「エスター/ファースト・キル」(2022)
作品概要
- 監督:ウィリアム・ブレント・ベル
- 脚本:デヴィッド・コッゲシャル
- 原案:アレックス・メイス
- 製作:アレックス・メイス
- 音楽:ブレット・デター
- 撮影:カリム・ハッセン
- 編集:ジョッシュ・イーシアー
- 出演:イザベル・ファーマン、ジュリア・スタイルズ、ロッシフ・サザーランド、マシュー・アーロン・フィンラン、ヒロ・カナガワ 他
2009年に公開され、その設定から話題になったホラー映画「エスター」。
その前日譚となる作品である今作は、エスターがいかにして”可哀そうな孤児”になったのか、彼女のルーツであるエストニアにまでさかのぼって描いていきます。
主演は前作オリジナルでもエスターを演じたイザベル・ファーマン。前作では12歳にして強烈なキャラを見事に演じきった彼女が、同じ役を今度は20歳を超えて演じています。(撮影時は23歳)
その他「ハスラーズ」などのジュリア・スタイルズ、ロッシフ・サザーランドらが出演しています。
初めに話が上がった時には、あのエスターに前日譚なんている?と思いましたが、結構すぐGOサインが出て撮影開始、みるみる公開にこぎつけました。
あまり前評判などは意識せず、公開週末に早速観てきました。ファースト・デイとあってか結構混んでいました。
~あらすじ~
エストニアにある精神病院の患者リーナ。
ホルモン異常から10歳ほどの身体のままで生きている彼女は、巧みな計画を立てて病院から逃げ出した。
自分と容姿の似ている失踪した子どもエスターに成りすまし、彼女はエスターを探していたアメリカに住む夫婦のもとへと行くことに。
セラピーや周囲の人間との会話に徐々に適応し、エスターとして生きていこうとするが、もともとエスターの捜索を担当していた刑事は彼女を怪しみ始めていた。
エスターもまた、このままでは家族や刑事に自分の本性を暴かれるのも時間の問題だと考え、根本的解決へと動き出す。
感想/レビュー
やはり再演は無理があるのでは
ジャウム・コレット=セラ監督が一度見れば誰しも忘れないキャラ、エスターを生み出したのが2009年。
そこから実に13年ほどたってこの作品が登場したわけですが、皆さん気になるであろうエスターを当時子役だったイザベル・ファーマンが再演する点について。
まあ無理があるかもです。違和感がある点は否めません。
本人がもうすっかり大人びていて、いかんせん子役のころからすれば顔作りが違いますよね。
メイクなどである程度頑張って見せてはいますけれど、それでも大人がやたらに背を小さくしているような、変な合成感をずっと感じずにはいられません。
引きのショットなどで映るシーンでは、ボディ撮影用の子役俳優が演じているのでしょうけれど、だからこそ一連の流れでボディのショットと顔のショットを映せていません。
毎回ぶつ切りになるカットバックを見ていると、その撮影の努力というか制約が感じ取れてややノイズでした。
イザベル・ファーマンの努力などは見て取れるものの、違和感を感じるのは間違いないかと。
サイコにはサイコを
今作はすくなくとも「エスター」を知っている人に向けての映画です。
前日譚であるとしてもこの作品を観てから2009年の「エスター」を見るというのは賢明ではないですね。
すでにエスターの仕掛けとして、子どもの容姿のまま成長しない30代女性であるという驚きは消費されてしまっています。
なのでそこに驚きを持ってくることは不可能です。
そこで今作はよりぶっ飛んだ展開に持ち込みました。
サイコ女に対峙するのは傷ついた家族や脆弱な幼児ではありません。歪み切ったサイコ母とクソ息子に囲われた哀れな父のいる家庭。
往年のスリラーよろしく悪の本性に近づく刑事が殺されてしまうシーン。そこで結構なびっくりが用意されていたのです。
このショッキングさは驚きとともに楽しさでもありました。
限界を感じざるを得ない題材
しかしもともとは一つの大きな仕掛けに依存したプロットである映画ですから、エスターの正体を知っている状態でのサイコサスペンス展開になったとしても限界があります。
何よりもオリジナルがフレッシュだったのは、邪悪な子どもという型に対して新しい風を吹き込んで見せたこと。
それは悪魔やらスピリチュアルなものに寄らない設定からくる新鮮さだったのです。
ブラックライトに照らされて見える裏の顔だったり、そもそも美しく平和に見える家庭に隠された暗部であったりと妙にこだわった演出もあります。
イカレた女とイカレた家族のぶつかり合いというライド感はあるのですが、最後にはやはり、オリジナルのことを懐かしくそして寂しく思い出してしまいました。
これ以上絞り出すこともない(そもそも今回も無茶)でしょうから、ここでエスターを扱うのは終わりで良いでしょうね。
気になるという人は見ても良いでしょうけれど、正直配信待ちでも良いのかなと思う作品でした。
感想はこのくらいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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