「ブリムストーン」(2016)
- 監督:マルティン・コールホーヴェン
- 脚本:マルティン・コールホーヴェン
- 製作:ウーヴェ・ショット、エルス・ヴァンデヴォルスト
- 音楽:ジャンキーXL
- 撮影:ロジャー・ストファーズ
- 編集:ヨープ・テル・ブルフ
- 出演:ダコタ・ファニング、ガイ・ピアース、エミリア・ジョーンズ、カリス・ファン・ハウテン、キット・ハリントン、カーラ・ジュリ 他
オランダのマルティン・コールホーヴェン監督が贈る、ウエスタンスリラー。ある男から逃げる口のきけない女性の物語です。
主演はダコタ・ファニング。彼女を付け狙う牧師役にはガイ・ピアース。
その他カリス・ファン・ハウテン、キット・ハリントン、カーラ・ジュリらが出演しています。
作品は日本公開2018年と結構遅れ、あと公開規模も結構小さく観るのが難しかった覚えがあります。都内で観れたのですが私はスルー。今回Amazonプライムビデオ配信にて鑑賞しました。
小さな村で助産師として働くリズ。彼女は事情があり言葉を発せないものの、年の離れた夫は彼女を気遣い優しかった。
しかしある日、新たな牧師が村にやってくると、リズは激しく動揺し、決して牧師に近づかずまた自分の幼い娘も近づかせなかった。
そしてある夜、牧師がリズの家を訪ねてくる。
彼は「汝の大罪は罰せられねばならない。」という。牧師が現れたことで、リズの過去や凄惨な暴力が明らかになっていく。
マルティン・コールホーヴェン監督作は初めての鑑賞ですが、トーンやルック、テイストの統一の手腕はしっかりした方だと感じます。
今作はとにかく重々しく、ともすれば叙事詩的なテイストを出そうという試みもあり、容赦のない(直接の暴力描写は避けていますが)世界の構築がなされています。
撮影のしっとりとまた色彩に欠ける構成や音楽も含めてムーディですね。
しかし全体に2時間20分を超える作品で、常に張りつめた空気を作ったことで、その足取りすら重いものとなっています。
どこにも甘えは置きませんが、抑揚が少なくなったこと、象徴的なものの入れ込みが多いことで、時間の長さもあって逆に全体が間延びしています。
監督が間違いなく目指したのは、フェミニズム、ミソジニーの中で生きる女性の物語ですが、私には搾取的にも思えました。
批判的な目線かもしれませんが、ここで描かれる女性の扱いにどうにも表層的な部分しか感じないこと、また男性の役割と造形にも疑問が残るのです。
口枷、口のきけないこと、娼婦、妻、母、娘。
それら女性たちの社会的な地位やまさに枷となるもの、抑圧は当然そのまま描かれるのですが、まんま過ぎないでしょうかね。
貶められていなくとも、結局はガラスの天井があるという点こそ残酷なので、ここまで直接的だと逆にサディストに思えますよ。
しかしダコタ・ファニング、カリス・ファン・ハウンテン、カーラ・ジュリ、そしてエミリア・ジョーンズそれぞれの俳優たちがとてもいいのは間違いないです。
ちょっとした演出でも牧師の触れたグラス速攻で洗うとか、気の利いた部分も観れますし。
男性陣に関してはガイ・ピアースはハマっています。彼は完全に狂気にとらわれ自分の世界を外の世界に覆いかぶせる怪物を演じきっています。
画面でのプレゼンスの圧もすごいですし、聖職者的な言い訳しながらわずかでも男の性の部分をのぞかせて来たり、卑しさも出せていて最高の悪役。
こんな怪物ガイ・ピアースを観れるというのは最大の魅力かもしれません。
と、彼の造形はすばらしいですが、その他はいまいちでした。「優しくする」という共通項をもって描かれる捕食者はじめ、女性の敵となる奴らはある意味一辺倒り。
逆にキット・ハリントンは無条件のヒーロー過ぎて、これまた男性の言い訳キャラに思えます。
そしてなにより気になるのが、無力な男の不在でした。
善に尽力するも結局何もできない存在は男には存在しません。ヒーローかヴィランか、いずれにしても男にはパワーがあるというのは、根本的にどうでしょうか。
全体の世界づくりやトーンは硬いですが、そのせいか流れも停滞気味で、俳優はみんな良いのですが、フェミニズムやミソジニーとしては描き方に私は疑問が残る作品でした。
今回は批判的になりましたね。感想はこのくらいです。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた。
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