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「ヒトラーの忘れもの」”Land of Mine” aka “Under sandet”(2015)

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Land-Of-Mine2015-movie 映画レビュー
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「ヒトラーの忘れもの」(2015)

  • 監督:マーチン・サントフリート
  • 脚本:マーチン・サントフリート
  • 製作:マルテ・グルナート、ミカエル・クリスチャン・リークス
  • 製作総指揮:ヘンリク・ツェイン、レナ・ハウゴート、トーベン・マイゴート、オリヴァー・ジーモン、ダニエル・バウアー、シュテファン・カペラリ、ジルケ・ヴィルフィンガー音楽:スーン・マルティン
  • 撮影:カミラ・イェルム・クヌーセン
  • 編集:ペール・サンドホルト、モリー・マリーヌ・ステンスゴード
  • 出演:ローランド・ムーラー、ミケル・ボー・フォルスゴー、ルイス・ホフマン、ジョエル・バズマン、エミール・ベルトン、オスカー・ベルトン 他

Land-Of-Mine2015-movie

マーチン・サントフリート監督が第二次世界大戦終了後に地雷撤去を行った少年兵たちの実話を描く戦争ドラマ。

作品は第28回の東京国際映画祭でも上映されており、この年のアカデミー賞ではデンマーク代表として外国語映画賞に出品、ノミネートを果たした作品です。

ナチスドイツ撤退後にデンマークに残された200万以上の地雷を撤去するため、ジュネーブ条約に反して除去作業をさせられた戦争捕虜(POW)の少年たちは2,000人以上にのぼり、半数以上が死亡か手足を失うなどをしたとのこと。

その事実も知らなかった私ですが、配信されている映画リストからの見逃し作品で見つけ、以前から見たかったので鑑賞。

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第二次世界大戦終結直後、それまで5年に渡りデンマークを占領していたドイツ軍は撤退を始めていた。

帰路につくドイツ兵へ罵声を浴びせ、暴行を加えるデンマークの軍曹ラスムスン。

彼にはドイツ軍が残していった大量の地雷除去任務が与えられ、そこにはまだ10代のドイツ人少年兵たちがあてがわれる。

ナチスドイツへの憎しみから少年たちに酷くあたるラスムスンだったが、若き少年たちが無情にも撤去作業中に爆死していく様を見て、少しずつ変わっていく。

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敵対するグループの人間が、柔和していく話というのは多く見受けられます。

次第に心通わせていく。なんて文言は聞きあきるほどです。

しかしマーチン・サントフリート監督が描く地雷原での物語は、贖罪や他者理解のロジックを丁寧に描くだけでなく、歴史の事実としての無情さを湛えています。

グロ描写も直接的にある、この色彩に欠ける戦後デンマークの海岸線で、人間が本質的に持つ赦しの心を見るようです。

これは敵と関わることで、国と同じく荒廃した軍曹の心が癒され救われていく話だと感じます。

今作は構造上においてその焦点が軍曹に当てられていると思いました。

もちろん見わけのつかないようなドイツ軍少年兵たちにもそれぞれの個性が見えてはきますが、環境において最も変化を見せるのは軍曹です。

冒頭の帰還していく兵士たちの列への対応、また海岸線に宿舎を貸している女性の反応を見れば、そこにはナチスドイツへの憎悪しか見えません。

ラスムスンはじめとして、デンマーク側には少年たちの運命など気に掛けるそぶりはない。

地雷撤去の危険さはすでに訓練時から大いに引き立てられますが、そこで早速の死者が出ても構うことはない。

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地雷撤去の作業一つ一つに尋常ではない緊張感があり、言葉は悪いですがとてもスリリングです。

そして容赦のない描写が少年たちに起きるそれを目の当たりにするたびに、なぜ彼らがこのような代償を払う必要があるのかと疑問に思います。

ナチスドイツを興し、ヨーロッパの各国へと侵攻の指示を出したのは彼らではない。従軍し、海外で戦闘に参加した彼らがこのような後始末をさせられたのです。

語られることが少ないですが、決して無視してはいけない事実です。

私は彼らの一人が「故郷を復興させなきゃ」と口にしたのがとても胸が締め付けられる思いでした。

ここまでの境遇にありながらもまだ祖国ドイツを愛し、国のために尽力しようというのです。

こんな高校生にも満たないような少年たち、本来は国の宝であり将来の象徴である彼らを、デンマークの海岸線で任務にあたらせる結果を招いたのは上の世代です。

父のようになっていくラスムスンは、国は違えどそこに何らかの、先を生きた世代としての責任を感じたのでしょうか。

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第二次世界大戦のナチスドイツの侵攻により荒んでしまったのは、故郷だけでなくそこに暮らす人々、ひいては人間の心だったのです。

その復興には建て直しでは十分ではありません。

敵に対する同情や赦しが、自分の中から出てくることで、荒廃した心が癒され、再び人間性を取り戻すことになる。

ラスムスンは憎しみから解放され、戦争で失っていた思いやりを取り戻し、少年たちを自由にすることで自分自身を戦争から救い出したのだと思います。

それまで軍曹として、軍人としての行動だけであったラスムスンは最後に、人間としてできることをしたのです。

全体的にはセンチメンタルな作品ですが、情けのない描写はこの任務に参加し犠牲になった少年たちへの共感をおおいに引き出し、それ自体が貴重な記録。

そして寒色だらけの中で唯一あたたかな太陽の光にあてられた少年と軍曹の姿はとびきり輝き記憶に残ります。

それぞれのシーンが強い力持ち全体をまとめ上げる、マーチン・サントフリート監督の見事な手腕が光る作品でした。

現在(2020.4.15)Amazonプライムビデオにて配信中ですので、興味のある方はぜひ鑑賞を。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それでは、また次の記事で。

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