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「ホテル・エルロワイヤル」”Bad Times at the El Royale”(2018)

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bad-times-at-the-el-royale2018 映画レビュー
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「ホテル・エルロワイヤル」(2020)

  • 監督:ドリュー・ゴダード
  • 脚本:ドリュー・ゴダード
  • 製作:ドリュー・ゴダード、ジェレミー・ラーチャム
  • 製作総指揮:メアリー・マクラグレン
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 撮影:シェイマス・マクガーウェイ
  • 編集:リサ・ラセック
  • 出演:ジェフ・ブリッジス、シンシア・エリヴォ、ルイス・プルマン、ダコタ・ジョンソン、クリス・ヘムズワース、ケリー・スピーニー、ジョン・ハム 他

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「キャビン」(2011)のドリュー・ゴダード監督長編2作品目となるミステリークライム。あるさびれたホテルに集まったそれぞれの訳あり宿泊者たちが最悪の事態に突入していく様を描きます。

出演は「最後の追跡」などのジェフ・ブリッジス、「ロスト・マネー」のシシリア・エリヴォ。その他、ルイス・プルマン、ダコタ・ジョンソン、「キャビン」にも出演したた「マイティ・ソー」シリーズのクリス・ヘムズワースら。

ドリュー・ゴダード監督はいろいろと製作や脚本を手掛けてきましたが、監督は実に7年も空いてこれで2作品目なのですね。

とまあせっかくの監督新作だったのですが、実は劇場公開はされずにソフト/配信スルーという形になっていしまいました。

その後ちょっと放置して、結果としてやっと今回見ることになりました。今は配信でも見れると思います。

ちなみに本作、ちょい役で結構豪華な面々が見れます(お面のせいで顔も見えないこともあったりしますが)。なぜドラン監督がでてるのか面白いところです。

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1970年代初め、カリフォルニア州とネバダ州境にあるさびれたホテル”エルロワイヤル”。

そこに4人の宿泊客がやってくる。神父、黒人女性、セールスマン、そしてヒッピー風の若い女。

セールスマンは自分の部屋に入るなり、部屋中の盗聴器を引っ張り出し、そしてフロントバックヤードに忍び込むと、そこに各部屋をそれぞれ監視・盗撮できる施設設備を発見するのだった。

さらに、神父はなぜか床板を外しており、そしてヒッピー女は車から誘拐してきたと思われる拘束された少女を部屋に運び込んでいた。

それぞれが胸に思いを秘める中、事態は交錯し最悪の方向へと向かっていくことになる。

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あるホテルが舞台で、しかもみんな素性をいろいろと隠した訳ありの人間がある詰まるとなると、なんとなくタランティーノ監督の「ヘイトフル・エイト」(2015)を思い出しますね。そっちにもジェフ・ブリッジスが出ていることもありますし。

ただ今作はある一つの事件などを集約点にしているミステリーというわけではなく、登場人物たちそれぞれのドラマそれ自体は独立して展開されれうものになっています。

ですので、最終的に全員がある事柄にかかわっていてそれが明らかになるというタイプではなく、その点期待してみていくと肩透かしをくらうかもしれないですね。

ドリュー・ゴダード監督はむしろ、クライムミステリーのエンタメ性を保ちながらも、この非常に不安定なアメリカの特定の時代をフォーカスし、そこから現代の社会への風刺をこめていくことを狙っていると思います。

ミステリーとしては各人物のドラマが現行の事象と重なって回想によって語られていきます。回想事態が長すぎないということもありますが、目の前で進行していく事柄の引っ張り具合がちょうどいい気がします。

今まさにアクションが起こっているというよりも、そのあと、ここからどうなるのかで停止して回想に入っていくことが多いため、焦らしすぎず放置しすぎず。

そして大事なのは、それぞれがかかわっている事件そのものではなくて、そこに存在するアメリカ社会の闇でした。

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FBIの捜査官であった、ジョン・ハム演じる男。

電話口でのフーバーへの報告やのちにマイルズから語られることが、ケネディ絡みの政治スキャンダルとその隠ぺいであるとわかってきます。

はっきりと言及されていきますが、理想的かつ品行方正のような表に隠れ、行われてきた卑劣な行為。

政治家の危険な裏側や、疑わしき事案に対する徹底的な隠ぺいなどは、映画制作時の合衆国大統領を彷彿とさせます。

そしてその体制側から来た男が、冗談交じりにも繰り出していく最低人種差別発言。徹底的に被害者であり蔑まれてきたダリーンのドラマが切ないです。

まだまだ今なおアメリカでの黒人差別は続いていますが、ダリーンはそのうえでセクシャルハラスメントも受けていた。そしてリオの件で分かるように、彼女は選択をしているんですね。

そして同じく男により虐げられたのは、エミリーとロージー姉妹も同じです。彼女たちを囲っているのは、明らかにマンソンファミリーをモデルとしているであろう、クリス・ヘムズワース演じるビリー・リー。

ちょうど69年にはシャロン・テートの殺害事件があるのですが、ここはそうしたおかしな団体が、笑っている間に勢力を伸ばしそして凄惨な事件を起こすという歴史を見て取れます。

今なお、プラウド・ボーイズなどを見ると、アメリカの現状は変わっていないことに悲しくなりますね。

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さらにフロントマンであるマイルズ。

彼はそれこそ「ランボー」のように、戦争のために殺戮マシンに変えられてしまった男です。

なんだか挙動不審だったり、薬漬けであったことも後から聞いてくる仕組み。

ただ上層部からの命令で覗きや盗撮をするだけだったにしては、あまりに自責の念が強いその違和感は、最後の最後に爆発する。

ただ単にファミリーからの逃亡とか、政府の陰謀とか強盗事件の金の行方とか、そうした一つ一つの点だけでは人物は結びつきません。

それよりもアメリカ社会という集約点をもって、その中での被害者たちが集うところにドラマをもたらした作品です。

アメリカの人種差別、戦争、政治、洗脳団体。この時代設定に詰まりまくったその闇が、現代を鏡写しにするように展開されていく。

燃えていく炎の光でも、こうしてその陰に苦しんでいた人を照らすのは少しの救いでしょう。

そして、若き人生を自分を責め続けて過ごした青年に安らぎをあたえ、苦境の中でも前を向いて生きた歌手にスポットライトを当てるやさしさが最後に味わい深く残ります。

エンタメ性の振り切りもミステリーもあまり過剰にならないようなバランス。もしかするとどちらかに振り切っていたほうが良いという人には向かないかもしれません。

ただ自分としてはスタイルやバランス含めて結構楽しむことができた作品でした。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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