「マリアンヌ」(2016)
- 監督:ロバート・ゼメキス
- 脚本:スティーブン・ナイト
- 製作:グレアム・キング、スティーヴ・スターキー、ロバート・ゼメキス
- 製作総指揮:スティーブン・ナイト、ジャック・ラプケ、パトリック・マコーミック、デニス・オサリヴァン
- 音楽:アラン・シルヴェストリ
- 撮影:ドン・バージェス
- 編集:ミック・オーズリー、ジェレマイア・オドリスコル
- プロダクションデザイン:ゲイリー・フリーマン
- 衣装:ジョアンナ・ジョンストン
- 出演:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー 他
ロバート・ゼメキス監督、「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」(2013)などの脚本家スティーブン・ナイトが組んで送る戦争メロドラマ。
主演の二人にはブラッド・ピットとマリオン・コティヤールを迎えていて、今ではかなり懐かしさすらある、戦争と愛とスパイという題材の作品です。
公開すぐということでかなり多くの人が入っており、終盤の展開では涙を流す方も見られましたね。
1942年のカサブランカ。英国諜報員のマックスは、フランスのレジスタンスであるマリアンヌと夫婦を演じ、ドイツの大使を暗殺する任務に就く。その中で二人は恋に落ち、任務後にマックスはマリアンヌをイギリスに招いて結婚する。
幸せな家庭を築き、娘も授かるマックスだが、ある時彼に新たな任務が課せられる。それは、妻マリアンヌにスパイ容疑がかけられ、マックス本人が真偽を突き止めて処理をするというものだった。
この作品で良いところ。それはピシッと小奇麗なブラッド・ピットが観れるというところもですが、やはりなによりもマリオン・コティヤールという女優の存在そのものでしょう。
彼女の出すファム・ファタールな感じや、パーティの中心になり誰からも好かれるというマリアンヌの説得力は今作を支える重要な部分であると思いました。
マックスと同様に、自然と彼女に惹かれていくのですね。しかし実はそうして惹かれつつ、今作はマリアンヌに関してかなり情報が少ない。それは後のスパイ容疑の際に関して大きく働いてくるわけですが。
全編通してこの作品を包んでいるのは、まさに大事に大戦中もしくはそのあとあたりいろいろとあった、戦争メロドラマ映画のルック。
衣装や美術などそこには少し懐かしいような雰囲気さえあります。舞台がそうであると同時に、2人の出会いの場所がカサブランカだなんて、あの名作を思わせましたね。
まあその点ではそうした過去の戦争ロマンス作品の代表格と比べると、今作は平凡と片付けてしまうしかないと個人的には思いましたが。
確かに彼らの物語は壮大で、それは視覚効果が大いに物語っています。
戦争の中で出会ったマックスとマリアンヌ。彼らが心から愛し合ったのは砂嵐の中。そして空襲による爆撃の最中、愛の結晶たる娘を授かり、最後は冷たい雨の中に別れてしまいます。
クリシェと言ってもいいのでしょうかね。とにかく2人の愛の物語は、常に波乱の中にあったのだと思います。そういったビジュアル面での愛の語りは非常に美しく(分かりやすいと言えばそうですが)、私は好きでしたね。
その他に今作にはスパイものとしての部分が見られます。
その辺の緩急に関しては、マックスの純愛ゆえの行き過ぎた行動というのが適切な表現かと。単なる仕事というのは本作にはなく、かなりマックス個人としての行動が多いのです。
マックス視点。2人の純愛の物語なのですが、やはりマリアンヌに疑惑を持たせるために、彼女側の描写を後半になればなるほど削っていく。
そのマリアンヌに残すべき隠された部分なのですが、それがどうにもこの純愛の部分とぶつかってしまっている気がしました。
マックスとマリアンヌのつながりに、冒頭での明日死ぬかもしれない2人という要素以外感じられないのです。そこに必然性が薄く、どうにも満たされません。
これはマックス視点であるので、マリアンヌがスパイかどうかの疑念は彼にだけ残しても良かったかもしれません。
観客にはスパイであることをバラし、その上でも愛している2人を映すことで、疑念よりもそれを踏まえた上での哀しい愛の物語にできたのかと。
今作でゼメキス監督が届けるのは、画面上は美しく波乱に満ちた愛の物語。その愛の純粋さには魅せられるものの、そこには説得力はなかったように思えます。
40年代~50年代。アメリカの古き良き黄金期に製作された戦争を背景としたロマンス映画。その懐かしい雰囲気を楽しむのだとすれば、今作は少しノスタルジーをもって現代に存在しているものです。
コティヤールの美しさが出すマリアンヌという人物の存在感。それに比べれば、お話も作りも懐かしくも平凡な作品でした。雰囲気を楽しみましょう。
ということで、感想はおしまいです。それでは、また。
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