「ラ・ラ・ランド」(2016)

  • 監督:デミアン・チャゼル
  • 脚本:デミアン・チャゼル
  • 製作:フレド・バーガー、ジョーダン・ホロウィッツ、マーク・E・プラット、ゲイリー・ギルバート
  • 音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
  • 撮影:リサヌ・サンドグレン
  • 編集:トム・クロス
  • プロダクションデザイン:デイビッド・ワスコ
  • 美術:オースティン・ゴルグ
  • 衣装:メアリー・ゾフレス
  • 出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン 他

「セッション」(2014)で高い評価を得た新鋭デミアン・チャゼル監督の最新作。

彼にとってはまだ監督3作目ながら、数々の映画祭や賞で高い評価を得ていて、もはや大旋風を巻き起こしている作品ですね。

その評判の良さはもう海を越えて昨年の11月頃から聞こえていました。

ゴールデングローブ賞では作品賞含め7部門を獲得しており、日本では明日発表となるアカデミー賞でも過去最多タイとなる14部門でのノミネートをしています。

公開日には行けなかったものの、昨日行ってきましたよ。アカデミー賞発表前に観れる候補作は少ないですし、なにより期待から早く観たかったもので。

私は普通の字幕で、IMAXではありませんでしたが、すごい混雑で、ほぼ満員でしたね。クライマックスに隣のお兄さんが号泣してました。

ロサンゼルス。夢見るものたちが集まるこの街に、2人の若者がいた。

女優を夢見てオーディションに励むミア、ジャズピアニストで、いつか自分のジャズクラブを持つことを願うセバスチャン。

2人は出会いこそいいものではなかったが、お互いに夢を追いかけるものとして惹かれあう。

夢見るバカ者たちが集まるこの街で、ミアとセバスチャンも現実と夢とに向き合っていく。

さて、今作はミュージカル映画なのですが、ガッチガチのミュージカルといった印象は実は薄いものだと思います。

ミュージカルというと、ふとした瞬間に台詞が歌になりみんなが歌って踊り出すのですが、そういう入り方は実はかなり少ないです。

むしろ、役柄もあってか演奏したり一緒に歌を歌うような印象でした。私は個人的にミュージカルというのが苦手な人間なのですが、この作品は不思議とその気のそれる感じがなかったです。むしろ歌や踊りをすごく楽しんだ方ですね。

そのミュージカルシーンですけども、オープニングから最高潮に盛り上げていきます。

デジタル編集ありとは思いますが、ワンショット風に撮られる最初のナンバー、”Another Day of Sun”が炸裂!圧倒的な周到さに撮影、自然光と空気から出るLAという街への、この映画への導入です。ここでグッと持っていかれますね。

その他にも原色がたくさん、カラフルなもの。それからLAのマジックアワーを最大限に活かした美しい夜景など。プラネタリウム含めて、画がとにかく美しいですね。

ミュージックナンバーも印象深くかつ、繰り返しの旋律の使い方も素晴らしい物でした。

さて、今作はメインの人物である2人以外の人物がほとんど出てきません。この男女の物語にすごく集中しているんです。

ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの2人は何度か映画でカップルを演じてきたのですが、やはり今現在この映画の歴史の中で、ひときわ輝きピッタリな組み合わせではないでしょうか?

映画の中でも出てくる、ハンフリー・ボガート。彼とローレン・バコールのように、すごく綺麗にかみ合うような、スクリーン上ですごく見事なカップル。

もちろん2人の演技のアンサンブルも素晴らしいものですね。エマ・ストーンのオーディションでの演技、演技をするという演技というもう私の大好物ですが、本当に拍手。エマすごい!

で、ゴズリングの方も実は胸の裂けそうになるシーンがありまして。あの口論シーンですよ。彼は一切ミアの眼を見ずに、もう自分に言い訳しているように喋るのです。真っ直ぐと夢を追うミアのことを、セブは見れないんですね。

そこではずっと音楽に満ちていた今作で、無音になりその後は不快なアラーム音が鳴り響きます。

あの耳に嫌な感じ、2人の関係の壊れゆくさまを見る観客の気持ちがそのまま音になったようでした。

2人には美しい旋律が与えられていて、この作品ではそのメロディこそが観客にも共有され、この2人の出会いから幸せな日々まですべてを感じさせるものになっていきます。

この音楽はただの旋律ではなくて、それを聴いた人聴いた時そして歴史変化まで全て含んでいる。だからこそ最後にセブが弾く時にはすごい重みをもっているんですね。

チャゼル監督の作品には「セッション」で特徴的に示されるように、少し危ない人が出てきますね。セブも古き良きジャズのみを正しいものとして、妄信しています。

その上で成功することとは何か、夢を追う事とは何かをけっこう厳しい目で見て伝えてきます。

この作品ではセブとミアがお互いに夢見るものとして、いろいろと影響し合うので、その歪みなんかはそこまで感じない作りになっているかと。

ラストの事を考えても、お気楽なハッピーエンドとか安易なサクセスストーリーとは言えませんが、それでも前作に比べれば、夢を追いかけることに関して明るい希望を見せていると思えます。

この映画はロサンゼルスを舞台に、そしてハリウッドを舞台に。

その場所の特色をとにかく推し出しています。

今作にはハリウッドの往年の名作が出ますし、ミュージカル黄金期の作品のオマージュなどもたくさんあります。チャゼル監督はこのロサンゼルスとハリウッドという場所への愛、そしてそこが持つ映画の歴史と映画そのものへの愛をこの作品に詰め込んでいます。

一番本質的にこの作品を表すのは、ミアがオーディションで披露する歌。

「夢見るバカたちに。」という歌ですけども、全ては夢ですよね。

何度も出るセット、サウンドステージなどの映画の裏側。夢を作り売るのがハリウッドです。そしてそのハリウッドには夢を持つものが集まる。

タイトルの通り、そしてセブとミアが常に心に抱えているように、そういった夢見るものは現実から逃げる逃避者で、愚か者なのかもしれません。それでもチャゼル監督は夢を見ることを肯定していると感じました。

時代性が極力取り去られたこの作品は、普遍性を持っていて、いつどの時にもいる、夢を持つ人を応援しています。それでいてしっかりと厳しい現実やぶつかるであろう障壁を逃げずに見せつけ、最後には”Made in Hollywood”と、この作品すら作り話であるという念押しまで。

しかし、それこそがハリウッドの、映画の役目でしょう。

100年以上に渡ってこの街が、スタジオが、映画が人々に与えてきたもの。それは夢です。まずそれを称えていると思います。

そしてチャゼル監督は、ハリウッドという夢の街を題材に、夢を持ち抱えなんなら砕け散った者へのメッセージを残したと思います。いつしかセブの言うように、途中で現実を見た者たち。多くの、私含めた皆さんです。

最後にセブは、自分の店を持つことこそできましたが、想いを寄せていたミアとの人生は得られませんでした。こういう人生だったら・・・という夢が最後に流れるあと、去り際に目を合わせる二人。

劇中のセブの演奏が、そのままスコアだったこの作品で唯一、ラストシーンは、セブが引き始めようとする音楽と、かかっているスコアのリズムが違います。

もうお別れなのです。しかし、セブは自分のリズムすなわち人生を歩んでいます。

みんなどこかで何かをあきらめたでしょう。それでも、自分の音楽は確実に流れているのです。

長く書いてしまいましたが、楽しい綺麗な映画ですよ。音楽は今も頭の中で流れ、シーンが浮かんできます。とにかくおすすめ。是非劇場で夢を見てきてほしい作品でした。

ということで終わります。それでは、また。

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