「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2016)
作品解説
- 監督:アシュリング・ウォルシュ
- 脚本:シェリー・ホワイト
- 製作:ボブ・クーパー、メアリー・ヤング・レッキー、メアリー・セクストン、スーザン・ミュラン
- 製作総指揮:ヘザー・ホールデイン、フサイン・アマルシ、マーク・ロバーツ、シェルドン・ラビノビッツ、ロス・ジェイコブソン、エド・リーシュ、タイラー・ミッチェル、アラン・モロニー、ジョナサン・ホーガン
- 音楽:マイケル・ティミンズ
- 撮影:ガイ・ゴッドフリー
- 編集:スティーブン・オコンネル
- 衣装:トリーシャ・バッカー
- 美術:ジョン・ハンド
- 出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク、カリ・マチェット、ガブリエル・ローズ 他
実在のカナダの画家、モード・ルイスの半生をアシュリング・ウォルシュ監督が映画化。
主演は「ブルージャスミン」(2013)や「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)のサリー・ホーキンス。またモードの夫を「マグニフィセント・セブン」(2017)などのイーサン・ホークが演じております。
公開時にはちょっと小規模かつオスカー関連が推していた時期だったので、地味だったかもしれません。
公開日に観に行きましたけども、年齢層高めでしたね。お年寄りが多かった。ちょっと笑ってしまう部分があり、また涙される方もいました。
感想レビュー/考察
色々な伝記映画を最近は劇場で観るようになって気がしますが、今作はかなりオーソドックスと言うか、絞り込んだ対象と描き方に関しては、普通と言う印象でした。
今回はモード・ルイスの生涯として画を描き始める前から結婚して夫婦となって歳をとるまでの長い期間を映画化しています。
しかしそれだけ時間を変えていても、私にはモードの画を描くことへの衝動や根本的な理由、また彼女の世界の切り取り方や彼女にとっての画の意味が十分に伝わってはきませんでした。
そもそも、モードが家じゅうに画を描きはじめるきっかけのシーンがけっこう曖昧な気がします。エベレットに叩かれたことが始まりのように見えますけども、実際どうなんでしょうか?
あの独特のスタイルの生まれ方とか、今作はモード・ルイスにフォーカスしながらも、彼女の画家としての伝記映画とみるにはちょっと物足りないかなと感じました。
アーティストとしての考えを鋭く切り出すという点では、ちょうど今年初めに公開された、「ジャコメッティ 最後の肖像」(2017)のような切れ味は無かったと思います。
ちょっと伝記映画としては厳しめのことを言いましたけども、この作品は好きです。
と言うのも、やはりサリー・ホーキンスがとても素晴らしいからです。
公開時には「シェイプ・オブ・ウォーター」もあり、本当に彼女の演技の繊細さとか、彼女の人物を確実に自分のものにしてしまうところに感服しました。
モード・ルイス本人だと思えるのですよ。
リウマチの動きとかに限らず、なんというか所作が細やかで、どことなく怯えているようでしかし芯のある女性と言うのをとてもよく表現していました。
サリー・ホーキンスの恥ずかしそうな笑顔や、悲惨と言っていい境遇に何かに幸せを見出すような表情がとても好きです。
彼女がこの作品を引っ張っていて、彼女を観ていることが大変楽しい。
また、エヴェレットを演じたイーサン・ホークは、相変わらず捨て犬感があり最高w
彼の一人で一応生きれるけど、やはり保護してあげたくなるような肩の落とし方や目つきなどは健在でした。
今作は、モード・ルイスの物語と言うよりも、モードとエヴェレット夫婦のお話に思います。
2人の関係性を、そして外の世界との関係をよく表している、玄関扉とガラス窓。最初はガラス越し、次第にそれが取り払われ、背中合わせから向き合って荷車に乗ったりと、次第に親密になっていく部分を、彼らにしゃべらせずに示していく部分は好きです。
また、荒涼として人里離れた家ながらも、自ら綺麗なものをみつけ、足していく部分も。
カンバスとなる窓には、いつもエヴェレットがいて、なにやら作業をしているのですが、彼を明るくしてあげるようにお花の画を足すとか、素敵ですよね。
世界から浮いてしまった二人が身を寄せ合って暮らす。2人は互いがいればよくて、自分たちの世界があればいい。だからいかに絵が売れようと、世界に迎合はしなかったんですね。
その生き方と言う点で、実在の人物にふれる良さがあります。
全体には普通の伝記映画な感じで、アーティストを知るというよりも、ある女性の夫婦生活の話かな?
しかしサリー・ホーキンスとイーサン・ホークの演技がとても堪能できるし、しっかりリードしていますので、演技目当てでも鑑賞をおすすめします。かわいい画が観れるのもおススメ。
感想はこの辺でおしまいです。それでは、また~
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