「ハスラーズ」(2019)
- 監督:ローリーン・スカファリア
- 脚本:ローリーン・スカファリア
- 原作:ジェシカ・プレスラー「The Hustlers at Scores」
- 製作:ジェシカ・エルバウム、ウィル・フェレル、エレイン・ゴールドスミス=トーマス、アダム・マッケイ、ジェニファー・ロペス、ベニー・メディナ
- 製作総指揮:アレックス・ブラウン、ミーガン・エリソン、アダム・フォーゲルソン、ロバート・シモンズ、パメラ・サー
- 撮影:トッド・バンハザル
- 編集:ケイラ・M・エムター
- 出演:コンスタンス・ウー、ジェニファー・ロペス、キキ・パーマー、カーディ・B、リリ・ラインハート、ジュリア・スタイルズ 他
「エンド・オブ・ザ・ワールド」の監督/脚本などのローリーン・スカファリアが、実際の詐欺事件を元に制作した犯罪映画。
主演は「クレイジー・リッチ!」のコンスタンス・ウー、そして今作の演技がすでに多くの批評家から絶賛されているジェニファー・ロペス。
その他キキ・パーマー、リリ・ラインハート、カーディ・Bそしてジュリア・スタイルズらも出演しています。
元々はニューヨーク・タイムズに掲載の詐欺事件の取材記事がもとになっております。
複数人のストリッパーグループが、男性客にドラッグを盛り店に連れ込み、クレジットカードをスキャンして多額の請求を行った事件です。
私はこの事件や記事のことは知らずに、題材が面白そうなので観てきました。
公開初週末でなかなか人がいまして、結構笑える部分もある作品でありにぎやかな映画体験となりました。
ニューヨーク金融街にあるストリップクラブ。
新人としてそこで働くことになったデスティニーは、先輩でありスターであるラモーナの助けもありみるみる力を伸ばしカネを稼いでいく。
しかし、2008年9月、金融危機がすべてを変えた。
しばらく育児のためにクラブを離れていたデスティニーは数年後、再びストリッパーとして舞い戻るのだが、金融危機によりクラブは大きく変わっていた。
そこでラモーナと再会したデスティニーはある提案をされる。
それは金融街の男たちにドラッグを飲ませ、カード情報を盗み儲けるというハスリング活動だった。
ローリーン・スカファリア監督はポップでセクシーかつ時にしんみりするこの実際のドラマに、女性たちのパワーを炸裂させています。
これはキャストのすれぞれの魅力によるところでもありまして、1つチーム犯罪映画としても他とはまた違うユニークさと明るさを持っているものになっています。
何しろ今作のメインキャストのパワフルさには驚かされます。
既に話題になっていますが、やはりジェニファー・ロペスの存在感には圧倒されるものです。
彼女のセクシーな中の覇気、ポールダンスショーのフィジカルに宿る強さ、突き進んでいく牽引力。
全てこの映画にパワフルさを与えていると感じます。
彼女自身自分のブランドの力でガッツリ稼ぐビジネスの強い女性で、今回の役柄にもぴったりはまっているのかな。
その反対といってもいい感じで、コンスタンス・ウーはセクシーさを(新人という設定もあり)抑えながら、作品のモラルセンターとしてその葛藤をよく表しました。
その他、吐きがちなリリ・ラインハートなど他のストリッパー役も多様性に溢れていますし、最低の悪女みたいなのがいません。
これだけでも、監督がこの事件に関して騙された金融マンではなくロビン・フッドともいわれた女ギャングに寄り添ったことが分かります。
私は何よりもこの作品の女性たちが性を武器にしたことが好きです。
というかそれを肯定して見せる作風というか。
「Drain the clock, not the cock」
ストリッパーはあくまで挑発と興奮であり、そこに男の発散はない。
性ビジネスであるストリップクラブのシーンはどれもネオンライト満載でセクシーです。
しかし、よくありがちな女性蔑視のようにそれを悪いこととして批判などせず、どちらかといえばそこに集う男たちの不快さ醜さそして哀れさが強調されます。
今作に出てくる男は、客、育児せず出ていく奴、泣きながらクラブヘくる彼氏。
おそらくストリッパーたちにとってもっとも良い男は、冗談抜きでディルドーなんでしょう。
男たちは女性を”物”とするストリップクラブに通います。
ラモーナたちはそんな男たちを、逆に獲物とし、”物”化して反撃するわけですから、これは痛快です。
最終的には人の人生の崩壊までを見てしまうことで、それでも突き進むラモーナと、倫理観に揺れるディステニーの分断から事態は転がります。
女性が主役になると見えるもの。
それはスティーブ・マックイーン監督の素晴らしい「ロスト・マネー」にても描かれますが、今作も同じです。
妊娠することによる身体にかかる負担、育児。子どもの将来を想い、そして大切な祖母のため。
彼女たちの動機に宿る純粋さが美しい。
確かにハスリング行為は犯罪ですし、破滅した男性もいるでしょう。
しかし、先に倫理観を捨てて他人の生を破壊したのは誰でしょうか。
不良債権や全く価値のない金融商品を大量に売り、多くの人から職や家を奪ったのは。
「この国がストリップクラブ。金を投げる人間と踊る人間しかいない。」
その中で家族を大切にする女性たち。それは血がつながっていなくても、お互いにプレゼントを送りあい一緒に食事をする人たち。
はじめにその懐に招き入れてくれたように、最後までディステニーを大事にしたラモーナ。
キャピタリズムの中、根底の逆転を見せた女性たちをジャッジはせず、しかし寄り添い続けたローリーン監督。
残るのは犯罪者集団というよりも、切ない友情や愛情でした。
ジェニファー・ロペスの君臨するパワーにユニークケイパー物要素など楽しく見れるのはもちろん、どことなく切なくもしかし社会構造を逆転する痛快さもある力強い作品でした。
本当に観れて良かったです。おススメ。
今回は感想はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それではまた次の記事で。
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