「わたしに会うまでの1600キロ」(2014)

  • 監督:ジャン=マルク・ヴァレ
  • 脚本:ニック・ホーンビィ
  • 原作:シェリル・ストレイド ”Wild: From Lost to Found on the Pacific Crest Trail”
  • 製作:リース・ウィザースプーン、ビル・ポーラッド、ブルーナ・パパンドレア
  • 製作総指揮:ネイサン・ロス、バーゲン・スワンソン
  • 撮影:ワイヴス・ベランガー
  • 編集:マーティン・ペンサ、ジャン=マルク・ヴァレ
  • プロダクションデザイン:ジョン・パイノ
  • 美術:ジャヴィエラ・ヴァラス
  • 衣装:メリッサ・ブルニング
  • 出演:リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン 他

シェリルストレイドによる自叙伝を、「17歳の肖像」(2009)や「ブルックリン」(2015)の脚本家ニック・ホーンビィが脚色し、「ダラス・バイヤーズクラブ」(2013)のジャン=マルク・ヴァレが監督した作品。

主演には「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005)や「MUD -マッド-」(2012)のリース・ウィザースプーン。彼女の母親役として「ジュラシック・パーク」(1993)等のローラ・ダーンが出演。

2人はそろってアカデミー賞にノミネートされています。

1995年。アメリカ西海岸をメキシコ国境からカナダとの国境まで歩くという、パシフィック・クレスト・トレイルに挑戦した女性がいた。

シェリル・ストレイド。彼女は離婚や最愛の母の死、そこからの自暴自棄な人生に何かしらの決別を求めて、このたびに出た。

大きな荷物を背負い、自然と時に人、何よりも自分と向き合う彼女は、今までの人生を振り返る。

今作はリース・ウィザースプーンにくっつきっぱなしの映画ですから、彼女のリードなしには成立しえない作品なのです。

ということで、彼女がどうだったかと言えば、すごくむき出しのシェリルを見せていて素晴らしいと感じました。

一人の女性がとんでもなくぶっ壊れ、もがいてもがいて、意味も分からないままにこの長いウォーキングに出る。そのいかにも行き場がなくて、よくわからないけどやってる感じが良いですね。

彼女の動機は不明瞭。そこにはあまり演出された感覚がありませんでした。

ウィザースプーンも自分で何をしているかわかっていないようなシェリルを巧く表現していたと感じます。シェリルのこの旅って、いわゆる自分探しとか自己啓発的なものですよね。

ですが、今作で私が一番すごいと思ったのは、そういった話によくある、正しさとか希望とかそういった胡散臭く押し付けがましい教科書的なうっとおしさが一切ないところでした。

その他に、ウィザースプーンの素敵なところは、回想などで複数の時間軸のシェリルが出る中、どれも驚くほどよくその時のシェリルを演じている点。

母と共にいたとき、母がいなくなり壊れたとき、そして映画の主軸となる現時点。見た目にはそこまでの変化をつけていませんが、その時々の生きることへの姿勢のようなものが異なり、楽しんでこの複数のシェリルを観れました。

シェリルのズタボロ具合も、自暴自棄だからとはいえ同情を引きます。かわいそうだけど、何より、彼女自身が自分に幸せを許していない感じが切なかった。

この映画が始まったときからずっと死んでいるのは、ローラ・ダーンが演じているお母さん。

思い出の中に、シェリルと一緒に彼女を観ていきますが、いつもすごく楽しそう。悲惨な人生を母自身も歩んでいて、シェリル含めて辛い経験もありますが、彼女が母を思い出すとき、それは幸せな時が多いですね。

シェリルが母をどう見ていたのか。一部を除いて、笑顔の多い母。ローラ・ダーンが顔をくしゃっとさせて作る笑顔がとても輝いていました。

今作では歌が大事な役割を持っていると思えます。

シェリルが事あるごとに、歌を歌ったり思い出す。そういった音楽は彼女自身をずっと流れているもので、その曲を通してシェリルは過去へ戻れる。

音楽はそれを聴いた時の気持ちや一緒に聴いた人までも包んで保存しているのですね。森で怖くなって歌う時、静けさを消すだけではなく、お母さんを共に感じて勇気をもらいます。

大自然の中で、何にもないからこそじっくりと自分と向き合える。

そして原点的なところで、大切なものを感じるシェリル。良く考えて水は飲まなきゃいけないし、食べ物に関してもしっかり、燃料の種類も気を付けて。

こうしてものが無いと、シェリルは本当に大事なものや何を選ぶべきかを考えていきます。それは持ち物も同じでしたね。

とにかく何でも持って歩こうと、彼女のバックパックは”モンスター”と呼ばれるほどにバカデカイ。人生いろいろとあったもんだから、彼女は色々と背負ってしまう。

しかし、そうやって持ち運ぶにも限界があり、どこかでどれが大切か考えていく。

シェリルはその荷を少しずつ下ろしていき、人生を歩いていくのに本当に大事なものを見つけていくという事です。

そして母の笑みを思い出し、「あなたという最高の娘がいるもの。」という言葉をかみしめるのですね。母はDVに苦しみ、学もなく若くして亡くなった。

でも、母は大事なものがなんなのか見えていたのです。だから、どんな時でも幸せで歌を歌っていた。

ヴァレ監督はメタファーの旅に人生をのせて、一人の女性が荷物整理をする模様を描きます。非常にリアルで飾り気のない人間の話。むき出しのウィザースプーンと、回想だけでもキラキラしてて素敵なダーンが2つの輝く星です。

ありふれた自分発見の感動物語に辟易した私には、今作は非常に丁寧で嘘のない、真摯な人間再生だと感じたものです。おススメです。

そんな感じで、感想はおしまいです。それでは、また。

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