「チャンピオン」(1949)

  • 監督:マーク・ロブソン
  • 脚本:カール・フォアマン
  • 原作:リング・ラードナー 「チャンピオン」
  • 製作:スタンリー・クレイマー
  • 音楽:ディミトリ・ティオムキン
  • 撮影:フランツ・プラナー
  • 編集:ハリー・W・ガーズタッド
  • 出演:カーク・ダグラス、マリリン・マックスウェル、アーサー・ケネディ、ポール・スチュワート 他

リング・ラードナーによる同名小説の映画化で、カール・フォアマンが脚色。スタンリー・クレイマーの製作下で、若きカーク・ダグラスの演技も光る作品。スポーツでありながら、退廃的なノワールの雰囲気も持つものです。

アカデミー賞では多数のノミネートを果たし、編集賞を受賞しました。

カークの肉体とキレっぷりとか、激しく邁進する姿が印象的です。

今や人気のボクサーであるミッジ。光り輝くリングに上る彼には、大喝采が浴びせられる。

しかしこの光を掴むまでには、様々な物語があった。

ミッジは兄と放浪する貧乏な男だった。あるとき偶然ヒッチハイクで出会った男がボクサーで、会場に向かうところだった。

しかしその男が試合に出れなくなり、急遽ミッジが代役で試合をすることに。素人だがケンカ癖もあってかガッツを見せたミッジ。しかし気の荒さもあって、ボクシングビジネスには向いていなかった。

カーク・ダグラスをセンターに置いた作品で、彼の狂った感じが非常に楽しめます。

若きカークの目力。一点を真っ直ぐと見据えるそのまなざしに、鍛え上げられた肉体。試合、それ以前に彼が構えているだけでなにか強烈な感覚です。

この強さがまたミッジというキャラの造形に深みを与えているかと。もともとすぐにカッとなる男ですが、常に考えているのは自分の事です。

起こる理由も自分の事、自分の肖像画を描かせたり、付き合う相手もその時自分にとって良いかで判断する。

ダイニングでできた妻も、ボクシング界でのトレーナーも、また新しく付き合う彼女も。みんな自分を満足させるため。

というのも、彼は自分一人で戦っていると思っているからです。自分が強く、すべて努力してきた。彼の自己承認欲求や尊敬に対するこだわりはすさまじく、とにかく命令、指図を受け付けない。放浪もその心の表れでしょう。

しかし、一人で生きる人間がいないように、ミッジも一人で戦っているわけではないのです。八百長の約束を破ったとき、またみんなに見放されたとき、本当に一人になったとき彼は負ける。

彼に振り回されてきた兄とアンナはお互いに自分の人生を始めようとしますね。人を想うことのできる人間こそ、幸せになるんです。

人とふれあって変わることのできなかった一匹狼は、自分一人きりだとおもうまま、リングに沈んでいきます。狭い空間に自分だけがいて、相手とは拳で向き合う。そんな世界にしかミッジは生きることができなかったんでしょう。

さくっと感想を書きましたが、カークの画だけでもしびれるような作品です。

周りを一切見ずに成り上がり果ては堕ちていく。後味の少し苦めなスポーツ映画です。

それでは終わりです。また。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です