「デッドプール」(2016)
- 監督:ティム・ミラー
- 脚本:レット・リース、ポール・ワーニック
- 原作:ファビン・ニシーザ、ロブ・ライフェルド
- 製作:ローレン・シュラー・ドナー、サイモン・キンバーグ、ケビン・ファイギ
- 製作総指揮:スタン・リー
- 音楽:ジャンキーXL
- 撮影:ケン・セング
- 編集:ジュリアン・クラーク
- 衣装:アンガス・ストラティー
- 美術:ショーン・ハワース
- 視覚効果:ジョナサン・ロスバート
- 出演:ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T・J・ミラー、ジーナ・カラーノ、ブリアナ・ヒルデブランド 他
デップ―さんによる本作説明
「バカが作った映画」
出演:どうしようもないアホ、エロい女、イギリス人悪役、気取ったティーン、コミックネタ、CGキャラクター、豪華なカメオ
製作:クソども
脚本:本物のヒーローたち
監督:ギャラとりすぎのバカ
・・・となっています。既に面白い。
宣伝もかなりいろいろなところでやっていまして、R指定映画はもはやニッチではなく、メインでブロックバスターになれることを証明してる本作。
日本初日、平日ながら満席にちかい状態で鑑賞しました。外国人の方も多く、また学生っぽい男子集団も多め。劇場では笑いが絶えない、一体となって楽しむ素敵な映画体験でしたね。
元特殊部隊員にして、現在はいわゆるトラブルシューターとして日々金を稼いでいるウェイド・ウィルソン。
軽口の減らない彼だが、ある日行きつけのバーで高級娼婦のヴァネッサと出会う。お互いの深い部分にあるものに惹かれあい、愛し合うようにある2人。幸せな日々を送るのだった。
しかしあるとき、ウェイドに末期のガンが見つかる。治療する方法もなく、悲しみに暮れているところに、謎の男が現れ、彼のガンを治しそして超人的な力も授けてやると申し出た。
死にゆく自分とともにいるという苦痛をヴァネッサに味あわせたくない一心で、ウェイドはその治療へと参加するが、その実態は人体実験によるミュータント培養計画であり、ウェイドは様々な拷問を受けることになる。
元々かなり前からデッドプールの映画の話はありましたが、なかなか難しいキャラゆえか、ここまで長くかかりました。
X-men世界においては、「ウルヴァリン:X-men ZERO」(2009)に登場してはいたものの、大失敗。キャラの特徴、良さをまる潰しの酷いものでした。
しかしあの時もライアン・レイノルズはハマっていまして、今作でも続投。彼のデップーっぷりは、その振り切れた感じが俳優としての来歴にもリンクし、まさに分身。
RDJ=トニー・スターク、ヒース・レジャー=ジョーカー、ヒュー・ジャックマン=ウルヴァリン等、デッドプール=ライアン・レイノルズが見事に完成されています。
口数が多く、どんなことでもネタにする。そこには自虐すら混じっていたり。ライアンが経てきた、成功も失敗もすべてが、コメディのネタとして、まくしたてるギャグに入ってきています。
デッドプールのユーモアというのが、私はかなりよく考えて組み込まれていると感じます。
彼の下ネタも第4の壁突破も、減らず口もすべて、周りを笑わせようというものではないと思います。むしろ、自分で笑うため。
完全に破滅した人生に対し、彼は「笑うしかない。」のだと思いますね。
だから常に状況を自分にとって面白おかしいものにしようとしている。ウェイドの頃も、そしてデッドプールになってからも。
かなりクズではあるものの、誰を殺して誰を殺さないかの分別は以外にもマトモ。
周りはどうでもいいわけでなく、最終戦の初めには、ネガソニックを庇いながら車の陰に飛び込んだり。イカレて見える中に人間らしさがしっかり残っていますね。
コロッサスのまじめっぷりや、ネガソニックの活躍も良く。近寄りがたい雰囲気のネガソニックですけど、デッドプールとの会話とか通してすごくかわいく見えます。
またタクシー運転手の最初から最後までのギャグも見事です。ヒーローの影響、見本を間違えたパターンってのを見せてくれます。褒めるデップ―も大概ですw
ヒロインヴァネッサも、けっこうえげつないw 彼女も結構クレイジーですよね。カップリング最高です。
悪役に関してですが、格闘技プロのジーナの圧の強さも良いですが(ポロリはしっかりみたかったw)、エド・スクラインが設定的にも良いですね。
デップ―と同じくサイコなんですが、痛みも悲しみも感じる彼と違い、一切の感情がないのです。ここがかなり大きなポイントで、デップーがフランシスと=にならないところかなと。
キレるアクション、血しぶきゴア、そしてドギツイ下ネタ。オープニングクレジットから最高のテンションで突っ切る本作ですけども、構成がまず上手いと思います。
時系列を入れ替える形で、回想しながらオープニングにつなげることで、デップーのナレーションも違和感なく、またそれ故に観客に対して話しかけているのも納得。
また初めからやるのではデップ―節は中盤以降になってしまうところを、始まってすぐフルスロットルにできるんですね。ダレのない展開が見事で、ここではギャグがらみの編集も良いです。
ジュリアン・クラークの仕事でしょうか、矢継ぎ早にカットが切り替わり、スピーディ。ラブメイキング畳み掛けもデッドプールのフランシス探しも、軽快なノリでそのエロさと暴力を抑え、苦にならないシーンにしています。
上映時間なんてよくわからないほど運びの良い本作。
確かにちょっと視覚効果に微妙なところがあったり、スケール感が低予算系に感じる、最後はデップ―以外のバトルが背景すぎるなんて思ったり推します。しかしバカ映画ではありますが、ハートはあります。
人生狂ったウェイドでも心は相変わらず持っている。口では色々言いつつも、盲目のアルに寄り添い嘆き、トイレで自分の意気地の無さを責める。顔を伏せてしまうあの一瞬、なんとも切ない。
なんでも治る体で、超人で。でも普通に感じるんです。
愛する人に会いたくてもあえない辛さや、自分という重荷。ヴァネッサと一緒に歩むはずの人生が壊れてしまった悲しさが、彼を包みます。
それを覆い隠し、一分一秒でも考えなくていいように、止まらないユーモアで隠そうとしているんですね。
一番言いたいことは、とにかく愛がある、ってこと。
ライアンら製作側がどれだけデッドプールというキャラを愛し研究し、映画の場に出そうと試行錯誤したか。このキャラクターの本質としての魅力を引き出すために、とにかく何でもする。
たとえR指定が入ろうが、それがデッドプールに必要ならやるんです。心意気が本当に美しい。
フランケンシュタインの怪物、リベンジにラブロマンス。痛快コメディにバイオレンスアクションまで詰まっています。細かなネタは映画やアメリカセレブが分からないと?かもしれませんが、十分に笑度通せる本作。
そしてそのヒーローを輝かせるためならば、映画の規制とかそういったものを超えてでも、愛を貫く大切さも沁みるように感じる。愛の大勝利。おススメの1本です。
そんなところでデップ―旋風がどうなるか、見ものです。それでは~
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