「クローゼット」클로젯(2020)
作品概要
- 監督:キム・クァンビン
- 脚本:キム・クァンビン
- 製作:チョン・ウォンチャン
- 音楽:チョ・ヨンウク
- 撮影:チェ・チャンミン
- 出演:ハ・ジョンウ、キム・ナムギル、パク・ソンウン 他
「哀しき獣」や「お嬢さん」などのハ・ジョンウが主演し、とある屋敷に住み始めたところ、娘が不可思議な行動をとり始め最後は失踪してしまったことから、怪異と戦い始める父を描くホラーミステリー。
怪異との戦いに手を貸す祈祷師として、「非常宣言」などに出演のキム・ナムギルが出演しています。
正直あまり興味がなくて日本公開もしていながら見には行かなかった作品です。
ただハ・ジョンウは好きなので配信に来たら、と思い配信にて鑑賞しました。
韓国のホラー映画というと激強なものは観てますが、今作はミステリーとか強いということでした。
~あらすじ~
最愛の妻を交通事故で亡くしたサンウォン。仕事に明け暮れ、娘のイナとはなかなか過ごせずにいる彼は、関係修復もかねて新居へと引っ越してくる。
しかしその家で、イナは部屋のクローゼットから聞こえる何かに触れおかしな行動をとり始め、サンウォンは不思議な声に悩まされ始めた。
そしてある日、イナが忽然と消える。
警察やメディアも含めて捜索を始めるサンウォンだったが、周囲は子どもをないがしろにしたサンウォンに疑いの目を持ち始めていた。
そんな中、霊媒師だという男がサンウォンの家を訪ねてきた。
イナのように忽然と、しかも家の中で疾走する子どもの事件は過去にもあり、いずれも子供部屋にはクローゼットがあるという。
失踪の真相とイナの無事を突き止めたいサンウォンは、そのホンと共に怪異に立ち向かうことにする。
感想/レビュー
作品はホラーミステリーとして恐ろしい中に謎を含ませ、その終着点としては韓国の社会的な問題をあぶりだすことに成功しています。
しかし一方で、全体で観た際のまとまりは危うい部分もありながら綺麗と言えども、途中のギアチェンジの時点では違和感やムリな力を感じずにはいられませんでした。
静かで恐ろしい序盤
まず序盤の、OPの祈禱シーン。
その質の悪い録画映像の暗さやノイズなどがまあ味わい深くて恐ろしいわけですが、そこから始まってのイナの失踪までについては最高だったと思います。
これぞアジアホラーだと言えるような、じっとりとした感覚。
家や扉のきしむ音だったり、人物のバックにクローゼットの扉が配されるだけで感じる素晴らしい気味の悪さ。
王道といえばそうなのですが、往年のアイテムが各所で活躍しています。
また豹変の仕方という意味で、イナの暴食(この辺は「哭声/コクソン」などでも使われています)があったり、よくある謎の存在と会話している描写があったり。
平凡といえばそうである描写ですが、しっかりと不気味な演出や絵作りで楽しかったです。
心霊バトルもの?
ただし、キム・ナムギルが演じるホン室長が登場してからは微妙な塩梅に。
韓国映画で結構あるのですが、変なコメディ要素が入っていると思いました。
ホン室長のキャラクターも陽気であり、深刻さというモノがやや薄れてしまう印象。
また、実際に怨霊たちが出現してくるシーンになると正直萎えました。
恐怖とは眼に見えず、その存在を感じるだけの方が非常に効果的だと思うことがあります。今回はそれを強く感じました。
なんだか狂暴ゾンビのような造形になった子どもたちの怨霊が走り回っていても、怖さは無くなります。
リアリティラインというかシリアスさの線引きというか、ちょっとジャンルの切り替えに関してはうまく機能していないと感じます。
子どもたちへの謝罪
ホン室長との会話を通すことで、イナとの隔絶を改めて突き付けられたサンウォン。
ホラーがその謎を示すときに、悲痛な真実をのぞかせるのは「マローボーン家の掟」や「パラノーマン」などを思い出します。
ここではネグレクトが描かれていました。
怨霊の根源となっていた少女ミョンジンの死の原因。それは親のネグレクト。
サンウォンもまた心のどこかでイナがいなければ・・・と考えそして仕事のためを口実にイナを手元から遠ざけようとしていました。
多くの家庭の中で暴力やネグレクトにさらされ、愛と保護を受けない子どもたちがいる。
その社会問題をホラーというジャンルに混ぜ合わせ、謎を解くという形で大人たちに突きつけたのが、今作の根底にある部分です。
サンウォンのミョンジンへの謝罪は、そのまま韓国の大人たちからすべての虐げられた、虐げられている子どもたちへの謝罪に思えました。
始まりと終わりはかなり好きですが、道のりの部分ではやや難ありにも思います。
ハ・ジョンウとキム・ナムギルのバディに関しては今後も見てみたいと思う魅力はあると感じます。
今回は短いですが感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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