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「潜水艦クルスクの生存者たち」”KURSK”(2018)

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「潜水艦クルスクの生存者たち」(2018)

作品概要

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  • 監督:トーマス・ヴィンターベア
  • 脚本:ロバート・ロダット
  • 原作:ロバート・ムーア「A Time to Die」
  • 製作:アリエル・ゼイトゥン
  • 製作総指揮 C・トーマス・パッシャル、レイ・ウー、リサ・エルジー
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • 撮影:アンソニー・ドッド・マントル
  • 編集:ヴァルディス・オスカードッティル
  • 出演:マティアス・スーナールツ、レア・セドゥ、コリン・ファース、マックス・フォン・シドー 他

「アナザーラウンド」などのトーマス・ヴィンターベア監督が実際に海洋軍事演習中に起きた潜水艦の沈没事故と、その救出作戦を背景に絡む国家の思惑を描く作品。

主演は「レッド・スパロー」などのマティアス・スーナールツ。彼の妻役として「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」などのレア・セドゥ。

その他コリン・ファースが救助活動への協力を申し出る英国艦隊の准将を演じ、ロシア側の交換をマックス・フォン・シドーが演じています。

フォン・シドーは2020年に亡くなってしまいましたね。

ロバート・ムーアによるノンフィクショ小説「A Time to Die」を原作とした映画化で、製作の開始は2016年ころになり映画も2018年には公開されていましたが、長らく日本では未公開だったようです。

題材としても昨今のロシアによるウクライナへの侵攻が背景にあり、2022年になってからの日本での上映というのは、国際事情に合わせた公開になったのかもしれません。

題材に興味があったというよりも、あのヴィンターベア監督作品であればそれは観るしかないので鑑賞。

公開週末に観てきましたが、そこそこ人が入っていました。

「潜水艦クルスクの生存者たち」キノシネマ作品紹介ページはこちら

~あらすじ~

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2000年。

軍事演習のために乗員118名を載せた原子力潜水艦クルスクが出航。

乗組員は長く海軍に人生をささげてきた男たちで、強い絆で結ばれている。

上官であるミハイルもまた、家族のような乗組員たちとクルスクに乗っている。

全てが順調に思えた演習だったが、クルスク積んでいた魚雷の温度が急上昇し、艦内で爆発事故を起こしてしまう。

大損害を受けたクルスク。ミハイルは生き残った乗組員たちを安全な船尾に移動させてエリアを封鎖、救助を待つことにした。

しかし、ロシアに備わる救助艇はふるいじだいのものでメンテナンスもされておらず救助が難航。

さらにクルスクが機密原子力潜水艦であることからロシア上層部は他国軍による救助支援を断っていた。

少ない空気、冷たい海水。ミハイルたちに残された時間はわずかだった。

感想/レビュー

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トーマス・ヴィンターベア監督がこのように実際の事件、歴史を題材にする作品を撮るのは意外でした。

それが楽しみでもありますが、良くも悪くも彼自身の手腕と題材がぶつかってしまっている印象です。

ヴィンターベア監督の手腕として今作で遺憾なく発揮されているのは、人物の連帯や繋がり、コミュニティとしての実在感です。

見事な人物の実在性と感情的つながりの構築

クルスクの乗組員たちの紹介は時間的にもテンポとしてもはやめです。

序盤の結婚式のシーン、こじんまりとした地元の会場で執り行われるこの場面見事です。

多くの登場人物を一同に会して紹介しながら、個としての人生を覗かせ、またその歴史を感じさせる。

海軍によって生まれている絆は合唱で示され、小さいながらも重要な両親の存在が歴史を映します。

夫婦の愛し合うシーン、互いに冗談を言い合うこと。

全てがしっかりとこれから潜水艦で一緒に過ごす登場人物に背景を与えています。

そのまますぐにクルスクに乗船して進んでいく。

事故が起こるまでも含めて結構短い気がしますが、それでも確かな演出によってしっかりこの人物たちに生きている感覚と仲の良さなどが感じ取れるようになっています。

こうした小さなコミュニティの形成や本当に昔からの縁がある友人たちをあっという間に描いてしまうのは、ヴィンターベア監督さすがの手腕だと思うのです。

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ではそのドラマ性の何が問題だったのかというと、今作の題材です。

そもそもこのクルスクをめぐる一連の出来事は、国家の戦略や思惑、言ってしまえば政治というのが人命よりも優先された人災であるわけです。

その点でいうと主眼はクルスク内部ではなくクルスクの外側に展開されるべきではあると考えられます。

それはレア・セドゥ演じる妻の、手を出すこともそして正確な状況すらもわからないもどかしさ、苦しさをかみしめる側にあります。

彼女たちとともに、ただ時間が過ぎ残酷に朝を迎え再びを夜になるのを体感するのは辛いものでした。

ドラマチックすぎる

もどかしさやしがらみ、エゴによる愚かさなどが避難されることがテーマですが、一方で前述のように人物の描写がいいことや、演者がみな素晴らしい仕事をしているということもあって、沈没した潜水艦の中での生き残りという部分にドラマが集中します。

確かに盛り上がりますし、マティアス・スーナールツ他必死で帰ろうという乗組員に惹きつけられます。

館内ではかなりのロングカットでの潜水シーンなどもありスリリング。

しかし出来栄えが良ければ良いほどに、どこかこの作品がメロドラマと化していってしまう危険性を覚えながら観ていました。

実際の事件を扱う際にはらむ危険性は、事実以上に盛り上げることでフィクショナルに振れてしまうこと、または演出が足りずに語り部が下手だということですが、今作は前者を少し感じます。

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クルスクついての悲痛さは分かりますし、映画としてスリラーに溢れた作品です。

しかしこの話をハラハラドキドキのサバイバル映画にしていいのかは疑問として抱えます。

伝えるべき事実について語りが下手だということは決してないです。

恐ろしい事実がスリリングな物語に変容するあやうさ

しかしうますぎる語りは時に事実を物語に落としてしまう気もする。難しいものです。

息子のミーシャについての演出や祖父母のあたりなどはちょっとやりすぎに思えます。

フォン・シドー演じるロシア高官が直接的に悪人すぎるのも微妙かも。

時期的には受けそうな話ではあり、こうして上層部の愚かな決断によって最前線にて命を落とす人々がいるというのは、今のロシアによるウクライナ侵攻と重なります。

ただ人を描くなら人だけを、彼らが生きた証を。そして事件を描くなら事件と背景を。フォーカスしたほうが良かったでしょう。

監督の腕の良さと俳優陣の好演が良くも悪くも質を高めた映画でした。

今回は賛否で言えばちょっと否よりですが、オススメできない映画ではないという複雑な感情に。

こちらみなさんもぜひ鑑賞していただけると良いと思います。

今回の感想は以上。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

コメント

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