「ロスト・マネー 偽りの報酬」(2018)

  • 監督:スティーブ・マックイーン
  • 脚本:スティーブ・マックイーン、ギリアン・フリン
  • 製作:イアン・カニング、スティーブ・マックイーン、エミール・シャーマン、アーノン・ミルチャン
  • 音楽:ハンス・ジマー
  • 撮影:ショーン・ボビット
  • 編集:ジョー・ウォーカー
  • 出演:ヴィオラ・デイヴィス、ミシェル・ロドリゲス、エリザベス・デビッキ、シンシア・エリヴォ、コリン・ファレル、ダニエル・カルーヤ、リーアム・ニーソン、ロバート・デュバル 他

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「それでも夜は明ける」のスティーブ・マックイーン監督が、強盗団の残された妻たちの物語を描くクライムスリラー。

妻たちを演じるのは、「スーサイド・スクワッド」のヴィオラ・デイビス、「ワイルド・スピード」シリーズのミシェル・ロドリゲス、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」のエリザベス・デビッキら。

その外コリン・ファレルにダニエル・カルーヤ、ベテランのロバート・デュバルも出演。

今作は元々、「妻たちの落とし前」というタイトルにて2019年4月には公開するはずだったのですが、急遽タイトルを変更してDVDなどビデオスルーに決定した作品です。

アカデミー賞のノミネートなどの関係でしょうかね。

マックイーン監督の新作なので楽しみだったのですが、残念。

どうせ待つのであればと、海外版ブルーレイを取り寄せて鑑賞しました。

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シカゴにて強盗を繰り返していたグループが犯罪現場にて負傷、さらにはアジトまで追いつめた警官隊により銃撃を受け、爆発事故を起こし全員が死亡した。

そのグループにはそれぞれ妻たちが残され、ヴェロニカも愛する夫を失った一人だった。

悲しみに暮れるヴェロニカだったが、彼女をさらなる悲劇が襲う。

なんと夫が盗み出した金が、地元の選挙戦へ出馬するジャマル・マニングの政治資金だったのだ。

マニングはギャングと言っていい冷酷さを持ち、ヴェロニカに亡き夫が盗み出した200万ドルを返すように脅してきた。

絶望するヴェロニカであったが、夫が残していたメモを見つけ、そこに次に実行するはずだった500万ドルの強盗計画が記載されていたことから、自らメンバーを集め実行することを決意した。

素晴らしい作品です。映画館でぜひ観たかった。

まず一つの映画として楽しくとてもおもしろく、見入ってしまいます。

この作品はエンタメとしても完成度が高いんですけれど、なにより世界が良く構成されています。

舞台となる町、そこに生きる人々、そして今作に登場する人物すべて。息づいています。

街頭演説からのドライブで次のパーティ会場まで行くシーン。見事です。

ワンカット映像から車内外の会話で建前と本音をそのまま見せながら、ボンネット固定のカメラで分かる移動距離の短さとリアルタイム感。

あの女性たちの集会のある郊外の貧困地域から、少し運転すれば特権階級のパーティ会場という歪みが、この舞台にあると綺麗に説明しちゃうんです。

お店やパーマ店などと対比されて出てくる高級ホテルと開発ビル群。

女性たちが暮らす環境と、男たちの社会。

性差がすごく感じられる。

登場人物のメインとなるのはもちろん、ヴィオラ・デイビスはじめ妻たちです。

しかし、コリン・ファレルと確執ありまくりのロバート・デュバル親子、イカれたダニエル・カルーヤなど脇の人間にもしっかりとドラマがあります。

なのでどの人物も単純な役割として存在するのではなく、実在感があり、個人の歴史背景を感じます。

もちろん妻たちも、ほんの少しの描写だけでも十分に夫との関係や置かれた状況がくみ取れてドラマ性を持っている。

エリザベス・デビッキのトラックオークションとか、圧の強いヴィオラ・デイビスとかちょと笑えるところもありながら、私は全編通してすごく悲しいお話だと思いました。

というのも、今作は数年前からの主流になっているメインキャストを女性に変えた映画ものだと思っていたのですが、明らかになる事実が辛かったのです。

「ゴーストバスターズ」「オーシャンズ8」など女性キャストをメインにした作品はけっこう出てきました。

女性をどんどん映画のメインキャストにするのはフェミニズムの面でも進められていることです。

しかし、今回は男性の強盗団映画を女性に変えるだけでこんなにも気づきがあるのかと思い知らされました。

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子供の世話をどうするのかという問題に、そもそも毎日の生計を立てること。

さらに肉体的には全くと言っていいほど、脅威に対抗できないというパワーバランス。

どれも男性メインキャストの強盗映画ではあまり気にもされないことでした。

夫に依存し自活ができない状態や、DV、店などの資産を勝手に売られる理不尽さ。

今作の妻たちは外部の敵、夫などすべての男性の権力と暴力、セックスと金の世界にて被害者ですよ。

エリザベス・デビッキの母親の残酷さと、結局選択肢のない悲しさ。

「僕は優しい男だ。」って自分で言う男はロクなもんじゃない。

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ケイパー物のような準備周到さにも派手なことはなく、むしろうまくいくパターンと最悪のパターンを見せたりとても現実的に感じます。

必死さがより実在感につながっていますね。

そしてやはり、女性を主役にして見えてくるものが多い。

女性ゆえに当たり前のようにかかる負担。そして疑問にも思っていなかった、男たちであれば問われもしない義務。

メインキャストが男性の時には気にもしなかったと思うと、どれだけ男というだけで無条件にはずされている責任が多いのか分かります。

それらを一手に負いながらも、生き抜くために戦う彼女たちのドラマが濃厚。

逃げ続け自分だけを救おうとした男に対して、ヴェロニカはずっと亡くなった息子を想って生きていました。

子供との距離とかも、女性と男性の違いが出てると思います。

かなり胸糞悪い男性のゲームに巻き込まれながらも、最後には自分の道を見出すヴェロニカ達が清々しいラスト。

マックイーン監督の手腕は確かなもので、どの人物もしっかり生きている世界で、濃厚なドラマを生み出しています。

何よりも、女性を主人公に強盗もの映画を撮る意義が見える作品。

日本公開がなくなり、ソフトでの販売というのは悲しいですが、リリースされたら是非見てほしい作品でした。

感想はここらでおしまいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ではまたつぎの記事で。

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