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「アン・リー はじまりの物語」ネタバレ感想|現代にこそ必要?シェーカー教団という理想郷

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「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想 映画レビュー
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作品解説

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

18世紀に実在した宗教指導者アン・リーの生涯を描く伝記ミュージカル。

男女平等や人種平等を掲げ、「シェーカー教団」と呼ばれる共同体を築いた彼女の波乱に満ちた人生を、「マンマ・ミーア!」のアマンダ・サイフリッド主演で映画化しています。

監督は、「ブルータリスト」で脚本を手がけた モナ・ファストボールド

脚本はファストボールドと ブラディ・コーベット が共同で執筆。2025年の 第82回ベネチア国際映画祭 コンペティション部門にも出品されました。

キャスト

主人公アン・リーを演じるのはアマンダ・サイフリッド

アンを支えるシスター・メアリー役には「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」などのトーマシン・マッケンジー、ウィリアム役には「サンダーボルツ」などのルイス・プルマン

さらに、アンの夫アブラハム役をアンドリュー・スコットが演じています。

スタッフ

  • 監督:モナ・ファストボールド
  • 脚本:モナ・ファストボールド、ブラディ・コーベット
  • 撮影:ウィリアム・レクサー
  • 美術:サミュエル・ベイダー
  • 衣装:マウゴザータ・カルピウク
  • 編集:ソフィア・スベルカソー
  • 音楽:ダニエル・ブルンバーグ
  • 振付:セリア・ロールソン=ホール

モナ・ファストボールド監督の前作、「ブルータリスト」ってじつは未鑑賞。

その前に「ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明け」っていうヴァネッサ・カービーとキャサリン・ウォーターストン共演のレズビアン映画があったんですが、それも観たかったものの配信スルーで未鑑賞。

なので監督の作品は初めて見ることになりました。

題材になっているシェイカーズ教団にも詳しくないので結構プレーンな状態での鑑賞。公開週末に行ったのですが、題材が宗教で電気ということもあってかあまり人はおらずかなり空いていました。

〜あらすじ〜

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

18世紀のイギリス。貧しい鍛冶職人の家に生まれたアンは、深い信仰心を胸に生きる女性だった。

しかし、授かった4人の子どもをすべて失うという耐え難い悲劇を経験したことで、彼女の人生は大きく変わる。

やがてアンは、自らが「キリストの女性としての再来」であるという啓示を受け、人々に平等と救済を説き始める。

性別や人種の違いを超えた平等な社会を訴える彼女の思想は、多くの支持者を集める一方で、既存の価値観に固執する人々から激しい反発を招く。

迫害が強まるなか、アンはわずかな信徒たちとともに新天地アメリカへ渡ることを決意。理想の共同体を築き、人々が平等に暮らせるユートピアの実現を目指す。

しかし、その道のりには数々の試練と困難が待ち受けていた。

感想レビュー/考察

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

今作はイギリスで生まれ、迫害の後にアメリカへ渡った新興宗教「シェイカーズ教団」とその創始者であるアン・リーにスポットライトを当てています。

私自身この作品まで知ることのなかったこの教団の存在ですが、簡単にまとめてみます。

シェーカー教団とは?

シェーカー教団は、1747年にイギリスで誕生したキリスト教プロテスタント系の宗教共同体です。礼拝中に信徒たちが体を震わせたり踊ったりしたことから、「Shakers(震える人々)」と呼ばれるようになりました。

1774年、迫害を逃れた指導者 アン・リー と信徒たちはアメリカへ渡り、ニューヨーク州を拠点に共同体を築きます。

男女平等や人種平等を重視し、当時としては非常に先進的な思想を掲げていました。

映画でもちょうどこのアメリカへの旅とその後の物語が描かれています。

シェーカー教団の特徴

  • 男女平等を重視
  • 財産を共有する共同生活
  • 勤勉な労働と質素な暮らし
  • 独身主義(結婚や出産を行わない)
  • 強い信仰心と規律

特に独身主義を徹底していたため、信徒数は最盛期でも約5000人程度にとどまりました。

映画でもたびたび、その旅路や生活の中で病に仲間が倒れていきますが、結婚と出産がないので、教団内で人口は増えないんですよね。

その他、彼らはシェーカー家具という分類ができるくらいにイノベーティブでもあったようです。

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

消えゆくユートピア、その始まりを描く物語

そんな感じで、本当に特異な存在であったシェイカーズ。

その創始者に注目した今作は実際どうだったか。

私は風変わりさもありながら、主演のアマンダ・サイフリッドの素晴らしい演技に完成されていると感じ、どことなく現代社会にこそ必要な集合体の喪失にすこし切なさを覚えました。

礼拝がそのままミュージカルになる異色の演出

今作はミュージカルというくくりにはなっているものの、これまでの「ラ・ラ・ランド」とか「ウィキッド」のような形の従来のミュージカルではありませんでした。

歌い踊るシーンは、そのままシェイカーズの礼拝のシーンに重なっています。なので、彼らがコンテンポラリー・ダンスを交えて、自らの身体をふるわせて踊る姿が重なっています。

そして歌というのは彼らの讃美歌をそのまま投影しています。なので会話が歌になっているわけでもなく、あくまでこのミサのシーンが全体にミュージカルになる。

大きな集合体としてシェイカーズの人々がえねるじーを発している中を、ぐるっとワンカットのカメラワークでとらえるシーンは、何か圧倒されるものがあります。

そしてその自分が自分から解放され、大きなものの一部になる瞬間こそ、彼らの言う神との会話なのかもしれません。

この映画はその感覚を見事にとらえて、観客にも提供していると感じました。

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

アマンダ・サイフリッドが体現するアン・リーの孤独

さて、中心にいるアマンダ・サイフリッドも素晴らしかったです。アンというキャラクターは、どこか世界から浮いています。

彼女は幼少期、両親のセックスを見たようです。その件について食卓で話した際、父に激しく叱責され手をむち打ちされます。

この経験からか、性交渉や淫行自体に関して嫌悪感を持っているように思います。なので、アブラハムと結婚はしたものの、しかし性交渉はそこまで喜びのあるものでもない。

愛を持ってはいますが、アセクシャル的な、性交渉や性的な交わりには興味がない、少しクィアな存在のように見えます。

アマンダはその表情で、愛情や慈しみを見せてくれつつも、性の部分では静かに抵抗するような顔を見せていました。

子どもを失った悲しみが信仰へと変わる

そして何より、彼女の悲しみが大きな影を落とします。4人の子どもを産みつつも、いずれも乳幼児の時点で亡くなってしまっている。

あまり好きでもなかった性交渉をしてもなお、命を育てることができなかった。彼女が独身性とかに寄るのにはこういった背景があるのではないでしょうか。

アマンダは時折狂信的には見えつつも、例えば「ベネデッタ」におけるヴィルジニー・エフィラほどの強権感はなく。優しく繊細な母親の顔をみせながら、意志が強い。

「アン・リー はじまりの物語」The Testament of Ann Lee2025ネタバレ映画感想

マイノリティのための共同体だったのか

シェイカーズの人々は、アンのようにアセクシャルなのでしょうか。

すくなくともクィアであると断言できずとも、拠り所のない人々なのかもしれません。

性別や人種への差を設けずに、誰しもを姉妹、兄妹と呼んだこのコミュニティ。これは権威的なシステムや役割を持たせる宗教派閥に比べて、解放的で自由で、マイノリティにとっての安全地帯のように思えました。

映画のエンドロールでも示されるように、一時的に数千人規模の信者がいたものの、今では2人だけだというシェイカーズ教団。今や研究や学問の対象題材になっている。

女性の宣教師、終末的な思想ではない観念、社会から浮いた存在の拠り所。

喪われてしまっていますが、現代にも必要なユートピアを目指したのがアン・リー達だった。

この作品を通してその思想を呼び覚まし、本当に平和に誰しもが互いを愛することを目指した人々の、その志に触れることはとてもいいことだと感じました。

序盤の家屋内、そして終盤のシェイカーズ教団の建設中の場。美術や衣装、振り付けとカエラワークなど、ミュージカルシーンは一見の価値ありと思いますので、気になる方は劇場で。

今回の感想はここまで。ではまた。

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