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「工作 黒金星と呼ばれた男」”The Spy Gone North”(2018)

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「工作 黒金星と呼ばれた男」(2018)

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作品概要

  • 監督:ユン・ジョンビン
  • 脚本:クォン・ソンヒ、ユン・ジョンビン
  • 音楽:チョ・ヨンウク
  • 撮影:チェ・チャンミン
  • 編集:キム・サンボム、キム・ジェボム
  • 美術:パク・イルヒョン
  • 衣装:チェ・ギョンファ
  • 出演:ファン・ジョンミン、チョ・ジヌン、イ・ソンミン、チュ・ジフン 他

「許されざるもの」などのユン・ジョンビン監督が、実在した韓国の諜報員パク・チェソと、彼が参加した”北風工作”をもとにしたスパイ映画。

主演は哭声/コクソンなどのファン・ジョンミン。

また「KCIA 南山の部長たち」のイ・ソンミンが北朝鮮側の所長を、韓国側のパク・チェソの上司を「お嬢さん」などのチョ・ジヌンが演じています。

2017年にはカンヌ国際映画祭でプレミア公開され、本国では2018年に、そして日本でも2019年に劇場公開されていました。

韓国の青龍映画賞では監督賞や美術などの賞を、韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞でも主演男優賞と美術賞をとるなど数多くの映画際で高く評価されています。

日本公開当時はあまり韓国映画を観ていなかったこともあり、劇場予告は何となく覚えていますが、観てはいませんでした。

今回配信で見つけたので初めて鑑賞しました。

〜あらすじ〜

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1992年。北朝鮮の核兵器保有の疑念が広がり、南北関係は緊張を極めていた。

そんな中で韓国軍将校であるパク・ソギョンは、国家安全企画部より工作員として北朝鮮に潜入し、核開発の真相を探るように命じられる。

”黒金星”というコードネームで工作活動を開始したパクは、ビジネスマンを装って北朝鮮へ行き、北の要人に近づいていく。

北朝鮮対外経済委員会所長であるリ・ミョンウンと友好を深めたパクは、徐々に核開発が行われているとされる現場へ近づいていく。

しかし一方で安全保衞部はパクの素性を怪しんでいた。

感想/レビュー

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慎重な諜報映画

北風工作という作戦は知らずに観ましたが、実話と実在のスパイをもとにしている慎重なトーンの映画であり、緊張感に溢れたものでした。

おおよその背景や作戦の概要も説明されるため、実話を知らずとも楽しめます。

スパイアクションではなくて、まさに諜報映画。「誰よりも狙われた男」だったり「オールド・ナイブス」のようなテイストです。

派手でないこと、武器や目に見える脅威が出てこないことが、より想像を掻き立てて不安を増長しています。

実際、恐ろしい殺害現場もカーアクションも、銃撃戦もありません。

人物に根ざして運ぶ物語

そして脅威は、人に依存しています。

感情が入り込まずどうでもいいと感じてしまう人物であれば、おそらくここまでの緊張も恐怖もなかったでしょう。

主人公パク・ソギョンを演じるファン・ジョンミン。

何にでもなれる印象の彼ですが、この作品の中では彼の演技が素晴らしく作用しています。

常に、韓国の工作員である黒金星と韓国からきたビジネスマンであるパク・ソギョンの二人を内在しているわけです。

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冷たい戦争の中で生き抜く2人

演技の中の演技。

命をかけて演技していく黒金星と、ビジネスマンを徹底するパク・ソギョン。

立ち代わり入れ代わりで繰り出されるドラマは、この2つの人物をレイヤーを重ねて演じたファン・ジョンミンの力あってこそと思います。

そしてパクに対するリ所長を演じたイ・ソンミン。

彼は「KCIA 南山の部長たち」での閣下の印象が非常に強くありながら、「SP 国家情報局:Mr.ZOO」では非常にコミカルな役どころを演じたりと幅広い適応を見せます。

私は今作でイ・ソンミンの変化を堪能しました。

はじめこそ手強い北の男であり、冷徹な印象をも持ちます。

しかしパクの潜入が進んでいき、親しくなっていけばこちらも親しみを覚えます。

贈り物の下りに、家族を紹介する様子。ハードルとガードを下げていく。

家族という個人的な領域をパクに晒すのはリ所長だけなのですから。

冷たい戦争と政治の中で、個としての葛藤と人間らしい部分を見せていく南北の二人。

人物に入り込んでいけるからこそ、恐怖は本物になるというわけです。

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時代を反映した美術、衣装が作りこまれている作品の中で、北朝鮮の暗部かつ頂点に上っていく。

キム・ジョンイルなんて子どものころに将軍様だなんだと学校でネタにしていたのですが、特殊メイクありでスクリーンに現れたその姿は存在が非常に恐ろしく思えました。

あの空間においての絶対な支配者であり、何を間違えても簡単に命を握りつぶされてしまう。

パクは核開発を探るべく命がけですが、リ所長もまた、南の人間を連れ込んだ張本人として責任を負っていて命がけ。

2人はいつしか運命共同体となっているわけです。

朝鮮半島の平和を望んだ友情

全ては政治でしかない。

半島の危機を救うとか、民族としての統一のためとか、そんな理由はない。大義なき戦いは裏取引で引き起こされる武力挑発に繋がります。

ただ選挙を操作したいだけ。

そこで現場で真に朝鮮半島の平和を願った二人が動く。

偽りの代物ではあったが、お互いに贈り物をした。

時代が流れ別の形で再び南北の協力がかなうとき、その後ろに置かれた時代として互いを見つめるシーンにはグッときました。

それぞれ立場が違った。でも、願った事はパクもリ所長も同じだったのです。

慎重で硬派なトーンから事実を描き出しながらも、あくまで人間にフォーカスを置いた作品。

政治であり諜報であり、そしてこれは朝鮮半島の南北にかかった友情の物語でした。

ファン・ジョンミン、イ・ソンミンふたりがとにかく良かった。

こんなところで今回の感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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