイに対してのカウンターやきっかけ程度の機能しか持っていない気がしたのです。
ロバート・デ・ニーロもブラッドリー・クーパーも、イザベラ・ロッセリーニも演技としてはおもしろいのです。微妙なうざさと奇妙さを持ち合わせていたりして。
ですが、ジョイに対しての働きかけだけで、彼らは彼らのまま何も発展が感じられませんでした。
とするならば、ジョイだけにより注視しても良かったのではないかなと思いましたね。
祖母のナレーションの言うとおりに、ジョイはいわゆる独立した強い女性です。
彼女は子供の頃からクラフトが好きでしたね。そして何より、王子様はいらないの、と自分自身の力で進んでいくことを強く思っている女性。
彼女がミラクル・モップを巡って、方々へ走り回ったり、ヤラセ販売してみたり、TVで頑張っていたり。それらすべては非常に楽しめる。
そこは何と言ってもジェニファー・ローレンスがしっかり引っ張ってくれているからでしょう。
彼女の痛さも辛さもやりきれなさも全て共有していけます。ジョイの成功を願い、その姿に嬉しくなる。ジェニファー・ローレンス見たさなら満足のいく作品。
ただ、全体的な人物含めたまとまりには欠けているように思えますし、いつものデヴィッド・O・ラッセル監督らしい奇妙さも、変なだけにとどまり楽しくはない印象でした。
個人的には「世界にひとつのプレイブック」とかの方が好きでしたね。監督ファンなら是非チェックを。ジェニファー好きの方は必見かと。
そんなところで感想はおしまいです。それでは、また。
コメント