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「ブラック・スキャンダル」”Black Mass”(2015)

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映画レビュー
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「ブラック・スキャンダル」(2015)

  • 監督:スコット・クーパー
  • 脚本:ジェズ・バターワース、マーク・マルーク
  • 原作:ディック・レイア、ジェラード・オニール『Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob』
  • 製作:スコット・クーパー、ジョン・レッシャー、ブライアン・オリバー、パトリック・マコーミック、タイラー・トンプソン
  • 製作総指揮:ブレット・ラトナー、ジェームズ・パッカー、レイ・マルーク、ピーター・マルーク、クリストファー・ウッドロウ、ブレット・グランスタッフ、ゲイリー・グランスタッフ、コンプトン・ロス、フィル・ハント
  • 音楽:ジャンキーXL
  • 撮影:マサノブ・タカヤナギ
  • 編集:デヴィッド・ローゼンブルーム
  • 出演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ、ケビン・ベーコン、ダコタ・ジョンソン、ピーター・サースガード 他

先月末公開組の中でも気になっていた作品。というか2015年に今作が批評家間で試写されたとき、ジョニー・デップがフィジカルアクトに戻ってきたという声が多く、自分としてはこれは来たぞ!という感じでした。

予告を見て、やはりこれはジョニー・デップが彼の本来の演技をしているなと思いました。もちろん、映画を観て、しゃべらない方が素晴らしいという確信に。

いちおうR-15指定、ギャングものでありますから暴力はまああります。しかしそのものよりも、人物がそこにいるだけでの恐怖の方が重苦しかったです。

なかなか行きやすいジャンルではないんですが、劇場には多くの人が足を運んでいました。

ボストン南部を拠点とする犯罪組織のリーダー、ジェームズ・”ホワイティ”・バルジャー。

弟でマサチューセッツ州上院議員のウィリアムとは正反対の世界に生きる彼は、70年代後半ボストン北部で勢力を広げてきたイタリアン・マフィアとの抗争に直面していた。

そんな折、弟の親友でありまたジェームズにとっても幼馴染であるジョン・コノリーがボストンへと舞い戻る。しかし、ジョンは今や犯罪組織を駆逐するFBIの捜査官になっていた。

そのジョンはジェームズと話がしたいといい、そこで思いがけぬ事を持ちかける。

北部のマフィアの情報をFBIに渡す代わりに、南部には目をつぶり免責するというのだ。

ここに全米史に残る禁断の協定が始まった。

ボストン、幼馴染の3人、そしてギャング・・・なんだか「ミスティック・リバー」(2003)のようですね。内容的には全然違いますが。

さて、この映画最大の見どころはなんといってもジョニー・デップ。去年はモルデカイという大事故を起こした彼で、最近はセルフパロディ的な道化(見た目としても)ばかり演じてきた彼が、久々に戻ってきたあまり語らない演技。

もともとティム・バートン監督の「シザーハンズ」(1990)でも、今作とちょい似た部分もあるアル・パチーノと共演したマイク・ニューウェル監督の「フェイク」(1997)でも、あまりしゃべらずにそのフィジカルな部分で繊細な演技をする人でした。

今回はそのパワーが炸裂。

観た感じあのデップとは思えぬその形相で、スクリーンを見る私の心を氷の指でわしづかみ。ほんとに、出てくるだけで、画面にいるだけで怖いんですw

しょっぱなから画面にかなりの接写で出てくるジェームズ(ジミー)。ガラス玉のような青い目で、小さくゆっくりとしゃべる。しかしその話し方や表情と仕草に感情が見て取れます。素晴らしい。

予告でも度肝を抜いてきた、”Just saying”(ただ言っただけ)のシーンは強烈でした。「グッド・フェローズ」(1990)の”Funny How?”のような、恐ろしさです。

3人の関係というような宣伝ではありますが、実質はジミーとジョンがメインです。

ジョン・コノリーを演じるジョエルも、いい味出してますね。彼ってちょっと頼りない感じとかも出てるので、初めの自信なさそうなところもあってますし、後半になってから明らかに調子こいてる歩き方とかもおもしろい。

舞い上がるアホ感がもうステキw あと、実際のところはわからないんですが、ジョン・コノリーはぶっちゃけジミーの熱心なファンじゃないかな?ジミー大好きすぎるでしょ。

その他に、今回は撮影を私は楽しみました。撮影はマサノブ・タカヤナギ、日本人の方で、「ウォーリアー」(2011)とか「THE GREY 凍える太陽」(2012)も担当。今作のスコット・クーパーと「ファーナス」(2013)でも組んでいます。作品に合わせて効果的な手法を取る感じです。

今回はワイドを活かしたシーンが多く、FBIの廊下とかではかなり横長に画面を構成しています。

また奥行きも今回はいろいろなところで観れまして、室内で誰がどのくらい奥にいるか、序列や物事の深みを見せていますし、窓の向こうに人物を捕えつつ、手前での会話を撮ったりとおもしろい。

この映画の作りがドキュメンタリックだからでしょうか?ターニングポイントというか、何か大事な進展がある部分では、真上からのショットを使っています。

観客はこの歴史的な事件を記録としてみるので、なるほど俯瞰ショットというのは良い演出なのかもと感じました。

メインストリームにはジミーを置き、デップの名演が光る作品。

ただし、事実を元にしたものであるが故の落ち着きというものは仕方ない感じです。派手に盛り上がるとかはできないのでね。

あったことをうまく演出し、人を描写しなければなりません。その点ではとても良いと思いますが、やはりその人物描写ですら、扱うのが実在の犯罪者ということでかなり奥深くまでは見せていないように思えました。

デップが怖い、失うことで何か壊れていく点。ジェルの憧れや間違った正義。それ以外の部分で、各人物に関してはちょっと描写不足かな?カンバーバッチの位置とかね。

どうせなら2人に振り切っても良かったかも?

それでもデップが言葉でない部分、フィジカルな繊細さを見せてくれるのでおススメ。あと、最後の顛末をただの文章だけでなく、しっかり映像として見せてくれるのも良かったです。

そんなところでレビューはおしまい。エンディングの音楽と映像、画像が重々しく残る映画でした。

それでは、また。

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