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「幸せなひとりぼっち」”En man som heter Ove” aka “A Man Called Ove”(2015)

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映画レビュー
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「幸せなひとりぼっち」(2015)

  • 監督:ハンネス・ホルム
  • 脚本:ハンネス・ホルム
  • 原作:フレドリック・バックマン 「幸せなひとりぼっち」
  • 製作:ニクラス・ヴィクストレーム・ニカストロ、アニカ・ベランダ―
  • 音楽:グーテ・ストラース
  • 撮影:ヨーラン・ハルバーグ
  • 編集:フレドリク・モルヘデン
  • 出演:ロルフ・ラスゴード、イーダ・エングヴォル、バハール・パルス 他

フレドリック・バックマンによる同名小説を、ハンネス・ホルム監督が映画化。

主演にはロルフ・ラスゴード。スウェーデンでは大ヒットを記録したもので、来年のアカデミーの外国語賞レースも期待なのかな?

ハンネス監督作は初めてでした。また、小説も未読です。コラムとかインタビュー読むと、かなり変えている部分があるようですね。公開2週目でしたがかなり満員状態で、笑いもたっぷり、涙もたっぷり、良い映画体験でしたね。

最愛の妻に先立たれてしまい、孤独な日々を過ごす老人オーヴェ。

偏屈でルールに厳しく、近隣住民からも変人扱いされた爺さんである。オーヴェはこの愚か者どもしかすまない世界に愛想が尽き、妻のいる世界へ逝くことを決意する。

のだが、彼が命を絶とうとするたびに、邪魔が入る。首をつろうにも、引っ越してきた隣人のへたくそ運転が目に余り、電車に飛び込もうにも目の前で男が気絶し助けるハメに。

面倒ばかりの周囲にうんざりしつつ、オーヴェは死ぬ前に人生を振り返る。

今作では宣伝される主題と本質が若干誤解されるかもしれないですね。私としては嬉しい誤算であったのですが。今作は単に頑固ジジイが周囲と仲良くなる感動話ではないです。

突き詰めて愛と理解の物語でありますよ。

まあそれは後でまた言いますので、まずは今作の画面上の楽しさを。

今作はとにかくい色の使い方が素敵でしたね。オーヴェに必ず身につけさせているブルー。彼がたびたび見上げる青空。父の作業着でもある色、父から受け継いだ愛するサーブ。最愛の女性ソーニャともブルーを共有していますね。

試験に受かったオーヴェがソーニャと抱き合う瞬間にもう見事にガッチリ合う両者の服のブルー。実際結婚して2人は1つになるわけです。

ソーニャの靴、口紅などの鮮やかな赤も、オーヴェの人生に加わった美しさとして感動的です。

オーヴェが親しくなっていく隣人たち。彼らのとの距離や関係も、このブルーを使って上手く表現されていますね。

それ故に、ブルーを持たない白シャツどもが完全なる乖離、敵として印象強くなります。

彼は自分のカラーを持ち、一貫している。そう、この映画は頑固なじいさんが変わっていき、周り打ち解けるような陳腐な物語ではないのです。

彼は変わらない、全編通して正直で真面目。バカが付くほどに。

回想される青年期のオーヴェ、戻ってくる現在のオーヴェ。何も変わっていないのです。

変わってしまったのは周囲でした。彼に何かを教えてくれる人はもういない。愛をくれた父やソーニャはいない。主義を理解し共に真っ直ぐ正しくあろうとした友人も、倒れてしまった。

依り代を失ったオーヴェが抱えるのは、やはりこの世界への失望と無力感です。

事実だけ並べればかなり暗いところが目立つ物語です。母を幼くして失い、父も事故で失い。大切な家を守ろうとしても、白シャツに奪われてしまった。

子供を失いそして最愛の妻も失う。オーヴェの人生ってホント悲惨と言えますからね。

ただ、今作はコメディとして笑いを絶やさないのです。騒ぎや動きに面白さは無くとも、今作はブラックなユーモアが満載です。

首吊り用のロープが切れてクレーム出したり、サーブへの尋常じゃないこだわり、友人宅でのシーンや猫の引き取りなどちょっぴりキツイ笑いがちりばめられていて、オーヴェの状況に対しどこか楽に観ていられますね。

そのおかしさの中にも、オーヴェの人としてのどうしようもない優しさが根底に置かれているので、そこに微笑んでしまいます。トゲだらけなのに、ホントにお人よし。

ロルフが見せるオーヴェは、ふて腐れと不機嫌を出しつつも嫌悪感を感じさせない。

なんだかんだ人のために動いてしまい、そして人が傷付いたり虐げられたりが許せないオーヴェ。ただ周りがそれをわかっていなかった。

これ以上傷付かないように自らトゲトゲを纏って歩くオーヴェですが、彼のカラーは変わらない。

なんだんとオーヴェという男が理解されていき、彼が理解されていく様は涙を誘うような優しさがありますね。

おデブも、ゲイの子も、猫も。オーヴェを知ってついて回る。

回想を重ねれば重ねるほど、観客もオーヴェに心を寄せていくでしょう。変わらないでいてほしいと思いました。あの小さな一角。あそこにはオーヴェが必要なんです。

オーヴェがみんなの輪に入るのではなく、みんながオーヴェに従うのでもなく。ただ彼に触れて正しいことをしたくて。白シャツどもにギャフント言わせようと並び立つ。

オーヴェはブルーでなく、隣人やその子供たちと調和した色合いの服を着ますね。

オーヴェの最後に関しては、最初から彼のゴールだったので納得です。

別に彼の死に泣きはしませんでした。それよりも彼の愛の物語に心動かされ、オーヴェというバカ正直ものがみんなに理解されて、何かその心意気を受け継いだような気がしてウルッときましたね。

ハンネス・ホルム監督はありきたりになりかねないジジイ物語を、視覚的に巧みに、また本質的に愛を語り見事に仕上げています。

ロルフの演技には笑わされるし、泣かされるし、オーヴェという男を、その真っ直ぐさをどこか欲してしまうような作品でした。

電車に惹かれかける少年オーヴェとか、青年オーヴェがトイレにいながらそのバスが横転する画とか、びっくりドキドキする画もありましたね。個人的には好きな作品でした。

というところでおしまいです。今年はあと何本くらい観れるかな・・・?それでは~

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