「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015)

  • 監督:アダム・マッケイ
  • 脚本:チャールズ・ランドルフ、アダム・マッケイ
  • 原作:マイケル・ルイス 「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」
  • 制作:アーノン・ミルチャン、デデ・ガートナー、ブラッド・ピット、ジェレミー・クライナー
  • 音楽:ニコラス・ブリテル
  • 撮影:バリー・アクロイド
  • 編集:ハンク・コーウィン
  • 出演:クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、スティーヴ・カレル、ブラッド・ピット 他

歴史的大事件でありアメリカ失墜の決め手でもあった金融危機。

それに関するドラマで、「マネーボール」の原作者でもあるマイケル・ルイスの著作をもとに、アダム・マッケイが脚色を加えて映画化。あ、ブラッド・ピットは再びのタッグになるわけか。

えーと、金融ものってのは意外と地味目だったり難しかったりなんですが、今回は顔も知れてる俳優陣にコメディというのもあって観やすさはありますよ。

アカデミー賞には脚色賞を獲得。脚色の面で多くのノミネート、受賞がありますね。

人は結構入ってましたし笑いも多くあったんですが、よくわからなかったなんて人もチラホラ。少なくとも常識レベルで金融危機の話や仕組みを知っているといいかも。

銀行家が退屈だったのは昔の話、アメリカにおける銀行は華々しい金の舞う業界だった。住宅価格は上昇し、住宅ローンの債権は商品化され大人気。

多くの銀行家が何千万、何億ドルという規模で取引され、「住宅ローンは安全で高利率」が共通認識だった。

個人投資家であり変人扱いを受けているマイケル・バーリは、そんな金融界で突飛な行動に出た。なんと住宅ローン債権の破綻を予想し、破綻時の保険という形の新たな金融商品を買い付ける。

周囲は完全にイカレていると思うが、世の中変人は他にもいるもの。その契約をおもしろく思った男がいた。

先にも少し書きましたが、金融危機を扱うものの中ではとても観やすい(観てて楽しい)。それが良いことかは別として、ブラックコメディな脚本で随所にとにかく笑いどころが多いです。

そもそも第4の壁を破ってこちらに話しかけてきたり、その中で映画と本、実際に起きたことの違い(脚色)をぼやいていたり。

彼らの言う通りまさに「専門的用語で煙に巻く」のが基本的な作りなのですが、随所で色々な人物が用語や構造説明を観客にしてくれます。ただ個人的にはその説明に出てくる人たちはあまり楽しくなかったり。

そこでしか出てこないし、それ以上にメインキャラが笑えるのでそっちのほうが魅力的だったです。

そう、メインキャラの魅力はとてもいいかと。それぞれが変人でありながら、みんな違った変わり者。共通するのはシステムが腐っていると思ってるところでしょうか。

マイケルは人と関わらないし、マークは超攻撃的、ジャレッドは支配的なのかな。そしてベンは世界が嫌い。あの人やたらと手を洗うし腸内洗浄するし。しかしそれでいて世界の破綻に少し憂いを覚えています。

宣伝ではまるで4人がチームのように奮闘するかのように聞こえますが、実際のところ(現実に考えれば当たり前ですが)各個人として動いているわけで、一切関わりあわなかったりしているのです。

そもそも立ち位置がかなり違っていて、なぜ空売りするかの動機も違います。混沌とした具合は、出てくる人物みんながある意味でイカレているのに合っていますね。

金融というかこの銀行のカオス具合は、少し過去のアメリカ住宅ローンについて見てみるとよくわかります。この作品内でも言われていますが、好景気らしい好景気でなく、腐ったシステムのせいで生まれた虚空でした。

格付けも機能せず、何の信用もない商品を大量に売りさばく。まさに詐欺の業界。

システムがおかしい中では、いかに正しい見解や予測をしても異常者扱い。

そのシステムを逆に利用してやろうという中に、途中でベンが言うようななんとも苦いものもこみ上げてきます。この賭けに勝つということは、何千万という人が職を失うことだ。

人の不幸に賭ける。なんとも不謹慎なことをしているんですが、それもあの格付け機関の役員とか、寄生虫証券マン、脳みそ空っぽ銀行家を見れば、まあ許せます。

大都会やウォール街の喧騒が多い中、途中の住宅調査や最後に遠目に映る町などの静寂が良いコントラストになり、虚無感とか疲れとかまたさびしさも感じました。

どれだけアメリカ住宅ローン債権界がおかしなことになっていたのかよく分かり、どんな時も勝者と敗者つまりはチャンスがあることも伝わってきます。

正直世の中に与えた影響としては笑い事ではないんですが、それでもブラックなユーモアに包んで史上最大の経済破綻を逆手に取るのは気持ちいいものでした。

パーティもせず、ただしんみりと勝ちを得る人物たちも、非常にいい余韻を与えてくれました。世界は終末へと向かうと思っていたら、本当にそうなってしまったのですね。

ちなみに・・・有名な話ですけども、銀行家のほとんどは転落・・・ではなく多大な退職金やらギリギリで証券を人に押し付けるように売ったので、超リッチ。

下層の人、庶民が負債を負ったわけでして、銀行家は悠々と金ももって去って行ったのです・・・クソ胸糞悪い!

ってことは、正義はなされなかった。だからこそ主人公たちの勝利はなにやら苦いのです。システムを変えることはかなわず、一般の人々がこの先の危機を知ることもない。

またこれは繰り返されかねないのです。

映画館でても、金融用語へのそして結末へのモヤモヤが残るのですよ。しかしそれでいいのかもしれません。そうしないと、世界中の人が危険をまた見過ごすでしょうし、このモヤモヤを持って銀行家どもと対峙していけばいい。

そんなわけで、確かな変人たちの素晴らしさに面白さを交えた本作。金融危機ものとしてはとても観やすいのでおススメです。

「マージン・コール」(2011)や「インサイド・ジョブ」(2010)も一緒に。それでは~

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