「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(2018)
- 監督:デヴィッド・イェーツ
- 脚本:J・K・ローリング
- 製作:J・K・ローリング、デヴィッド・ハイマン、スティーヴ・クローヴス、ライオネル・ウィグラム
- 製作総指揮:ニール・ブレア、ダニー・コーエン、ティム・ルイス、リック・セナ
- 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
- 撮影:フィリップ・ルースロ
- 編集:マーク・デイ
- 出演:エディ・レッドメイン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、エズラ・ミラー、ゾーイ・クラヴィッツ、クローディア・キム、ジュード・ロウ、ジョニー・デップ 他
ハリー・ポッターシリーズのプリクエルであるファンタスティック・ビーストシリーズの第2作品目。監督は前作から引き続きデヴィッド・イェーツが担当。
主演陣も続投し、前作ラストからメインのヴィランとしてジョニー・デップがグリンデルバルドを演じ、ジュード・ロウがあのダンブルドア校長の若かりし頃として出演しています。
前作は青春映画でもあったハリー・ポッターシリーズとは異なる少し大人なビターさが好きで、今回も主要なスタッフが同じなので楽しみにしていました。
公開日が祝日でしたが、私はイタリア映画の連続上映に行ってたので次の土曜日に通常字幕にて鑑賞。
大きなスクリーンで満員近い入りで、鑑賞前後の様子から、かなりのファンはもちろん、ハリーシリーズはちゃんと見てないという方まで色々いましたね。
私個人としては、今作はハリー・ポッターシリーズを観てないと厳しいタイプの作品だと思います。
ニューヨークを巻き込んだ事件のあと、闇の魔法使いであるグリンデルバルドは投獄されていたが、欧州への引き渡しの移送のタイミングで、仲間の協力を得て脱走してしまう。
魔法界はグリンデルバルドの目的が、ニューヨークの事件を生き延びた青年クリーデンスであると知り、グリンデルバルドより先にクリーデンスを見つけ出し処理することを決定。しかし、そのやり方に難色を示すホグワーツ魔法学校の校長ダンブルドアは、独断でニュート・スキャマンダーにクリーデンスの保護を依頼する。
グリンデルバルド、そして魔法省よりも前に、ニュートはクリーデンスを見つけ出せるのか。
シリーズの2作品目になりましたが、同時に前日譚の続編であり、ウィザーディングワールドの一部でもあるという色が濃くなった本作。ファンドム万歳の作品になっています。
正直言って個人的にはあまり楽しくなかったです。
ひとつの映画、エピソードとするには話が少なく、そのわりに繰り出される情報量、つまり背景やプロット説明にファンサービス的なキャラやアイテムの入れ込みなどが溢れんばかりです。
一応はハリー・ポッターシリーズを全て観ていますし、出てくるキャラクターや画面に登場するアイテムや使われる魔法に、「あの人だ。」「あのアイテムだ。」と認識はできますが、だからなんだということです。
この作品、プロットが全く進行しないんです。
ダンブルドアが出てきてとか、ニコラス・フラメルがいて、棚に賢者の石があって、あのナギニが人間の頃で・・・それはわかりますけど、メインプロットに関係ありますか?
メインは、脱走したグリンデルバルド、そして魔法省のエージェントより先にニュートがクリーデンスを保護できるかどうか。この一点です。
しかしこの点に関しては一向に進まないので、観ていて飽きてきてしまいました。
基本的に思出話と状況説明に終始しているように思えます。各キャラのドラマ性を深めるための悲しい過去話とかたくさんで、何回回想シーン出せば気がすむのか。
この映画が始まってから、つまり観客が人物と出会ってからの物語があまりに少なく、映画が始まる前に既に色々あって大変だと言う状況。
正直さっき出会ったばかりの人の身の上話を永遠聞かされても興味がわきませんでした。
ユニバース作品ゆえの目配せやイースターエッグなどの悪い形だなぁと思います。情報量が多いイコール内容が濃いというわけではないと思いますよ。
ニュートとティナ、そしてジェイコブとクイニーなど既に前作で気に入っていたメンバーのドラマに関しても独立して進みすぎです。
ようやっと第3幕目たるグリンデルバルドのもとに集うところで選択のドラマが生まれますけど、それまではグリンデルバルドにもクリーデンスにも関わっていないので人物へのフォーカスが変わる度に全く別の映画を見せられているみたいでした。
この映画で良かったのは、まずやはりエディ・レッドメインとエズラ・ミラーの二人かなと思います。
エディは相変わらず斜めの姿勢でしか人と会話できないで、存在がファンタスティック・ビースト。エズラはアイデンティティを追い求める若者として、そして彼のドラマが一番グリンデルバルドに関わるからかおもしろいです。欲求が強いからこそ安易な答えへの道へ進むわけです。
また最終的にグリンデルバルドの集会で巧くまとまったかなとも思います。上手い演説となんとなく納得しそうな”自由”の論理。
この後世界がどうなるかを考えるとおもしろいものです。1つの種族を劣るとして、自由のためを謳う演説の上手いやつが世界を支配しようとするわけですから。
ジョニー・デップのルックがもたらす世界観の説得力とか、キャラクターから来る世界は完成されていますが、やはり説明とファン接待や昔話ばかりの作品です。
新しい冒険への扉を開けたと思ったら、ずっと立ち話をして結局5歩くらいしか進んでません。
情報量の多さは感情の深みやストーリーテリングに関係ない。プロット進行を忘れてしまった作品だと思いました。
舞台は整った完全にこっからな作品だと思いますから、次回でしっかり展開させて欲しいところです。というところで、まあなんかフランチャイズの一部としてとても煮え切らず悪いところが露出したように思えた作品でした。
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