作品解説

現代アメリカを代表する犯罪小説家ドン・ウィンズロウの原作を映画化したクライムアクションスリラー。連続強盗犯と彼を追う刑事の対決を軸に、「ヒート」を彷彿とさせる犯罪映画になっています。
主演のクリス・ヘムズワースとマーク・ラファロは「アベンジャーズ/エンドゲーム」以来の再共演。
監督/スタッフ
- 監督・脚本:バート・レイトン(『アメリカン・アニマルズ』)
- 原作:ドン・ウィンズロウ
- 製作:ティム・ビーバン/エリック・フェルナー/デリン・シュレシンジャー/ディミトリ・ドガニス/バート・レイトン/シェーン・サレルノ/クリス・ヘムズワース/ベンジャミン・グレイソン
- 製作総指揮:バーゲン・スワンソン/サラ=ジェーン・ライト/アメリア・グレンジャー/ジョエリー・フェザー/ピーター・ストローハン
- 撮影:エリック・アレクサンダー・ウィルソン
- 音楽:ブランク・マス
登場人物とキャスト
- デーヴィス:クリス・ヘムズワース
- ルー(刑事):マーク・ラファロ
- シャロン:ハル・ベリー
- オーマン:バリー・コーガン
- 他:ニック・ノルティ、モニカ・バルバロ
日本でも映画ファンの中で「ヒート」は人気ですし、MCUの影響もあってクリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ共演の要素も、話題になる理由になりました。
公開した週末に早速見てきましたが、なかなか混んでいましたね。IMAXでの上映もされていましたが、今回は特段IMAX鑑賞の要件もないようだったので通常字幕で鑑賞。
〜あらすじ〜

高級なスーツと腕時計に身を包み、悪人だけを標的にする。痕跡は一切残さず、必ずアメリカ西海岸を走るハイウェー101号線に姿を現す―。
そんな独自のルールを貫き、白昼堂々と獲物を奪ってきた犯罪者デーヴィス。4年間、一度の失敗もなく完璧な犯行を重ねてきた彼は、暗黒社会から抜け出すために、人生最大の大金に手を伸ばす。
目をつけたのは、高額商品の保険を扱う会社に勤めるシャロン。彼は彼女に接触し、1100万ドルの宝石を巡る大胆な裏取引を持ちかける。計画は順調に進んでいるかに見えた。
だがその選択こそが、鉄壁だったはずのルールに亀裂を生む。
宝石を狙う犯罪組織、執拗に迫る警察、そして独自に捜査網を張り巡らせるルー刑事。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、完璧だったデーヴィスの計画は徐々に狂い始めてしまった。
感想レビュー/考察

ヒートの影と、過剰なマーケティング
過去に似たような作品があって、しかもそれがカルト的な人気を持っているとき。
どうしてもその作品と比べられてしまう。それ自体は避けられないことなので、思い切ってその名前を出しまくって宣伝に使う。
今作もまさにその部分が強くて、公開前から不安もあった作品です。
マイケル・マン監督の「ヒート」がとにかく引き合いに出されています。
プロットとしても連続強盗犯と、その存在に気づいて一人追走捜査をする刑事というのもあり、似てますからね。
作品公開前から、「ヒート」の血を継いだとか言われてはいました。
あとは、主演がクリス・ヘムズワースとマーク・ラファロってことでマーベル推しでしょうかね。ソーとハルクの再共演という宣伝文句。
そのどちらもどうでもいいなというところです。
売り込むためにフックが必要なのは間違いないですが、映画そのものは新鮮さこそないですが手堅くクライム映画やっていますし。
これはアクション映画ではなく、犯罪映画
逆に予告編での切り取り方とか、ヒートを引き合いに出すことで、硬派なアクションを期待させてしまったのではないかというのが気になります。
今作はアクション映画ではなくて犯罪映画。私はむしろ「ドライヴ」とか思い起こしましたね。
実際OPで強盗シーンがあるものの、そこまで派手さに振り切っていない。
それ以降はバリー・コーガン演じる男が宝石店の強盗はしたりしますが、アクシィンでの大きな派手さを求めても仕方ない。
むしろ今作は、行き詰まった複数の人間たちが、みんなこの世界から出ていくことを目的に、最後の勝負に打って出るその大博打を楽しむのかと。

完璧ではない強盗と、搾取の連鎖
プロットが結構多く、やりたいことが複数あるために正直ゴチャゴチャしています。
クリス・ヘムズワースは非能力主義の強盗。
完璧な仕事で足取りを追わせないという割には、初っ端でミスして撃たれていたり。銃撃を受けた逃走車をカバーだけかけて放置していたり、なんか抜けてますが。
彼は過去の清算のためにニック・ノルティ演じるボスに働かされている。
生きてきた中で搾取されてきたことから人をまっすぐと見ることができない。機械的に生きていながらも、苦しみを持つ彼が何とか人間性と人生を得ようとする話。
そしてそんな彼の存在に唯一気づきながらも、正義感が強いせいで警察組織に馴染めず下ってきたベテラン刑事。
マーク・ラファロのよれた感じに、「スポットライト 世紀のスクープ」や「ダーク・ウォーターズ」で見せた愚直かつ強靭な正義の心がカッコよくある。
正義のために奮闘するほど、警察内では敵を作り、そばにいれないことで妻は浮気し去っていく。
彼も散々に扱われてきたからこそ、今回の件で絶対に犯人を捕まえようと奔走する。
そしてそこに絡んでくるのがハル・ベリー。
金持ちの男相手に商談をするところから始まる彼女ですが、営業にしてはセクシーすぎるドレスを着て、いやなオーナーに密着され、銃を試し撃ちさせられる。
マッチョな世界に生きていて、苦しい状況が登場シーンで見事に詰め込まれています。そんなシャロンは保険会社でずっと男社会に尽くしてきたものの、結局は搾取されているだけで昇進も望めない。

暴力的な社会からの脱却という共通項
この主軸となっている3人の男女は、みな暴力的で男性的な社会システムに飲まれています。それが共通項でありそしてみな自分の境遇からの脱却を図る。
いろいろなことを描き出そうとしていながらも、まとまりがかろうじてとどまっているのは、コアのコンセプトが一つの軸だからかなと思いました。
脇役陣の存在感と安定感
モニカ・バルバロが演じている女性キャラとか、ちょっと機能的過ぎてもう少し何とかならなかったのかなとも思いますけれどね。
ニック・ノルティも印象的ではありますが、やはり主人公が逃れられない魔の手としての象徴にとどまる気もします。
それでもバリー・コーガンも含めて強めの印象を持てる俳優で固めてきたので、存在を忘れるほどではないかと。主人公回りもみんな堅実な役者がそろっていますから、その点でもそれぞれが良い仕事しているのは大きい。
なかなかソリッドにまとまった安定の作品という印象でした。今回はあっさりとした感想ですが、予告やマーケに関してはちょっとやりすぎなところが気になる程度で、中身としては手堅いので劇場へ行ってみていいともいます。
ではまた。


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