「さざなみ」(2015)
- 監督:アンドリュー・ヘイ
- 脚本:アンドリュー・ヘイ
- 原作:デビッド・コンスタンティン
- 制作:トリスタン・ゴリハー
- 製作総指揮:クリストファー・コリンズ、リジー・フランク、テッサ・ロス、サム・ラベンダー、リチャード・ホームズ、ビンセント・ガデル
- 撮影:ロル・クローリー
- 編集:ジョナサン・アルバーツ
- 美術:サラ・フィンレイ
- 衣装:スージー・ハーマン
- 出演:シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、ジェラルディン・ジェームズ、ドリー・ウェルズ 他
さて、観るのが遅くなりましたが観ました”45 years”。「さざなみ」ってかなり意地悪な邦題ですよねw津波ですからね内容的には。
監督は「ウィークエンド」(2011)のアンドリュー・ヘイです。
まあ今作は熟年夫婦に降りかかるある出来事とその余波を映す作品なんですが、非常に普遍的な人間の積み重ねを描いておりました。
ベルリン国際映画祭では男優と女優W受賞、シャーロット・ランプリングはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。
ケイトとジェフは長年連れ添う熟年夫婦。
結婚45周年のお祝いをしようと、パーティの準備をしていたところに、夫のジェフに1通の手紙が届く。
それは50年前にスイスの氷山で行方不明になった、かつての恋人の遺体が発見されたというものだった。
この瞬間からジェフは過去の愛を思い出し、そしてケイトはその女性への嫉妬とジェフへの懐疑心を募らせていくようになる。
まあ主演二人の演技は確かですよ。これ目当てで観ても全然満足です。
お互い静かなんですよね。なのにまあすごい叫びが聞こえてきます。
ジェ演じるトム・コートネイのあの聞き返しとどもりが非常に繊細な、男のごまかしを表現してまして、そのもたつきが余計にケイトをイラつかせ疑う方向へと向かせてしまうんです。
下手に正直になって台無しにしたりね。もうダメw
ケイトは直接の問いただしを避けようとするんですけど、そのもう聞いちゃうか、でも聞くことで返ってくるかもしれない答えが怖いって感覚。
それをランプリングが声に出さずによく伝えています。
気丈に振る舞おうとしているのが見えてしまって逆に弱っているのがわかったり、この辺の両者の掛け合いがとてもいいですね。
私が好きなのは、ロル・クローリーの撮影。まあ酷い(ほめ言葉)。
とにかく残酷なまでにこの夫婦に入った亀裂を画面構成にぶち込んできているんですよ。
初めは仲良く並んで同一画面に収まっていたケイトとジェフも、手紙の件以来は順番に画面に入っては交代で出ていってしまったり、どちらかがかぶったり、声だけだったり。
またピントが片方にしか会わなかったり、撮影の仕方だけで二人の関係性を見せていましたね。
これがまたそこまでするか!ってくらい酷な映し方で。
ケイトが一人寂しくある姿を、遠くから撮影するところではかわいそうで気が滅入りそうでした。
そのほかにも結構ケイトには意地悪な、若さの波とかラジオの音楽とかの要素もあり、ケイトを追い詰めていく様が素晴らしいです。
結局夫がまだその恋人を愛していると分かり、しかもそれは今再び燃え上がったのではなくずっと心には残っていたと知るんですね。
それでその過去と対峙しても勝てないと悟ってしまう。
ジェフにとってその恋人は人生の積み重ねの一つなんですから、それを抜き取ってしまうことはできないんです。抜けば上に重ねられてきたものが崩壊してしまう。
しかしケイトにとっては逆で、今回のこの手紙から知った事実によって、彼女の人生である積み重ね、ジェフとの結婚生活と愛が崩壊へと向かってしまうんです。
あの時の瞬間。ジェフの中では絶えず存在しこだましていたものが、ケイトに共有された時、それが今度はケイトの中で一生響き渡ることになりました。
それはぬぐえないもので、これまでの人生すべてに打ち付けるんでしょう。
人は純粋に愛をもらい、あげることはできないものです。やはりそれぞれに違う時間の愛があったはず。それを認めつつも、それがもたらす大きな波をこの夫婦にぶつけた作品。
最後に涙ながらに愛を伝えるジェフですが、ケイトは泣かず微妙な顔をしています。そして二人だけのショットは得られず、席を立つ人でジェフが隠れてしまう。それがすべてを伝えていました。
みなさん結婚の前にはすべてを話しておきましょう。それでも尚人生を歩み限り、この波はいつやってくるのかわからないですがね・・・
結構怖い映画かなとも思いました。間違いなく素晴らしい作品ですので観てみてください。そんなところで終わります。それでは~
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