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「ゴヤの名画と優しい泥棒」”The Duke”(2021)

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「ゴヤの名画と優しい泥棒」(2021)

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作品概要

  • 監督:ロジャー・ミッシェル
  • 脚本:リチャード・ビーン、クライヴ・コールマン
  • 製作:ニッキー・ベンサム
  • 製作総指揮:キャメロン・マクラッケン、ジェニー・ボーガーズ、アンドレア・スカルソ、ヒューゴ・ヘッペル、ピーター・スカーフ、クリストファー・バントン
  • 音楽:ジョージ・フェントン
  • 撮影:マイク・エリー
  • 編集:クリスティーナ・ヘザーリントン
  • 出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、

「ノッティングヒルの恋人」などで知られるイギリスのロバート・ミッシェル監督が、1961年におきたゴヤの名画盗難事件と、その犯人である老人ケンプトン・バントンを描くコメディドラマ。

ケンプトンを演じるのは「パディントン」シリーズなどのジム・ブロードベント、また「グッドライアー 偽りのゲーム」などの名優ヘレン・ミレンが妻を演じます。

また二人の息子役には「ダンケルク」のフィン・ホワイトヘッド、ケンプトンの弁護士を「オフィシャル・シークレット」などのマシュー・グッドが演じています。

今作は2021年に亡くなったロジャー・ミッシェル監督の遺作になっております。

イギリスの批評関連で名前を知り、また映画館での予告を見て少し興味があった作品。

ちょうど時間的にもあったため、公開週末の朝の回で早速見てきました。

朝一だったこともあってかそこまで人は多くなく、また客層としても年齢高めでしたが、ユーモアあふれる作品にはふと笑いも起きて穏やかで楽しい鑑賞体験になりました。

「ゴヤの名画と優しい泥棒」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。

1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。

この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。

孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。

彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。

しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。

当時、イギリス中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは−!?

「ゴヤの名画と優しい泥棒」公式サイトより抜粋

感想/レビュー

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誇り高き魂を抱えた、柔和でユーモア混じる暖かさ

ロジャー・ミッシェル監督が紡ぎだすのは、なんとも暖かく軽やかで楽しさに満ちた男のドラマ。

そこには素晴らしい俳優がおり、くすっと笑えるトーンの中に、確かに毅然とした良心や決意が見て取れます。

顛末の楽しさについていきながらも、クライマックスには確かに心打たれ感動する。

労働者、一般市民というクラスから生まれてくる市井のヒーロー。そして正しいことの褪せることのない輝きに触れる映画体験となりました。

こういった義賊的な人の話はよくあるのかもしれませんが、作品トーンのいい意味での軽さとかかわいらしさというところ、また今作は楽しい映画であるというスタイルを貫いたことですごく見やすいものになっています。

ケンプトン・バントンの起こした騒動から提起される社会問題として、孤立していく老人や人々、格差、人種差別など幅広いものがありますが、しかし今作は観客に楽しんでもらおうという根底のスタンスがありますので、最後まで笑ってみていました。

なんとなく同じくイギリス、さらにジム・ブロードベント出演の「パディントン」の精神的な共通点を持っているような気がします。

夫婦を演じる俳優陣の妙

ケンプトンを演じるブロードベント、そして妻ドロシーを演じるヘレン・ミレン。キャストの妙も相まっています。

盗んだ絵画についてバレるのかバレないのかというのが、警察ではなくドロシーにバレないようにコメディチックになっていく。

ケンプトンはジム・ブロードベントが独特な存在感や風変わりさ、嫌ではない頑固さをもってすごく不完全な正義の人として演じています。

はっきり言ってダメな夫だし、決して社会的には立派な人間ではないのですが、やはりパン工場で同僚に対する人種差別に黙って座っていられないなど正しいことのためなら迷わないところには惹かれてしまいます。

さらにのちに分かる仕掛けから、父としての愛の深さにもぐっと来てしまいますね。

ずっと娘の死について自責の念を抱え、戯曲に込めることで現実を処理してきた。そして誰も語らずに忘れ去られるよりはと物語として残そうとした。

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そしてヘレン・ミレンはなんとも美しい。

スクリーンに初めて登場した時からその爪に黒ずみがたまっているドロシーですが、何に関しても徹底した女性で規律があり実際のバントン家の大黒柱。

楽観主義なケンプトンに対してどこまでも硬く厳しく。

椅子に座って編み物しているときに、目も合わせず見もせずに夫に「NO」とお叱りの姿勢を向けてしまう。

言わず見ずなのにドロシーのイライラを全身とたたずまいと所作で表現して存在感で演技するヘレン・ミレン流石です。

それでも夫婦が同フレーム内に収まっていることが、ここでもキッチンでも多いため決して破局的な意味合いはないのは良い設計です。

しかしそんなドロシーについても娘の喪失という部分では夫とともに再生のドラマがありますね。

今回の泥棒事件についてはそのための起爆剤的な意味合いも見て取れた気がします。

今の時代に必要とされる、普遍のヒーロー

まっすぐな構成の中にちょっとしたひねりも加わり、最後はまさに体制VS個人の場ともいえる裁判に。

ただしOPで裁判を取り仕切っていた女性に微笑みがあったことからもわかるように、真実の追求というよりも裁判はケンプトン・バントンを通じた人のあるべき姿の抗議であります。

常に隣人を大切に。他人のために親切にしていくこと。

間違っていることには間違っていると、声高に叫んでいくケンプトンの姿はなんとも映画のヒーロー的です。

類まれな才能とか裕福な背景など持たず、市井の人として存在する英雄。まさに語られるべき精神の持ち主であるケンプトン・バントン。

分断や格差、利己的な行動がどうしてもみえてしまう今の時代にこそ再度振り返ってみる必要があるのでしょう。

アプローチこそ違いますが、イギリスの貧しき個人に注目するのって、ケン・ローチとか含めていい感じの作品が多いのでしょうか。

個人的には大傑作だとかは言えなくともすごく好きで、良いヒーローに出会えたなと感じる一本でした。

気になる人は是非映画館へ観に行ってください。

今回は短めの感想ですが以上。

最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。

ではまた。

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