「ゴーストバスターズ/アフターライフ」(2021)
作品概要
- 監督:ジェイソン・ライトマン
- 脚本: ギル・キーナン、ジェイソン・ライトマン
- 原作:『ゴーストバスターズ』
- 製作:アイヴァン・ライトマン
- 製作総指揮:ダン・エイクロイド、ギル・キーナン、ジェイソン・ブラメンフェルド、マイケル・ビューグ、アーロン・L・ギルバート、ジェイソン・クロース
- 音楽:ロブ・シモンセン
- 撮影:エリック・スティールバーグ
- 編集:デイナ・E・グローバーマン、ネイサン・オルロフ
- 出演:マッケナ・グレイス、キャリー・クーン、フィン・ウルフハード、ポール・ラッド、ローガン・キム、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツ、シガニー・ウィーバー 他
1984年にスクリーンに登場し一世を風靡したカルト的人気コメディ「ゴーストバスターズ」のフランチャイズ第4作品目となる続編。
位置的には1989年の「ゴーストバスターズ2」から直接の続きということになり、前の2作品の監督であるアイヴァン・ライトマンの息子でり、「タリーと私の秘密の時間」などのジェイソン・ライトマンが監督を務めます。
主演は「gifted/ギフテッド」やドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」でエミー賞ノミネートなど大注目の子役マッケナ・グレイス。
その他「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」などのフィン・ウルフハード、「ロスト・マネー/偽りの報酬」のキャリー・クーン、「アントマン」シリーズのポール・ラッドらが出演。
最近あった「ターミネーター:ニュー・フェイト」のような立ち位置というとわかりやすいですが、リブートはなかったことにしての”正当な続編”というやつです。
ジェイソン・ライトマン監督自身の手腕は良いと思いますし、キャストとしてもマッケナ・グレイスやポール・ラッドなど私も好きな俳優がそろっているので鑑賞予定には入れていました。
2020年には公開の予定だったのですが、コロナの影響から遅れてしまい、北米では21年、日本では年が明けて22年公開に。
今回は公開週末に、IMAXで観てきました。(が良いというわけではなく時間の都合です。)
金曜ロードショーで1作目をやっていたりとプロモーションも手厚く、結構若い層が来ていました。
~あらすじ~
シングルマザーのキャリーは家賃滞納から家を立ち退くことになり、父から相続したオクラホマのぼろ屋敷に引っ越すことになる。
息子のトレヴァーは地元でバイトを始めて友達を作り始めるが、キャリーの心配は娘のフィービー。
電子工学や科学が好きな娘だが、キャリーはそれを理解できず、もっと社交的になってほしいと願うためにすれ違いが起きていた。
そんなフィービーは古い屋敷の中で様々な機械を見つけ、その中で不思議な装置を見つける。
祖父が残したこの装置は、かつてゴーストバスターズが使用していたゴーストトラップであり、祖父は創設メンバーの一人であるイゴン・スペンクラーだったのだ。
祖父が残していたのはトラップだけではなく、収穫もしない農場そのものも何らかのゴーストにかかわるものであるとわかる。
活断層もなく火山もないこの町で30年もの間続く地震。家で起こる超常現象。
祖父が何をしようとしていたのか、フィービーは探り始める。
感想/レビュー
ひとこと言わせてほしい
この作品自体の内容に入る前に、一つだけ言わせてほしいことがあるのですが、人の作ったものを存在しないかのように扱うのだけはやめましょう。
今作は1989年の「ゴーストバスターズ」から直径に続いているとのことで、確かにその意味ではシリーズとして3作品目で良いのです。
ただし、2016年のリブート版「ゴーストバスターズ」が(試みとしてはうまく行かなかったかもしれなくても)存在しないような言い方はやめた方が良いと思うのです。
これはターミネーターとかでも同じようなものですが、路線違いということは言及しながら、やはり作品の存在には触れていたほうが良いと思います。単純に失礼でしょう。
私自身あの作品はそこまでひどいとは思いませんし、フェミニズムの視聴が強すぎたとしてもやる価値はあったと思います。
ゴーストバスティングのアクションシークエンスについては歴代トップ。
狙い通りに機能しつ手法にはイラつく
余談はここまでで実際にこの”3作品目”とされる作品がどうだったかといえば私は複雑な気持ちです。
というのも狙い通りにしてやられてしまったという点と、それでもこの卑怯かつ陳腐なファンサービスにはやや憤りを感じてしまうという点とのジレンマに陥ったからです。
もともと「ゴーストバスターズ」自体がそんなにも傑作的な映画史を変える何かであったとは思えません。
しかし、超常現象(おばけ)とコメディとを非常にうまく混ぜ合わせて、魅力的なキャラクターたちから、愛される世界を生み出したことは間違いないと思います。
その点今作でいうと、現状新しい物語を始めていく人物たちが薄く、魅力的でもない気がします。
マッケナ・グレイスはさすがに存在感を出していて、眉間にしわ寄せて力強い意志を感じてやはりカッコいいです。
しかし、ゴーストバスターズ的なノリには重く、作品が語られるトーンもなんだか重苦しくシリアス。
これは根底に置いたテーマが家族だからでしょうか。
父の生み出したシリーズを息子が継ぎ現代に蘇らせる。
しかしその蘇り手法にはなかなかイラついてしまったのが事実。
あまりに安直なファンサービス映画
まず序盤について何も起きなさすぎる。その遅さの中で行われるのは、懐かしのアイテムをちょこちょこと出して「みんなが好きな○○ですよ!」の繰り返し。
中盤にやっとこさこの作品自体の話が回転し始めますが、ノスタルジーを安売りしすぎです。
オマージュというならば作品内でも話は進行しておりそれが部品として機能しているべきで、機能しつつも敬意を感じるという仕組みになるべき。
今作でやっているのはただのノックオフ、リップオフに近いと言っていいでしょう。
これは終盤にかけてもまさにその通りです。
確かに最終戦における親子かめはめ波にはなんとも目頭が熱くなってしまうものです。
ただそれでも、実質同窓会のようなスクリーンに映っていたのは、要素を並べ立てるだけの空虚さ。
ビル・マーレイ含めてオリジナルのキャストたちが勢ぞろいしてそれは胸熱な展開ではありますけれど、実際のところ彼らのドラマって1ミリも描かれていないんですよ。(電話口の言葉での説明は全然ダメ)
ちょうど1月にはノスタルジー満載で旧作キャラがそろう「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」が公開しました。
あちらがただみんながすでに好きなキャラを並べ立てるのではなく、アクションを通してドラマを止めずに展開したことに比べると、今作はあまりにお粗末です。
現代の、新たなゴーストバスターズの話を描けず過去ばかり見ている
「ゴーストバスターズ」ってなに?という世代における彼らのゴーストバスターズの物語を目指したようにも思えます。
それこそスター・ウォーズの続三部作のように。
隠された父からの愛情を知っていく娘、そして祖父と同じく科学に共通点を持つ孫娘。さらのその母と娘の物語・・・ここにゴーストバスターズを生んだ世代のアイヴァン・ライトマンと自分の時代のゴーストバスターズを始めようと今作を撮ったジェイソン・ライトマンが重なり・・・
家族の物語に対して、ゴーストとして出てくるというゴーストバスターズの世界ならではの展開をつむごうとしたのでしょう。
ただダメな意味でのファンサービス映画に成り下がってしまう意味で今よりも昔しか見えていない作品に思います。
そもそもの脚本としても兄も友達のポッドキャストもサブプロット展開もなく存在自体不要ですし、そのせいでスローペースなら残念。
最後にだけ出てくるメンバーとか、いつまでもおまけにおまけを重ねてきて疲れるクレジットシーンとか。
はっきりと言いましょう。
現代に再定義しようとしたポール・フェイグ監督版「ゴーストバスターズ」の方が優れているし楽しいし意義がある作品です。
親子かめはめ波シーンとか、ハロルド・ライミスのCGでの姿にもちろん胸を撃たれてしまい終盤はとにかく涙が出そうでしたが、全体にはもっとちゃんとファンサービスしつつもフィービーを主人公とする新章ゴーストバスターズが観たかったと思います。
往年のファンの方は楽しめるようにはなっていますので映画館へ。もしも旧作を見ていない方はまず観てからがいいでしょう。
そして、ポール・フェイグの「ゴーストバスターズ」も観てください。
というところで今回の感想は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ではまた。
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