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「逆転のトライアングル」”Triangle of Sadness”(2022)

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映画レビュー
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「逆転のトライアングル」(2022)

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作品概要

  • 監督:リューベン・オストルンド
  • 脚本:リューベン・オストルンド
  • 製作:エリク・ヘンメンドルフ、フィリップ・ボベール
  • 撮影:フレドリック・ウェンツェル
  • 編集:リューベン・オストルンド、マイケル・シー・カールソン
  • 出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソン、ドリー・デレオン 他

「フレンチアルプスで起きたこと」を送り出し、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」でパルム・ドールを獲得したリューベン・オストルンド監督が送る、豪華客船での混沌と島での逆転劇。

出演は「ブルックリンの片隅で」以来目覚ましく活躍するハリス・ディキンソン。

またモデルとして活躍するチャールビ・ディーンが作中でもモデルかつインフルエンサーの女性を演じ、その他ウディ・ハレルソンが酔っ払いの船長を、そしてドリー・デレオンがトイレの清掃員であり後半に重要な役となる女性で出演。

チャールビ・ディーンは昨年の8月に病気で亡くなっており、今作が彼女の遺作となっています。

作品はカンヌ国際映画祭で上映され絶賛を浴び最高賞であるパルム・ドールを獲得。

リューベン監督にとっては2度目のパルム・ドールとなりました。

もともと監督の新作自体が「ザ・スクエア 思いやりの聖域」以来ということもあって、結構楽しみにしていました。しかも2作連続パルムドールですからね。

あとは個人的にハリス・ディキンソンは素晴らしい俳優なので彼が出演というのもポイントでした。

公開初週には行けず、次の週に観に行きましたが、結構人が入っていました。

「逆転のトライアングル」の公式サイトはこちら

〜あらすじ〜

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モデルとして活動するカールは同じくモデルで恋人のヤヤと一緒に、豪華客船のクルーズ旅行に参加していた。

そこにはロシアの実業家や兵器販売で成功した夫婦など様々な富豪たちが乗り合わせている。

クルーたちはお客様は神様の精神で無理難題にも対応していたが、肝心の船長が酒浸りで船長室に籠もりっきりだった。

ついにやってきた船長が客たちと一緒に夕食を囲むキャプテンズ・ディナーの夜。

荒れる海と揺れる船で多くの客が船酔いを起こし大混乱に、さらに船長は客の一人と酔いつぶれていく。

まともに指揮も取られずついに難破してしまった客船。

生き残った客たちはたどり着いた島でサバイバルすることになるが、金を持っているだけの人間にできることはない。

そこで魚を獲り火をおこし、生き抜くすべを持っていたのはトイレ清掃担当の中年女性だった。

感想/レビュー

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メンツを保とうとする惨めな人間たち

リューベン・オストルンド監督が得意としているのは体裁と本質、暴露だと思っています。

人生においてのしょうもない小競り合い、綺麗事を並べても結局は醜悪な人間というもの。

それらをあまり突飛でない形であぶり出していく序盤。

カールとヤヤの間で繰り出されたどっちがお金出す問題。

カールは”男女へのステレオタイプな役割。

それは性差別に繋がる”と主張し、ヤヤは呆れながらも次に”女性の社会的立場の弱さと保証の必要性”を主張する。

ただこのやり取りを観ながら、共感というか苦笑いをしている。

経験あるようなないような、度々話題には上がるけど解決されない私たちのちっぽけさが凝縮されたOPでした。

おおよそ社会的には成功したモデル、大人気のインフルエンサー。

彼らの表面、外面の綺麗さに対して、口から出る言い訳的なセクシュアリズムを披露して欺瞞を見せる。

おおよその構成はすべてこのカールとヤヤの関係に近しいです。

必死に体裁を失わないように踏ん張る滑稽な人間たちが織りなす惨めなドラマなのです。

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船に乗っている乗客たちはもっと酷いものですが、実は過去作と比較して(その過去作の存在がオストルンド監督にとって最大の敵なのかも)、やや弱く感じてしまう部分があります。

過去作の「フレンチアルプスで起きたこと」は一般家庭の善良な父というメンツを持った男が、危機に瀕したときに最低のアホを晒しながら、ずっとそれを否定し続けるお話。

そして「ザ・スクエア 思いやりの聖域」はリベラルで思慮深い美術館の館長が、ある事件からただの差別主義者でどうしようもない奴だと暴かれていくお話。

対比すると今作は対象設定で不利なんです。

もともとコイツら好かれてない

裕福なくせに金でゴネるインフルエンサー、武器商人、ロシアのクソ売り。

そもそも体裁が立派かというと微妙ですし、もともと「性格悪い。ホントはクズ。」なんて思われてしまいもともと嫌われている人種たちですから。

彼らが上から下から噴出して、文字通り汚いものを晒して言っても、過去作のような衝撃はないんですよね。

今回やたらとハエをたからせているのも、おそらく「こいつら腐ってますよ」の印なんでしょうかね。

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下の下にいる人間

もしもおもしろい対象があるなら、私は客船のクルーの方だったと思います。

客室乗務員のチーフであえうポーラの存在がおもしろい。

この人お客様のために常に下手に出てるんですが、サバイバル生活になっても同様。ただし、自分より下がいると思ってアビゲールに接する。

無意識でしょうけど上下関係をそのまま持ってきているんですよね。

ただヒエラルキーがひっくり返ってもどちらにしても真ん中で、上には属さないという皮肉もありますが。

無意識の差別意識や上下の認識はクライマックスのヤヤのセリフにも見て取れますが、こういうニュートラルに見せかけて(もしくは下手に出ているとみせかけて)の見下しは結構毒が効いてて良かったです。

監督が切り取るしょうもない諍いとかプライド、上っ面だけ綺麗な人間たちの本性の崩壊はやはりキレがあって面白い。

しかし先述の通り最大の敵は過去作。

今回は最初からいけ好かない連中を主軸にしたことで、ある意味知っていることを暴露されているような感覚がありました。

そこだけインパクトには欠けてしまいますが、でもシニカルなコメディとしては確かな面白さを持っています。

今回の感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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